2026年07月22日 12時56分 公開
[産経新聞]
4月に導入された自転車の「青切符」制度では、イヤフォンをしながらの運転は青切符の交付対象で、周囲の音が聞こえない状態でハンドルを握る行為は反則金5000円となる。これに補聴器の使用者が不安を募らせている。ケーブルを使わずスマートフォンなどと無線でつなぐワイヤレスイヤフォンと区別がつきにくい補聴器が普及しているためだ。メーカー側は補聴器使用者の不安を和らげようと、状況を説明しやすくするような工夫を講じている。

ワイヤレスイヤホンと見分けがつかないようなスタイリッシュなデザインの補聴器も普及している(ソノヴァ・ジャパン提供)
「聴覚障害者として突然声をかけられるのは怖いと思う」と明かすのは、中途失聴により日常的に補聴器を使用している神戸市の女性(74)。「(イヤフォンと)誤認されて警察官から大きな声で指示を受けると、パニックに陥りかねない。穏やかに受け答えができるよう、やわらかい対応をしてほしい」と訴える。
技術の進化に伴って補聴器も小型化と音質向上が進み、デザインもスタイリッシュなものに変わってきている。「ソノヴァ・ジャパン」(東京)が販売する補聴器は、AIの活用で状況に応じて自動的に集音の精度が高まるが、見た目はワイヤレスイヤフォンと同様に耳穴に収まるようになっている。
利便性が高まる半面、青切符制度の開始によってSNSでは「イヤフォンを外せと言われた」「青切符を交付されないか心配」などと補聴器をイヤホンと誤認される不安を吐露した投稿が散見される。実際に警察官に声をかけられたという体験談もつづられている。
イヤフォンをしながらの運転が禁じられているといっても、装着自体が問題視されるわけではない。救急車など緊急車両のサイレンといった周辺の音が聞こえない状態で運転していれば違反となる。警察官がイヤフォンと補聴器の見分けがつかずに状況を確認するケースはあり得るが、補聴器の装着で青切符が交付されることはない。
補聴器使用者が不安を抱えている現状を踏まえ、難聴者の社会参加促進などに取り組むNPO法人「大阪府中途失聴・難聴者協会」は配慮ある取り締まりや理解を求めている。補聴器をつけていても十分に周囲の状況が把握できるわけではなく、自転車にミラーを設置するなどの工夫をしている補聴器使用者も多い。
同協会の担当者は、聴覚障害者が車を運転する際に車体に貼る「聴覚障害者標識」のように周囲に分かりやすく伝える仕組みを設けるのも一案だとし、「補聴器使用者の努力だけではなく、社会の理解や環境整備も進んでほしい」とする。
補聴器メーカーも対策に乗り出している。ソノヴァ・ジャパンでは、補聴器の装着を証明する「補聴器ユーザーカード」を配布。安全な運転のために補聴器が必要である旨が記載されており、財布などに入れて携帯すれば、警察官に声をかけられた際に活用できる。

補聴器メーカー「ソノヴァ・ジャパン」が配布している補聴器ユーザーカード(同社提供)
同社によると、青切符制度の導入前から、イヤフォンとの誤認を不安視する声はあったが、4月の制度開始を機に配布を決定。すでに全国の販売店に1万枚以上配布しており、「カードがあってよかった」との意見も寄せられているという。
補聴器を使っていても、聞こえ方の程度によって障害者手帳を持っていない人も多い。ユーザーカードは公的な証明書ではないが、「もしものときにスムーズな意思疎通をする助けにしてもらえたら。運転時の安心材料にしてほしい」(同社担当者)としている。(堀口明里)
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記事のポイント!
自転車の運転中に補聴器を装着していても青切符の対象にはなりませんが、イヤホンと見分けにくい補聴器が増えたことで、警察官から突然声をかけられることに不安を感じる利用者もいます。記事では、当事者が求める配慮ある対応や社会的な理解の必要性に加え、補聴器であることを伝えやすくする「補聴器ユーザーカード」など、誤認時の意思疎通を助ける取り組みを紹介しています。
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原文掲載元はこちら
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2607/22/news079.html
