年末年始の帰省で48歳長男が絶句。実家に響く「テレビの大音量」、何度呼んでも無反応の76歳父…切実な「老い」の光景

年末年始の帰省で48歳長男が絶句。実家に響く「テレビの大音量」、何度呼んでも無反応の76歳父…切実な「老い」の光景

[連載] 統計・調査から紐解く日本の実情
SGO編集部
2026.2.3

久しぶりの帰省で、親の意外な変化に戸惑った経験はないでしょうか。一方で多くの高齢者が変化を自覚しながらも、対策を拒んでしまうという現実があります。そこには、老いを受け入れがたい心理的な壁や、周囲との意識の乖離が隠されています。ある親子のケースをみていきます。

年配男性の後ろ姿

(※写真はイメージです/PIXTA)


見た目は元気なのに、言葉だけが届かない

都内で働く佐藤大輔さん(48歳・仮名)は、今年の年始、1年ぶりに鹿児島県にある実家へ帰省しました。仕事の忙しさもあり、普段のコミュニケーションは月に数回のLINEが中心。電話で話す機会が減っていたこともあり、大輔さんは父・正雄さん(76歳・仮名)の変化に気づくのが遅れてしまったといいます。

「実家に入った瞬間、近所迷惑じゃないかと心配になるほどテレビの音が大きかったんです。ニュース番組の音声が爆音で流れていて、母に聞くと『お父さんの耳に合わせていたらこうなった』と。足腰もしっかりしていて、畑仕事も欠かさない父ですが、耳恐ろしいほど遠くなっていたんです。初めて親の老いを実感しました」

異変は音量だけではありません。食卓を囲んで家族で談笑していても、正雄さんはどこか上の空に見える瞬間があります。たまに口を開いたかと思えば、数分前に終わったはずの話題を持ち出したり、まったく関係のない返答が返ってきたりすることが増えたといいます。

「最初は、単に人の話を聞いていないだけかと思ってイラッとしてしまったんです。でも、何度も同じことを説明しているうちに、父が必死に口元を見て、音を拾おうとしていることに気づきました。本人は聞こえていないことを悟られたくないのか、適当に相槌を打って笑って誤魔化していたです。父は頑固な性格で、弱みを見せない人。自分から『耳の聞こえが悪くなっている』とは言えなかったのでしょう」

大輔さんは、たまらず「耳が遠くなっているんじゃない? 一度一緒に検査に行こう」と切り出しました。しかし、正雄さんは「うるさい。年なんだから当たり前だ。補聴器なんて年寄り臭いものはつけない」と拒絶。その後、リビングは気まずい沈黙に包まれてしまったといいます。

「親を傷つけたいわけじゃないんです。でも、このままじゃ会話がなくなるし……辛抱強く、説得するしかないですね」


「自覚があるのに対策しない」親が4割超…子世代が悩む「老いの指摘」という高い壁

厚生労働省『加齢性難聴対策に関する共同宣言(2024年)』や関連資料によると、日本における難聴自覚者の補聴器装用率は約15%。欧米諸国の40〜50%台と比較すると極めて低く、多くの高齢者が「聞こえづらさ」を放置している実態があります。しかし、難聴の放置は単なる不便に留まりません。周囲とのコミュニケーションを妨げ、心身の活力を奪う「ヒアリングフレイル」を招き、認知症やうつ病の発症リスクを高めることが各自治体の啓発資料(福岡県「フレイル予防」等)でも強く指摘されています。

この「放置」の背景にある心理を深掘りしたのが、NTTソノリティ株式会社/cocoe(ココエ)が実施した調査。ここでは親自身の92.5%が聞こえづらさを自覚していながら、そのうち4割以上(43.9%)が対策を行っていないことが判明しました。

親世代にとって「耳の衰え」を認めることは、自身の老いや社会的な役割の喪失を突きつけられる、極めてデリケートな問題です。佐藤さんの父のように、補聴器という言葉に「年寄り扱いされた」と強く反発するのは、その裏返しといえるでしょう。一方、子世代も「親を傷つけたくない」「老いを認めさせるのが忍びない」という配慮から、約2割が対策を提示できずにいます。

こうした「正論のぶつかり合い」を避けるために、昨今の地域包括ケアの現場や予防医学の観点からは、「生活を豊かにするツール」として導入を促すアプローチが有効であると考えられています。

たとえば、「耳が悪いから検査に行こう」という欠損を埋める提案ではなく、「大好きな映画のセリフを鮮明に楽しむために、最新のデバイスを使ってみない?」という、楽しみを広げる提案です。実際、同調査でも約8割の人が関心を寄せたのが、補聴器よりも手軽でスタイリッシュな「集音機能付きイヤホン」という選択肢でした。これらはワイヤレスイヤホンのようなデザインで、装着することへの心理的抵抗が少ないのが特徴です。「贈り物」という形であれば、親もプライドを傷つけられることなく、子の気遣いを受け入れやすくなります。

親の老いは避けられない現実です。しかし、それを衰えとして指摘するのではなく、「これからも楽しくお喋りしたいから」という素直な気持ちとして伝えられるかどうか。正面から向き合うのが難しい問題だからこそ、まずはそんな小さな「歩み寄り」から始めてみてはいかがでしょうか。
 

[参考資料]

NTTソノリティ株式会社『【親の“聞こえ”に関する調査】帰省で気づく親の“老い”。最大のサインは「テレビの大音量」。 親の4割は「自覚あるも放置」』


リンク先は資産形成ゴールドオンラインというサイトの記事になります。


 

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