2025年10月6日 16:00
聞こえが不自由な人らの意思疎通に重要な「手話」への理解と普及を広げたい。
先の通常国会で成立し、6月に施行された「手話施策推進法」が注目されている。
折しも、来月15日に東京で聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」が開幕する。「ろう者の五輪」と呼ばれる大会は100周年の節目にあたり、日本では初開催である。
手話新法を周知して生かす機会とし、その基本理念である「手話を必要とする者、使用する者の意思が尊重され、習得・使用に関する合理的な配慮への環境整備」につなげることが求められよう。
ろう者らへの手話教育は、日本で明治期に始まったが、昭和に入ると、口の形をまねたりしながら発話する「口語法」が導入される。「聞こえる人と同じように教育する」との方針の下、手話の使用が禁止された歴史がある。
一方、家庭などで手話は使われ続け、1990年代以降は教育現場でも再び取り入れられ始めた。普及促進は自治体条例が先行する。京都府、滋賀県、京都市など600近い自治体で制定され、国の対応を求める声が強まっていた。
超党派による議員立法で成立し、「手話を取り巻く歴史で大きな一歩」(全日本ろうあ連盟)と期待は大きい。
手話に関わる環境づくりには、教育や職場、地域を通じて国民の理解と関心を深めることや、手話文化(手話による演芸や伝統芸能など)の保存・発展も含まれる。総合的な施策展開に向け、国には財政措置を講じることを義務づけた。
特に、必要な児童生徒が手話で教育を受けられるよう、手話技能を持つ教員や通訳者の配置を進めるとした点は大きな鍵となろう。幅広く校内外で手話を知る機会も広げてほしい。
デフリンピックには、世界70~80カ国・地域から約6千人の選手団が参加する。手話は国や地域で異なり、共通語として「国際手話」が使われる。大会運営には国内の健聴者も多く関わり、国際手話を通したコミュニケーションが大切になる。
国際手話が分かるろう者が日本の手話に通訳。それを「手話通訳士」の資格を持つ健聴者が日本語へ翻訳するという流れである。国際手話の理解者や通訳士の不足も指摘される。大会運営を通じ、ノウハウの普及や人材育成に結びつけたい。
近年は聴覚を補完できる人工内耳の手術を受け、手話を習わない子もいる。しゃべった言葉が自動的に文字起こしされるアプリや、災害時も念頭に筆談ボードの普及を求める声もある。
さまざまな選択肢を広げ、障害の有無や種別に関係なく、誰もが自分らしく、暮らしやすいバリアフリー社会へ官民の力を合わせることが欠かせない。
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