2026/09/16
阿萬暖々果(あまん・ののか)さん(宮崎・五ヶ瀬中等教育学校6年=高校3年相当)は、難聴の兄と手話で会話しながら育った。障害を理由に将来の可能性を狭める社会に疑問を覚え、「すべての人が支え合える社会を当たり前にしたい」という思いを抱いている。(文・写真 椎木里咲)
難聴の兄と「手話でけんか」
2歳年上の兄は生まれつき難聴を抱え、手話でコミュニケーションを取っている。「私は母の手話を見て、日本語を覚えるのと同じように手話を覚えていきました。今では兄より私の方が、手話ができるかもしれません」
兄のために手話を「覚えてあげた」のではない。兄と話したいがために、手話を覚えた。普段のおしゃべりはもちろん、けんかにも手話を使った。「2人で料理の手伝いをしてどっちが卵を混ぜるかとか、テレビのチャンネル戦争とか。本当にくだらないけんかです(笑)」

あきた総文の弁論部門に登壇した阿萬さん。手話を交えながら力強い弁論を行った
聴覚障害者が巻き込まれた事故の裁判に疑問
兄のように聴覚障害のある11歳の女の子が、重機にはねられ亡くなった交通事故の裁判内容をニュースで知った。一審では聴覚障害を理由に、事故がなければ将来得られたはずの収入を、平均賃金の85%としたのだ。
自分ごとのように憤りを感じた。「聴覚障害によって、将来の働く力を低く見積もられるなんて……。悔しく悲しい気持ちになりました」。二審では、補聴器を使えば通常の音声は聞き取れることなどから「障害のない人と同じように働けた」と判断し、平均賃金の100%で計算された。
「伝える方法」はいくらでもある
手話を使った演劇や歌、ダンスなどを披露する「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」に向け、女の子の事故をテーマに劇を作りたいという思いが芽生えた。「一緒に出場する友人とテーマを話し合っていました。被害にあった女の子が同世代だったため、強く印象に残ったんです」
劇を作るにあたり、被害者家族にも会いに行った。「部屋を見せてもらいました。キャラクターグッズや部屋に貼ってあったシールなどを見て、『同世代として同じような生活を送っていたんだ』と実感し、身近に感じました」
昨年9月、全国大会に勝ち進み、演劇部門で準優勝に輝いた。大会には耳の聞こえる人、聞こえない人、手話のできる人、できない人、さまざまな人が参加していた。「お互いがお互いを思いやっていました。手話が分からなければ、指さしでもジェスチャーでも筆談でもいいんです」

阿萬さん。「障害の有無に関係なく、すべての人が支え合える社会」を目指したいという
すべての人が支え合える社会に
以前から「障害者が社会で能力を存分に発揮できないとしたら、社会全体の理解不足、配慮不足によるものだ」と考えていたが、大会を経て思いが強くなった。「障害の有無に関係なく、すべての人が支え合える社会を当たり前にしたい」という願いがある。
「ろう者の方は、私のつたない手話も理解しようとしてくれます。『助けてあげる』のではなく、お互いに支え合っているんです」。胸に抱くそうした強い思いを「第50回全国高校総合文化祭」(あきた総文2026)の弁論部門で手話を交えて発表し、文化庁長官賞を受賞した。
「『難しいことをしなきゃ』と思うかもしれません。でも、耳が聞こえない人には口を大きく開けて話す、呼びかける時には肩をたたくなど、自分にできる小さな手助けをすればよいと思います」
記事のポイント!
難聴の兄と手話で育った高校生・阿萬暖々果さんが、聴覚障害への理解や合理的配慮、支え合うことの大切さを語ります。記事原文では、あきた総文2026で発表した弁論原稿全文も読むことができます。
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