2024年08月07日 10:00
性感染症の一種の梅毒が近年増加している。適切な治療で治る病気だが、梅毒に感染した妊婦から胎児に母子感染する「先天梅毒」のリスクがある。日本大学医学部(東京都板橋区)産婦人科学系産婦人科学分野の川名敬主任教授に話を聞いた。
▽先天梅毒も増加
梅毒は主に性器接触で感染し、初期は陰部にしこり、潰瘍などが表れる。国立感染症研究所によると、2023年は感染症法に基づく現在の調査方法で統計を取り始めた1999年以降、最多の1万4906人の感染が報告された。近年の患者の傾向として、男性は20~60代と年齢層が幅広く、女性は20代が多いのが特徴だ。
ただし、伸び率は前年と比べ1割程度の増加。22年が前年比の約6割増だったことを考えると、「伸びは鈍化しました。治療を受けて治癒する人が増えてきたようです」と川名教授は話す。
懸念されるのが妊婦の感染で、流産・死産の恐れとともに、先天梅毒で子どもが難聴、失明、知的障害などを引き起こすリスクがある。
先天梅毒は、19~22年の年20人前後から、23年は37例に増えた。川名教授は「感染に気付かない人、気付いても未治療の人が妊娠、出産する可能性があります」と危惧する。
▽男女とも予防・治療を
対策は感染の予防と治療を心掛け、梅毒の流行を抑え込むこと。「予防策はコンドームの使用。決まったパートナー以外とコンドームを使用せずに性行為をしたら、性感染症のリスクは高まります」
梅毒は、症状が表われたり消えたりを繰り返しながら、少しずつ全身が侵されていく感染症だ。もし性器や肛門などにできものなどの異常を見つけたら、「早めに受診を」と川名教授。受診先は皮膚科、泌尿器科、産婦人科、性感染症内科などだが、近隣になければ一般の内科でもよい。無料・匿名検査に対応する保健所もあり、研究用の検査キットを購入して自己検査をするより精度は確実という。
治療法には、ペニシリン系抗菌薬を4週間飲む方法などがある。1回の注射で済む新薬も出ている。ただし、妊娠中の治療では胎児の感染を防げないこともあるため、妊娠する前に治しておくことが重要だ。
「症状が自然に消えても、それは病気が治ったわけではなく、潜伏しただけ。男女問わず決められた期間は治療を続けてください」と川名教授は呼び掛ける。(メディカルトリビューン=時事)
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