小学生の約10%が「発達障害」の可能性! でもその子、本当に「発達障害」ですか

小学生の約10%が「発達障害」の可能性! でもその子、本当に「発達障害」ですか

① 前編
成田 奈緒子さんの写真
成田 奈緒子
発達脳科学者
プロフィール

近年、「発達障害」といわれる子どもが急激に増えています。「発達障害」の言葉が広まった結果、大人が理解できない子、大人の期待どおりに育っていない子、扱いづらい子などが、「発達障害」ではないかと疑われていないでしょうか。「発達障害のような症状」が現れる原因はどこにあるか、今の困りごとへはどう対処するか、どう育てていけばよいか、をくわしく解説した『子どもが「発達障害」と疑われたときに読む本』から、いくつかの章をご紹介します。

『子どもが「発達障害」と疑われたときに読む本』の写真

小学生の約10パーセントに「発達障害」の可能性

近年、「発達障害」といわれる子どもが急激に増えています。2022年12月には小学生の約10パーセントに「発達障害」の可能性があると文部科学省から発表されました。この数字は、医学的にみてとうてい納得できるものではありません。

壁にもたれて座る男の子の写真

「発達障害」という言葉が広まった結果、大人が理解できない子、大人の期待どおりに育っていない子、扱いづらい子などが、「発達障害」ではないかと疑われていないでしょうか。小児科医として子どもたちをみてきた私には、「発達障害」のような症状が現れてはいるけれども、ほかに原因がある子どもが多いように思えてならないのです。

考えられる原因と、その対応法については、『子どもが「発達障害」と疑われたときに読む本』と、この連載記事にくわしく述べています。すぐに「発達障害」ではないかと疑う、いきすぎた風潮に警告を発し、「発達障害」に関する誤解をときたいと思います。

発達障害という言葉に「 」をつけているのも、そのひとつです。発達障害には、おもなものだけでも、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、SLD(限局性学習症、LD〈学習障害〉ともいう)、知的能力障害、コミュニケーション症群、運動症群があり、肢体不自由や視覚・聴覚障害も発達障害です。ところが、最近はADHDとASDだけ(ときにはSLDも)をとりあげて発達障害ということが多く、常々言葉の誤用だと思っていました。本書もADHDとASDを中心にとりあげているため、本来の定義と差別化する意味で「発達障害」としたのです。

さまざまな誤解から、かえって子どもの負担になる対応が多くなっています。親もがんばっているのですが、がんばりどころはそこではないだろうと思うこともあります。本書を参考にしていただき、もう一度子どもをよく見直して、基本的な対応を始めてほしいと思います。子どもたちの幸せを願っています。

両手で耳をふさぐ男の子の後ろ姿の写真

「発達障害」だと思われたAくんの例

Aくんは小学2年生。共働きの両親との3人家族。小学校にあがって以来、忘れ物が目立ってきたうえ、宿題をしてこないことも増えてきました。2年生になってからは、授業を落ち着いて聞くことができなくなっています。

授業中にウロウロ
授業中に座っていられず、たびたび立ち歩く。教室内をウロウロしていて、先生の注意も耳に入らないようす。

ボーッとしていることも
授業中にいすに座っていても、先生の話を聞いているのではなく、ボーッとしていることがある。

L・D、A・S・D、A・D・H・Dと書かれた積み木の写真

忘れ物が多い
もともと忘れ物が多い子どもだったが、2年生になってエスカレート。ほぼ毎日なにかを忘れている。

担任の先生から
保護者会のとき、学校でのようすを聞いた母親。担任から「ご家族でしっかりみてあげてください」と言われた。

「ちゃんとやれ」ときっちり怒る
「これまで甘やかしすぎたのだろうか」と反省した両親。母親はAくんに厳しく注意をした。

母親がランドセルの準備をすることに
これ以上忘れ物をすると成績にひびくので、母親が持ち物をそろえることにした。

つききりで宿題をやらせる
A くんが帰宅したら、うがい、手洗いをさせ、宿題を出させる。夕食のしたくをする前に、Aくんにつききり。

勉強の遅れが心配で
これまで習い事をいくつかやらせていたが、勉強が遅れているようなので、学習塾を増やすことにした。

朝ごはんはヨーグルト
Aくんが疲れているだろうと思った両親は、朝、できるだけ寝かせておくことにした。そのため、起きてから家を出るまで忙しい。

学校で友だちとケンカ
母親の努力の成果がみられないところへ、ある日、Aくんはささいなことで級友とケンカに。

「発達障害」では、と言われる
ケンカのことで担任と面談した母親。忘れ物、落ち着きのなさ、不注意、衝動性などから、Aくんは「発達障害」ではないかと言われる。病院に行くのも気がひけて、インターネットでいろいろ調べたところ、いくつか自分たちにもできそうな対策がみつかった。

そもそもA くんは「発達障害」ではないかもしれません
両親は相談しながら、Aくんの面倒を一生懸命にみています。ところがその努力もむなしく事態は改善していないようです。A くんが「発達障害」でないなら、ご両親は無効なことや逆効果なことをしている可能性があります。どうすればいいか、次回からの連載でみていきましょう。


小児科医・成田奈緒子が警鐘を鳴らす! その症状、本当に発達障害?
『子どもが「発達障害」と疑われたときに読む本』は5/28発売!

『子どもが「発達障害」と疑われたときに読む本』の写真

【本書の内容構成】
巻頭 その子は本当に「発達障害」なのか
1 まずは生活改善にとりくむ
2 子どもの発達を脳からみると
3 子どもを信じて育てる
4 信頼が成長につながる
5 大人が気をつけること

【主な対策ポイント】
*8時間睡眠では全然足りない
*早寝早起き朝ごはんのリズムを
*幼児にはスマホの情報は多すぎる
*家庭でも「あいまい言葉」を使わない
*ほめるのではなく子どもを認める
*発達のバランスをくずす言動に注意

リンク先はKODANSHAというサイトの記事になります。
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