立教大学現代心理学部
2026/07/28
OVERVIEW
2025年11月17日、新座キャンパスで開催された「知事と立教大学学生の意見交換会」は、埼玉県と立教大学との包括連携協定に基づく連携推進の一環として、若者の感性を県政に生かしつつ、学生に生きた学習の場を提供することを目的としています。現代心理学部の松永ゼミおよび砂連尾ゼミの学生が、埼玉県職員のメンタルケアや聴覚しょうがい者への理解促進をテーマに、政策提言を行い、埼玉県の未来について議論を深めました。2025年度で3回目、埼玉県内の私立大学として唯一の開催です。
聴覚障害者への理解を促進し、デフスポーツを普及するには
「共創するアート・ラボ—聴覚障害者と健聴者のフラットな対話空間」

本提言のきっかけの一つは、2025年のデフリンピック開催でした。ゼミ生の中に総合格闘技(MMA)に取り組む聴覚しょうがいがある学生がおり、彼がデフスポーツの普及に関心を持っていたことから、デフリンピックに関するリサーチを始めました。しかし、課題として浮かび上がったのは、デフスポーツの普及以前に、ろう者と健聴者が一人の人間として出会い、継続的に関わる機会そのものが少ないという現状でした。そこで私たちは、「聴覚しょうがいの有無にかかわらず、誰もが創造的な主体として関われる場」を提案することにしました。
私たちのゼミでは、ダンス経験に関係なく身体ワークと創作活動を行なっています。25年度は、提言準備の一環として、春学期に「聴覚障害があっても一緒にプレイできる遊び」の創作に取り組み、秋学期にはヒップホップやバレエの技術と総合格闘技の動きを互いに応用・融合させるワークを行いました。
活動を重ねる中で、私たちは次第に「どうすれば一緒にできるか」といった配慮中心の視点から、「一緒にやってみる中で何が生まれるか」という視点へと変化していきました。実際に身体を通して関わることで、一人では思いつかない動きや表現が生まれ、そのプロセスそのものに大きな意味があることを実感しました。
また、ディスカッションの中で、ろう学生から出た「言語が違うだけで、能力の差も垣根もない」という言葉は、私たちの議論の前提となっていた「しょうがいをどう理解するか」という発想を見直すきっかけになりました。約4カ月の準備期間を経て感じたのは、「ろう者」と「健聴者」という属性同士ではなく、「目の前の一人の他者」と「自分」という具体的な関係性から出発することの重要性です。その積み重ねこそが、相互理解を深めていくと考えました。
意見交換会当日は、活動の様子をスライドと映像で紹介し、秋学期の身体ワークをゼミ生2人によるパフォーマンスとして発表しました。即興的なやりとりを含んだ発表により、ワークの場で生まれる関係性の変化をそのまま伝えすることができました。提言で示した「アート・ラボ」は、こうしたゼミでの実践をモデルとし、「支援する/支援される」という福祉的な関係に固定されない、継続的な共同実践の場を地域に設置するという構想です。発表後の意見交換では、既存の施設の活用や、若者が主体的に関われる仕組みづくりについても話題となり、実現可能性についての活発な議論が行われました。
その後も3年次生のゼミではワークを継続し、25年度の学期末には約20分の作品を上演しました。多様な背景を持つ人々が一定期間をかけて協働する経験は、大学だからこそ実現できた側面もあります。しかし、このような実践を地域へと開いていくことが、立場や属性を越えた関係づくりを日常の中に育てていくことにつながると考えています。今回の意見交換会は、アート実践が社会における関係性の再構築にどのように寄与し得るのかを検討する貴重な機会となりました。
記事のポイント!
聴覚障害者への一方的な支援や配慮ではなく、聴覚障害の有無にかかわらず、一緒に身体を動かし表現を生み出すことから相互理解を深める取り組みです。学生たちは約4カ月にわたる身体ワークを通して、属性ではなく「目の前の一人」と関わる大切さを学び、地域に継続的な共同実践の場を設ける「共創するアート・ラボ」を提案しました。
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原文掲載元はこちら
https://www.rikkyo.ac.jp/closeup/topics/2026/mknpps00000566iz.html
