聴力測定なく手軽に購入できる安価な製品は「補聴器」ではなく「集音器」。専門医が教える正しい「補聴器」の選び方と使い方

聴力測定なく手軽に購入できる安価な製品は「補聴器」ではなく「集音器」。専門医が教える正しい「補聴器」の選び方と使い方

2026年03月23日

新・心とからだの養生学  「聞こえ」を保ち、認知症を遠ざける(後編)

内田育恵
愛知医科大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科特任教授、医学博士、耳鼻咽喉科指導医、補聴器相談医

イラスト「家族の食卓と聞き間違え」

(イラスト:末続あけみ 以下すべて)


耳は「聞こえ」の玄関口。聞こえにくさは、人づきあいを遠け、認知機能の低下を招きかねません。放置せず対策をとりましょう。加齢と聞こえの関係について、内田育恵先生に聞きました (イラスト:末続あけみ 取材・文・構成:菊池亜希子)

前編よりつづく


聞こえない!? 老化かしら? 高齢期の難聴Q&A

【補聴器編】

Q)どこで購入すればいいの?
診察を受けた耳鼻咽喉科で補聴器の専門家(定補聴器技能者 *)を紹介してもらい、その人がいる補聴器専門店で購入するのが一般的です。補聴器外来がある医療機関なら、その場で認定補聴器技能者が対応してくれることも。

日常生活で何を優先したいかを伝えてアドバイスを受けながら、自身の耳の状態と生活形態に合う補聴器を選び、調整してもらいます。購入前には必ず数週間単位で試聴して、聞こえ方に納得できるか、詰まりや違和感がないかなどの確認を。

補聴器は一人ひとりの聴力に合わせてカスタマイズします。型をオーダーメイドで作成することもでき、標準価格は片耳15万円~20万円前後です。

*補聴器の選定、調整、使用指導を専門的に行うための認定資格を有する技能者


Q)片耳だけつけてもいいの?
加齢性難聴は左右差があまりないのが特徴なので、両耳使用をお勧めします。私たちの脳は、両耳からバランスよく音の情報が入ることで、左右の鼓膜に届くわずかな時間のずれや音波の波形差から、その音の方向や距離感を正しく認識することができるのです。

片側だけ聴力低下が大きい場合は、聞こえない側にのみ使用するケースもありますが、聞こえのしくみは非常に複雑で緻密。

基本は両耳の力のバランスを整えるように補聴器の使用側を選択します。聴力に左右差があっても、良い側も聴力低下がみられれば、両耳使用も視野に入れて調整しましょう。

 イラスト「木にとまりなく鳥たちと黄色い自転車」


Q)どこで、どれくらいの頻度でメンテナンスするの?
購入した補聴器店で、認定補聴器技能者による定期メンテナンスを受けます。使い始めは1~2ヵ月に一度ほど、その後は相談しながら頻度を決めますが、補聴器に慣れてきても、少なくとも半年に一度は見てもらいましょう。

補聴器は、聞こえにくい音を聞こえるよう増幅するだけでなく、突発音や騒音など耳に害になる大きな音を実際より抑えてくれる性能も備えています。それらの性能一つひとつの出力や左右バランスを、聞こえの状態に合わせて調整するのがメンテナンス。音の加工を微調整することで、自分だけの音質を作り上げます。

メンテナンスをおろそかにして、違和感や不快感を放置してしまうと、耳を傷めたり、機器の故障を招いたりしてしまうことも。不調を自覚していなくても、定期メンテナンスは必ず受けることが大切です。


Q)補聴器をつけていると、難聴が進まない?
正しく調整された補聴器を使っていれば、基本的には進みません。ただ、補聴器を使い続けていると、自身の「聞こえ」の基準点が変わり、補聴器を外したときの聞こえが悪化したように錯覚することがあるのです。

補聴器使用前は聞こえないのが当たり前でしたが、補聴器に馴染んでくると、音に溢れる世界を取り戻します。グラスを机に置けば「コツン」と音がし、窓を開ければ鳥のさえずりが聞こえる。そして徐々に、それが新たな基準になっていきます。

ところが不意に補聴器を外すと、音が消え、自身の聴力が低下したのではないかと不安になる。ですが、ほとんどの場合、聴力検査すると変化はありません。とはいえ、補聴器と関係のない病的な聴力低下がないとは言い切れないので、不安を感じたら耳鼻咽喉科で聴力検査を受けてください。問題なければ基準点が変化したということです。

ただし、耳に有害な音を適正に調節していない補聴器や、その類似品を使っていると聴力低下を招くことがあります。補聴器は一人ひとりの聴力と耳の状態に合わせたものを購入し、定期メンテナンスを続けることが必須条件。聴力測定もなく通販などで手軽に購入できる安価な製品は、補聴器でなく「集音器」。音を拾い集めて増幅させるだけなので、騒音も突発的な大きな音も、さらに大きくして耳に入れてしまうのです。補聴器と集音器は別物なので、混同しないよう注意しましょう。

カフェテリアで会話する婦人


【補聴器編集部 セレクト】

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耳かけ型補聴器マキチエハート
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<前編はこちら>70代の約半数は難聴に。専門医に聞く難聴Q&A「なぜ聞こえにくくなる?」「聞こえているのに内容が理解できない?」「補聴器は必要?」


イラスト: 末続あけみ
取材・文・構成:菊池亜希子
出典=『婦人公論』2026年4月号


内田育恵


内田育恵
愛知医科大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科特任教授、医学博士、耳鼻咽喉科指導医、補聴器相談医
耳鼻咽喉科指導医、補聴器相談医。大阪医科大学医学部卒業。国立長寿医療研究センター耳鼻咽喉科医長、愛知医科大学医学部耳鼻咽喉科准教授を経て現職。加齢性難聴に関する論文、講演多数


リンク先は婦人公論.jpというサイトの記事になります。


 

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