2025.01.28 Vol. Web Original スポーツ

4月2日に対戦するデフサッカー日本代表(左)とクリアソン新宿の面々
 日本ろう者サッカー協会が1月28日、都内で会見を開き、4月2日に東京・国立競技場でデフサッカー日本代表がJFLのクリアソン新宿とエキシビションマッチで対戦することを発表した。
 
 今年は11月に「東京2025デフリンピック」が開催される。今回の試合はその壮行試合で、障がい者サッカーの普及、デフリンピックに向けた日本代表の強化と機運醸成に向けての取り組みという側面もある。
 
 デフサッカーは聴覚に障がいのある選手11名で行うサッカーで、競技中、選手たちは補聴器を外すことが義務付けられていることから「音のないサッカー」の愛称で呼ばれている。ルールは基本的には健常者のルールと同じ。選手は補聴器を外し、音が聞こえないため主審は笛とフラッグの両方を使用する。
 
 今回試合をする男子代表は過去、デフリンピックでは予選を突破できていないのだが、2023年の「第4回ろう者サッカー世界選手権」では19カ国中の準優勝と着実に力をつけ、現在、世界ランク6位につけている。
 
 デフサッカーの試合が国立競技場で行われること、そしてJFLのチームと対戦するというのも異例なこと。

デフサッカー日本代表の吉田匡良監督は手話で挨拶
 今回の試合についてクリアソン新宿の丸山和大 代表取締役CEOは「吉田監督とのつながりでこの壮行試合をやるにあたってクリアソン新宿というクラブにご興味をもっていただき、声をかけていただいたのが最初。シーズンが始まっている中でのオファーだったが北島監督に相談したところ、監督も二つ返事でOKだった。我々は新宿にある国立競技場ともご縁がある中で、新宿の街の皆さんはこうしたダイバーシティとか多文化共生の文脈は非常に共感して、いろいろな連携をしていただける方が多いので、デフリンピックという存在をたくさんの方に知っていただく機会にしたいというところと、壮行試合とはいえ、世界一に向けた大事な試合。我々も一つ一つの試合がすべて大事という考え方で戦っているので、強化という点でいい試合をして勝ちたいという思いを持っているので頑張っていきたい」などと語った。
 
 この試合が国立競技場で行われることとなった経緯についてデフサッカー日本代表の吉田匡良監督は「やっぱり国立は聖地。自分も去年の5月に代表監督に就任したが、選手たちを見ている時に“この子たちをもっと日の当たるところに出させてあげたい”という思いがすごく強くなった。自分の知り合いが丸山さんとつながっていて、そこからこういうふうな話が実現した。選手たちをもっと取り上げていただきたいという思いがある。健常者と一緒なので。試合になれば皆さん気づいてくれるところがたくさんあると思う」と説明した。
 
 多くの人にデフサッカーをアピールするチャンスということもあり吉田監督は「デフといえば障がい者というワードがあると思うが、自分自身はそれは個性ととらえている。耳が聞こえないというのは関係なく、これだけのパフォーマンスができるということを、見に来てくれた人たちに“これで本当に耳が聞こえないの?”と思われるくらいのパフォーマンスを見せたいと思う」と意気込んだ。

クリアソン新宿の北嶋秀朗監督
 対戦するクリアソン新宿の北嶋秀朗監督は「(二つ返事については)なんでかなと今ちょっと思ったんですが(笑)。直感的な部分で、こういうのは一緒に頑張りたいというのが一つ強いものとしてある。あと僕らクリアソン新宿は感動や豊かさをサッカーを通じて届けたいという思いを持っているクラブですので、そういうハンディを持ちながらも、普通に僕らとサッカーをするという思いそのものに心を打たれるし、本気でかかってくる彼らに対して僕らも本気で戦って、デフリンピックで優勝してもらえるような一つの力になれればという思いもあり、二つ返事で返事をさせていただいた。とても楽しみにしている」と語った。
 
 デフサッカーの世界ではヨーロッパ勢が強く、世界ランキングも1位ウクライナ、2位フランス、3位トルコという状況。日本は6位につけているのだが吉田監督によると「上のレベルはほぼ実力は変わらない。どれだけの思いを持って、どれだけのパワーを持っているか。そういうチームが勝ち上がるんだなというのはある」と優勝への自信を見せた。
 
 デフリンピックでのライバルとしては「去年のW杯ではウクライナと決勝で戦って1-2で負けた。ウクライナに負けた時の景色はみんな忘れていないと思うので、ウクライナへの思いは強い」とウクライナを挙げた。
 
 また北嶋監督は会見後の取材で「デフサッカー日本代表のためにも、サッカーでちゃんと苦しめて“嫌だな”と思うプレーをいっぱいして、デフリンピックが楽だなと思えるくらい僕らが嫌なサッカーをしていい試合をしたい」と語った。

ともに勝利を誓った
 試合当日は健常者の人たちに一つでも手話を覚えてもらおうということで試合中に音楽を流し、ビジョンにサインエールという手話応援を映す予定。トラックでは他の競技団体のデフスポーツ体験をスタンプラリー形式で行い、デフリンピックや日本ろう者サッカー協会のステッカーやバッチをプレゼントする企画も行う。
 
 日本ろう者サッカー協会の中村崇修 強化・育成事業部長は「今までになかったようなデフのエンターテインメントを作るようなイメージ。『ジャパンフットボールライブ2025』という名称で行う。来年も再来年も続いていけるような形を取れればなと思っている」とパラスポーツ普及の継続的なイベント開催を目指すという。
 
 また今回の観客動員については「目標は目指せ1万人!」と語るが、この1万人という数字は「異例中の異例。デフリンピックでもW杯でも絶対に入らないと思う」というチャレンジングなもの。チケットは2月10日から発売され1枚2500円。果たして1万人達成はなるのか…。
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