2026年1月12日
再発寛解型多発性硬化症患者では、末梢性聴力低下に加えて中枢性聴覚処理障害が生じ、日常的な聴覚・コミュニケーション能力が健常者と比較して有意に低下することが明らかになった。この中枢性聴覚障害は神経学的障害の程度や脳萎縮と相関しており、脱髄による中枢聴覚経路の障害と全般的な神経変性が原因と考えられる。研究成果は、Multiple Sclerosis and Related Disorders誌2026年1月7日号に発表された。
再発寛解型多発性硬化症患者30例での聴覚機能評価
本研究は、多発性硬化症患者における聴覚機能障害の実態を明らかにするため実施された。再発寛解型多発性硬化症患者30例と、年齢・性別・聴力レベルをマッチさせた健常対照者30例を対象とした。評価項目には、聴力検査による音検出閾値測定、両耳聴による音声知覚、空間聴覚(Listening in Spatialized Noise test)、自己評価による聴覚・コミュニケーション障害評価(Speech, Spatial and Qualities of Hearing Questionnaire)が含まれた。さらに、神経学的障害、白質病変数、病変体積、全脳体積との相関関係も評価された。
音声知覚と日常聴覚能力で有意な機能低下を確認
多発性硬化症患者では、30例中18例で片耳または両耳の平均音検出レベルが異常値を示し、60耳中17耳で年齢基準人口標準値を外れていた。両耳聴による音声知覚は、音源の定位が必要な聴取条件において健常対照者と比較して有意に低下していた(P<0.001)。また、患者は日常的な聴覚・コミュニケーション能力を健常対照者より有意に低く評価していた(P=0.001)。重要な点として、観察された音声障害は末梢性聴力低下では説明できず、より複雑な中枢性聴覚処理の障害が示唆された。
脱髄と神経変性による中枢聴覚経路障害の可能性
音声知覚の低下は神経学的障害の重症度および脳体積の減少と中等度の相関を示した。さらに、両耳聴処理の障害は病変体積の増加および脳体積の減少と強い相関関係を認めた。これらの知見は、中枢聴覚経路の脱髄による聴覚神経活動の障害と全般的な神経変性が原因であることと一致している。臨床医は、多発性硬化症患者において末梢性および中枢性の両方の聴覚障害が一般的であり、患者の生活の質に影響を与えるほど重篤になり得ることを認識すべきである。今後、聴覚機能評価の標準化と適切な介入戦略の確立が求められる。
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