2025年9月24日 19:26
障害者や高齢者、外国人など誰一人として残さない『インクルーシブ防災』をテーマに、西日本豪雨を経験した聴覚障害の夫婦の避難所生活から、私たちにできる支援について、広島テレビの塚原美緒気象予報士・防災士が取材しました。

(左)妻・大島タマルさん/(右)夫・大島昭男さん
広島県安芸郡坂町小屋浦に住む聴覚障害がある大島昭男さん・タマルさん夫妻は、7年前の西日本豪雨災害を経験しました。あの日、二人は広島市内へ出かけていたそうです。
■大島タマルさん
「広島市内で少し過ごしていたら、真っ黒になっている雲を見てびっくりして。「帰りましょう」と言って、慌てて帰ろうとしたんですが…」

しかしその頃、小屋浦の状況は一変していました。二人の自宅にも土砂が流れ込み、避難所となった公民館で一晩を過ごすことになりました。食事や毛布の配布といった情報は、声によるアナウンスのみ。混雑した避難所で、不安な夜を過ごしました。
■大島タマルさん
「お腹がすいて、(食事が)何時ぐらいなのかとか情報が分からなくて。「あ、今ご飯が届いたんだな」と見て分かったら、もらうようにしていました。」

その後、娘の家に身を寄せた二人は、ボランティアの支援を受けながら、生活を再建しました。
■大島タマルさん
「遠くから来ていただいてね。驚きました。ありがたかったです。」

しかし、この先起こり得る災害への不安はぬぐえません。サイレンや防災無線のほか、様々な外の音に気付くことができないためです。さらに、雨や風が強くなったことも分かりにくく、家に何か被害が出ても、振動などがない限り分からないと言います。

■大島タマルさん
「分からないまま、ここにいるかもしれません。隣の部屋が流されたりしても、見える範囲なら分かるかもしれませんけれども、見えない他の所が何かあっても分からないので、逃げなきゃいけない時には、教えてもらいたいです。毎日ではないです。何か起こった時、本当に逃げなきゃいけない時には、教えてもらいたいです。」

(左)広島県ろうあ連盟 横村泰子さん/(右)広島テレビ塚原美緒気象予報士・防災士
西日本豪雨の時、聴覚障害者の支援にあたった広島県ろうあ連盟の横村恭子さんも、支援の重要さを呼びかけています。
■広島県ろうあ連盟 横村恭子さん
「(災害時は)いろんな情報がメールに入ってきましたが、起きたら分かるんですけど、寝ている時には分かりません。聞こえないということは、やっぱり限界がありますね。」

誰一人逃げ遅れないために、私たちが知っておくべきことを聞きました。
■広島県ろうあ連盟 横村恭子さん
「『早く逃げた方がいいですよ』『一緒に行きましょう』というように、短く話しかけてもらったら、聞こえない人も助かると思います。例えば筆談もありますし、身振りで伝えることもできますし、必ず手話ができなければいけない、というわけではないんですね。いろんな方法がありますので、それをあらかじめどんな方法があるか、分かっていただけたらいいかなと思います。」

聴覚障害者が災害時に直面する困難として挙げられるのは、大きく3つあります。1つ目は、災害が迫っているときです。サイレンや防災無線、風雨や雷、濁流の音などで危険を察知できないと言います。2つ目は、災害に巻き込まれたときです。声を出して助けを呼べず、救助の声も聞こえないそうです。3つ目は、避難所です。食事や水の配給など必要な情報に気付きにくく、スマートフォンや補聴器など、普段使っている機器が使えなくなることもあります。

全日本ろうあ連盟のホームページによると、聴覚障害者の支援のためのコミュニケーション方法は、大きな声でゆっくり話すと伝わる人もいれば、手話か筆談が必要な人もいて、人によって様々なことから、まずはどのような伝え方が最善なのかを確認することが大切です。

広島テレビ 塚原美緒気象予報士・防災士
また、唇の動きだけでは正確に伝わらないため、身近や近所に支援が必要な人がいる場合は特に、筆談に使えるメモ帳やペン、停電時も考えて懐中電灯などを備えておくのが良いということでした。みんなが助かる『インクルーシブ防災』ために、何ができるかを考えてみてください。
【テレビ派 2025年9月24日放送】
最終更新日:2025年9月25日 21:12
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