阿部浩明2025年1月5日 10時45分

これまで作った手話カレンダーの一部=中島奈津子さん提供
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あいさつなど簡単な手話のイラストを添えた2025年版「手話カレンダー」ができた。耳の不自由な人と聴者の架け橋になって、「聞こえのバリアフリー」を進める一助になればとの願いが込められている。
作ったのは、手話を広める活動をしている一般社団法人手話秋田普及センター。16年版から始めて今年で10年目。イラストはすべて、代表理事の中島奈津子さん(49)が描いている。25年版はA3判を1300枚作製し、病院を中心に学校や図書館などにも配った。
中島さんの高校1年の長女は、生まれつき耳が聞こえない。長女との生活を通じて、聴覚障害者が抱く不安に気づくようになったし、さまざまな「聞こえのバリアー」も実感してきた。
中でも聴覚障害者が強く不安を感じるのは、病院で受診するとき。受け付けを済ませて受診の順番を待っていても、音声だけではいつ呼ばれたか気づきにくい。見逃すまいと窓口の人の口元をじっと見ていたいが、「不快な思いをさせてはいけない」と遠慮する。悩んでいるうちに順番を逃してしまい、最後までずっと待つはめに――といった体験がよくあるという。
そんな状況が少しでも改善すればと、これまでのカレンダーでは、「(おなかが)いたい」「だいじょうぶ」「おだいじに」「熱が上がる」「構わないですよ」「筆談でお願いします」「受付」「予約」など、病院の窓口での意思疎通に役立ちそうな言葉を多く紹介してきた。
イラストを見て覚えてくれる看護師や職員も増えて、少しずつ浸透してきた。17年度には県が表彰する「バリアフリー推進賞」に選ばれた。
中島さんは「ひと言でも手話で表現してくれると、自分のことを理解しようとしてくれていると感じて、ろう者にはとてもうれしいことなんです」と話す。
今年のカレンダーのテーマは、耳の聞こえないアスリートたちの国際大会「デフリンピック」。今秋の日本初開催に向けて、「応援」「頑張る(元気)」などの手話をあしらった。
中島さんは「バリアフリーというとスロープや手すりなどのハード面をイメージするかもしれないが、目には見えないけれど、聞こえにもバリアーがあることを知ってほしい」と話す。「ろう者にとって手話は大切な言語。聴者も簡単な手話を覚えて、使ってくれたらうれしいです」
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