女性に補聴器を装着する専門家。鳥や魚と異なり、人間は聴覚にとって必要な有毛細胞を自然に再生できない。科学者たちは現在、この限界を克服しようと取り組んでいる。(TRIK, ADOBE STOCK)

「難聴は治せない」が覆る? 治療への画期的な発見

失われた細胞を「治す」具体的な道筋がついに見え始めた さらにもうひとつの道も

2026.08.05
 女性に補聴器を装着する専門家。鳥や魚と異なり、人間は聴覚にとって必要な有毛細胞を自然に再生できない。科学者たちは現在、この限界を克服しようと取り組んでいる。(TRIK, ADOBE STOCK)

女性に補聴器を装着する専門家。鳥や魚と異なり、人間は聴覚にとって必要な有毛細胞を自然に再生できない。科学者たちは現在、この限界を克服しようと取り組んでいる。(TRIK, ADOBE STOCK)


 聴覚の研究者たちは何十年もの間、ある生物学的に奇妙な矛盾の解明に取り組んできた。

 加齢や外傷により、内耳の有毛細胞が一定数死滅すると、通常は元に戻らない。補聴器は音を増幅し、人工内耳は損傷した構造を迂回(うかい)して音を伝達するが、いずれも細胞そのものを回復させることはできない。

 しかし、このような制限が存在しない動物もいる。

 鳥は音を聞くための感覚細胞を再生できる。魚も同様だ。それらの細胞が損傷すると、新しい細胞が代わりとなる。(参考記事:「すり減った軟骨の再生の実現近づく、変形性関節症の新しい治療法」)

 人間にはそれができない。

 少なくとも、そう思われていた。しかし、過去10年間に行われた一連のマウス実験により、できないとは言い切れなくなってきている。出生後のごく短い期間、哺乳類の内耳には限られた修復能力があることが示されたのだ。

 研究者たちは当初、修復能力を再び活性化できるマスタースイッチがあるのではないかと期待していた。しかし、実際にあるのはスイッチというより、分子のレシピのようなものだったようだ。

 適切なシグナルをもたらす分子の組み合わせ(レシピ)があれば、内耳にある蝸牛(かぎゅう)の支持細胞(有毛細胞を支える細胞)から、有毛細胞のような細胞が得られることがわかってきた。現在の課題は、有毛細胞への変化を最後まで完了させることだ。

 聴力の回復はどこまで近づいているのか、研究の最前線を追った。(参考記事:「事故で失った視力が回復し始めた、幹細胞再生医療の最前線」)

 

記事のポイント! 

加齢や外傷で失われた内耳の有毛細胞は、これまで再生できないと考えられてきました。しかし、哺乳類の内耳にも出生後の短期間は修復能力があることが判明し、複数の分子を適切に組み合わせることで、支持細胞を有毛細胞のような細胞へ変化させる道筋が見え始めています。細胞を完全に成熟させ、実際の聴力回復につなげられるかが今後の課題です。

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気になる症状がある場合は 

聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。 


原文掲載元はこちら 

 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/26/073100426/

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