聞こえにくそうに耳に手を当てる男性

「難聴」は認知症の危険因子? 放置のリスクと補聴器ケアの可能性を医師が解説

 公開日:2026/07/28

聞こえにくそうに耳に手を当てる男性


「最近、聞こえにくくなった」と感じても、「歳のせいだから仕方ない」と諦めていませんか。加齢性難聴を完全に防ぐのは難しいものの、騒音を避ける、生活習慣病を管理するといった工夫で進行を緩やかにできる可能性があります。また、難聴の放置は生活の質の低下を招くほか、認知機能の低下や認知症との関連も報告されています。聞こえにくさの原因には耳垢や中耳炎など治療で改善が期待できる病気もあるため、自覚した時点で耳鼻咽喉科を受診することが大切です。加齢性難聴の仕組みや進行を緩やかにする工夫、補聴器を検討する目安について、ひろせクリニックの廣瀬みずき先生に聞きました。

※2026年4月取材。

監修医師:
廣瀬 みずき(ひろせクリニック)


耳が遠くなるのはなぜ? 加齢との関係

耳に手を当てる年配の女性

編集部

難聴について教えてください。

廣瀬先生

「耳が遠い=年齢によるもの」と考えられがちですが、難聴の原因はそれだけではありません。難聴は大きく分けて、音の伝わりに問題がある伝音難聴と、内耳や神経の働きに問題がある感音難聴に分類されます。

編集部

年齢とともに耳が遠くなるのはよくある現象なのでしょうか。

廣瀬先生

はい、多くは60歳以降にみられます。一般的に「耳が遠くなった」と感じる状態のうち、加齢以外に明らかな原因が認められないものは「加齢性難聴(老人性難聴)」と呼ばれ、主に感音難聴に含まれます。両耳で同程度の聴力低下が起こり、特に高い音から聞き取りにくくなるのが特徴です。

編集部

なぜ聞こえにくくなるのでしょうか。

廣瀬先生

加齢に伴い、内耳の感覚細胞や神経、音を理解する脳の働きが低下するためです。その結果、音そのものは感じ取れていても、言葉としてはっきり聞き取れない状態が生じます。加齢性難聴は音が小さく聞こえるだけでなく、特に子音が聞き取りにくくなるため、「聞こえているのに何と言ったのか分からない」と感じるケースが多い傾向にあります。

編集部

どのような変化から気づく場合が多いのでしょうか。

廣瀬先生

会話の聞き取りづらさや、テレビの音量が以前より大きくなるといった変化がきっかけになります。特に騒がしい場所での会話は分かりにくくなります。また、周囲との会話がかみ合わない、多人数での会話で自分だけ聞き逃す、会話についていけないといった違和感から気づく場合もあります。


防げるの? 進行を遅らせることはできる?

考える女性


編集部

加齢による難聴は防げるのでしょうか。

廣瀬先生

完全に防ぐのは困難です。しかし、進行を緩やかにできる可能性があります。日常生活の中で耳に負担をかける要因を減らし、全身の健康状態を保つ工夫が聴力の維持につながると考えられています。

編集部

どのような点に気をつければよいですか。

廣瀬先生

大きな音や騒音環境を避けるほか、適度な運動やバランスの取れた食事、質のよい睡眠が重要です。また、動脈硬化や糖尿病といった生活習慣病は内耳の血流にも影響を与えるため、生活習慣病を適切に管理すると聴力低下の進行抑制につながる可能性があります。
最近はワイヤレスイヤホンの普及により、イヤホンを使用する時間が長くなる傾向にあります。長時間の使用や大きな音量での使用は耳への負担となり、騒音性難聴の原因となるため、適切な音量と使用時間を心掛けてください。

編集部

進行するとどのような影響がありますか。

廣瀬先生

会話そのものが負担となり、人とのコミュニケーションを避けるようになります。また、難聴は日常生活の質の低下を招くほか、認知機能の低下や認知症との関連も報告されています。そのため、聞こえにくさを放置せず、早めに耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。

編集部

どのようなタイミングで受診を考えるべきですか。

廣瀬先生

聞こえにくさを自覚した時点で、一度相談してください。加齢性難聴はゆっくり進行するため気づきにくく、自覚したときには進行している場合も少なくありません。加齢性難聴以外にも、耳垢による閉塞や中耳炎など、治療によって改善が期待できる病気が原因となっている場合もあります。早期に状態を把握し、その後の対応を考える必要があります。

編集部

確かに、聞こえにくさが加齢性難聴によるものとは限りませんよね。

廣瀬先生

そのとおりです。「歳のせい」と思っていても、実は耳の病気や、まれに脳の病気が関係しているケースもあります。そのため、自己判断せずに原因を確認する対応が、早期発見・早期治療につながります。


「歳のせい」で放置しないために

補聴器をつけた男性


編集部

加齢性難聴の治療について教えてください。

廣瀬先生

主に補聴器の装用や生活環境の工夫などを行います。加齢性難聴は、内耳や神経の機能が徐々に低下して起こるため、根本的に元の状態に戻す治療は難しいとされています。そのため、治療では聞こえにくさを補い、日常生活やコミュニケーションへの影響を最小限に抑える目的があります。

編集部

補聴器はどのようなタイミングで検討するのでしょうか。

廣瀬先生

日常会話に支障が出ている場合が一つの目安です。聴力の数値だけでなく、生活への影響や本人の困りごとを踏まえて判断するため、耳鼻咽喉科医師(特に補聴器相談医)と相談しながら適切なタイミングを見極める必要があります。

編集部

「年齢のせい」ではなく、補聴器などできちんと対応する姿勢が大事なのですね。

廣瀬先生

日本の高齢者の難聴有病率は、70歳代では男女とも7割、80歳代では男性の約8割、女性の7割に達すると報告されています。難聴は高齢者の生活の質(QOL)に悪影響を及ぼし、認知症の重要な危険因子の一つとも考えられています。しかし、適切な時期に補聴器などで難聴のケアを行うと、認知機能の低下を抑制できる可能性が示されています。

編集部

周囲の人はどのように対応すればよいですか。

廣瀬先生

単に大きな声で話すのではなく、やや低めの声でゆっくり、はっきり話すと有効です。また、できるだけ静かな環境で話す、正面から話しかけるといった工夫で、同じ声量でも伝わりやすくなります。


記事のポイント! 

加齢性難聴は会話や生活の質に影響し、認知機能の低下との関連も指摘されています。聞こえにくさを年齢のせいと決めつけず、早めに耳鼻咽喉科を受診し、必要に応じて補聴器を活用することの大切さが分かります。

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気になる症状がある場合は  

聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。 


原文掲載元はこちら 

 https://medicaldoc.jp/m/column-m/202604p0316/

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