長崎新聞 2025/11/14 [11:18] 公開

ピアノを前にオリジナル曲の発表を楽しみにする前田さんと、指導するみおさん=佐世保市内
生まれつき両耳に感音性難聴があり、人工内耳で生活しながら音楽を楽しむ高校生がいる。長崎県佐世保市の九州文化学園高1年の前田彩葉(いろは)さん(16)。地道な努力で“耳の力”を育ててきた。「ながさきピース文化祭2025」の一環として15日に市内で開かれる音楽イベントに出演し、ピアノの弾き語りでオリジナル曲を発表する。
「手話の道しかないと思っていたが、彩葉の声を聞きたかった。聞こえる可能性を信じた」。父親の芳照さん(49)、母親の亮子さん(51)は、娘の将来を考えて手術を決断した。
彩葉さんは2歳の時に左耳、3歳の時に右耳に人工内耳の手術をした。内耳の蝸牛(かぎゅう)に電極を挿入。外部の耳に装着した集音装置によって変換された電気信号を、その電極に伝えて聴神経を刺激し、脳で音として認識している。
両親は「心の声を思いながら、一つ一つの言葉を繰り返し発音して教え、耳を育てていった」と、術後に重ね続けたリハビリの日々を振り返る。
大村市の県立ろう学校幼稚部卒業後は「将来を考えて、友達がたくさんいる環境で学習してほしい」と地元の小中学校に進学。音楽療法を取り入れる中、小学生時代に「卒業式でみんなと一緒に歌いたい」という気持ちが芽生えた。そこで佐世保のジャズピアニスト、「みお」の名前で活動する林田美緒さん(41)の教室に通い、音程の習得に向けたレッスンを始めた。
ピアノのコードの音、それを鍵盤で弾く指の形を覚えることからスタートし、中学生になると、弾き語りをするまでになった。みおさんは「歌うのも、聞くのも好き。堂々と歌い、上達している。やりたいことを教えていきたい」と支援する。
相手の口の動きで言葉を読み取って会話をする力を自然に身に付け、友人とのカラオケが楽しいという。弓道部でも活動する。両親は「今も間違いがあるが、言葉を覚え続けている。気持ちが前向き。いろんなことに挑戦している。成長を支えていきたい」と思いを語る。
イベントはアルカスSASEBOの1階ロビーで開催され、みおさんのグループと共演する。演奏曲は彩葉さん作詞、みおさん作曲の「My Story」。彩葉さんは「歌詞の内容は本番まで非公開。自分は自分。健常者のつもりで頑張っている。差別もなかった。みんなの助けに感謝。障害がある人とか、いろんな人に自分のことを伝えたい」と希望のメロディーを奏でる。
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