飲酒が「加齢性難聴」に与える影響、性別や遺伝的背景によって異なると判明-東北大

飲酒が「加齢性難聴」に与える影響、性別や遺伝的背景によって異なると判明-東北大

2026年01月08日 AM09:20

加齢性難聴への飲酒効果、「危険」と「保護的」両方の意見があった

東北大学は12月16日、アルコール摂取と加齢性難聴の関連を大規模データで解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野の香取幸夫教授、鈴木淳准教授、高橋ひより非常勤講師、同大東北メディカル・メガバンク機構バイオマーカー探索分野の布施昇男教授、同大大学院医学系研究科公衆衛生学分野の寳澤篤教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」の電子版に掲載されている。画像はリリースより (詳細は▼関連リンクからご確認ください)

画像はリリースより
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加齢に伴って進行する「加齢性難聴」は、高音域から聞き取りにくくなる感音難聴であり、日常生活の質や社会参加に大きな影響を及ぼす。高齢化が進む日本では、難聴のある人は今後さらに増加すると予想されている。推計では、2020年に約2056万人だった難聴者数は、2030年には約2275万人に増え、10年間で約10%増加するとされている。難聴は、会話の機会を減らし、社会的孤立や抑うつのリスクを高めることが知られており、近年では認知症との関連も注目されている。2024年には、中年期の難聴に適切に介入することで、将来の認知症が約7%減少する可能性があると報告され、予防や早期の対応の重要性が示された。

このように、加齢性難聴は個人の問題にとどまらず、社会全体で取り組むべき重要な健康課題だ。その発症や進行には、加齢に加えて騒音曝露や生活習慣病など、さまざまな要因が関与すると考えられている。飲酒は身近な生活習慣であるが、加齢性難聴に与える影響については、危険因子とする報告と保護的に働くとする相反する報告があり、見解は一致していなかった。この背景には難聴の定義や飲酒量の区分、性別の扱いなど、研究間での条件の違いが影響していると考えられた。そこで研究グループは今回、加齢性難聴と飲酒量との関連性を明らかにすることを目的とした。


50~79歳の男女1万4,971人対象、飲酒が難聴に与える影響を調査


研究対象となったのは、東北メディカル・メガバンク計画が推進するコホート調査の参加者のうち、2021年7月~2024年1月に標準純音聴力検査を受けた50~79歳の参加者1万4,971人(男性5,376人、女性9,595人)。飲酒量は自己記入式質問票から1日あたりの純アルコール摂取量を算出し、男女で飲酒量の分布が異なることを踏まえて性別ごとに飲酒量区分を設定した。また、年齢、喫煙、生活習慣病の有無などの影響を考慮して解析を行った。


男性では飲酒量が増えるほど割合高、女性は1日10~20g程度で割合低下


その結果、男性では1日60g以上のアルコール摂取群で、生涯飲酒しない群と比較して高音域(4,000Hz)において難聴の割合が高いことが示された。特に60~80g群ではオッズ比1.42(95%信頼区間:1.05-1.94、p=0.026)、さらに80g以上の大量飲酒群ではオッズ比1.55(95%信頼区間:1.12-2.16、p=0.009)と、摂取量が増えるほど難聴の割合が高まることが認められた。

一方、女性では1日10~20g程度の飲酒群で、生涯飲酒しない群と比較して高音域(4,000Hz)において、難聴の割合が低いことが認められた(オッズ比0.81、95%信頼区間0.68-0.96、p=0.016)。


飲酒が難聴に与える影響が、アルコール代謝に関わる遺伝因子により変動する可能性


さらに、アルコール代謝にかかわる遺伝的背景にも着目し、解析を行った。お酒の分解に関わる遺伝子ALDH2など、飲酒量と関連することが知られている遺伝子の多型を対象に検討したところ、rs671(ALDH2)、rs79463616(ALDH2)などの多型において、飲酒量と加齢性難聴との関連の現れ方が異なる可能性が示唆された。

例えば、男性では、アセトアルデヒドを分解する能力が高いrs671(ALDH2)のG/G型であっても、1日80g以上の大量飲酒群では高音域の難聴を呈する参加者が多く、アルコール耐性が高い遺伝子型であっても、多量飲酒により聴力低下のリスクが高まる可能性が示唆された(オッズ比1.57、95%信頼区間1.10-2.28、p=0.015)。女性では、全体では少量~中等量の飲酒(1日10~20g)で難聴が少ない傾向がみられたが、rs79463616(ALDH2)の多型のタイプによっては、1日40g以上の多量飲酒群で難聴の割合が高いことが示された(オッズ比1.82、95%信頼区間1.08-3.06、p=0.023)。


加齢性難聴の予防や個別化された健康指導への応用に期待


今回の研究により、加齢性難聴と飲酒量の関連は、性別やアルコール代謝に関わる遺伝的背景によって異なる可能性が示された。男性では多量飲酒(1日60g以上)で高音域の難聴が多く、女性では少量~中等量飲酒(1日10~20g)で難聴が少ないことが示された。

また、飲酒関連遺伝子の一塩基多型により、同じ飲酒量でも難聴との関連の現れ方が異なる可能性が認められた。しかし、同研究は横断研究であるため、飲酒が難聴を引き起こす因果関係を直接示すものではない。また、飲酒にはさまざまなリスクが報告されており、同研究結果が女性における少量~中等量の飲酒を奨励するものではないとしている。

「今後、同一参加者を追跡調査し、飲酒量が聴力の長期的変化にどのように影響するかを検討する研究を検討している。これにより、加齢性難聴の予防や個別化された健康指導への応用が進むことが期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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