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ショウジョウバエは、触角の振動を「ジョンストン器官」と呼ばれる音受容器に伝えることで音を感じます。千葉大学の研究では、さなぎの時期に触角の関節構造が形成され、音受容器と外骨格が接続される過程を明らかにしました。これらの構造は遺伝子変異によって損なわれると、ショウジョウバエの難聴や失聴につながることが知られています。今回の発見は、聴覚器官の発生や維持に関わる仕組みの解明につながると期待されています。
国立大学法人千葉大学
2026年10月15日 10時00分
千葉大学大学院理学研究院の田尻怜子准教授、同大学院融合理工学府博士後期課程の江珊(Shan Jiang)氏の研究チームは、昆虫の「耳」に相当する聴覚器官の複雑精緻な構造がどのようにつくられるのかの解明を目指し、ショウジョウバエの触角の聴覚器官の形態形成過程を解析しました。その結果、外骨格(注1)が音を受けて振動するために重要な構造である関節の形成プロセスや、音受容器のニューロンと関節の外骨格を接続する樹状突起キャップの形成と伸長プロセスを明らかにしました。今回の研究成果は、聴覚器官の発生や維持の分子メカニズムの解明や、その進化機構の理解につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年10月2日に、学術誌Discover Developmental Biologyで公開されました。
論文はこちら:10.1007/s00427-026-00734-2

図:成虫の触角の聴覚を担う構造
■研究の背景
ショウジョウバエの触角は主に3つの節からなり、音を受けて先端の節が振動すると、その付け根にある関節が回転します。この回転が、関節に接続する「ジョンストン器官(JO)(注2)」と呼ばれる受容器に伝わることで音が感知されます。この関節の構造や、JOと関節外骨格とを接続する構造は非常に精巧であり、遺伝子変異によってこれらの構造が破綻すると難聴・失聴を引き起こすことが知られていました。しかし、幼虫期から、成虫になるまでの間にどのように外骨格が関節を形作り、そこにJOがどのように接続するのか、これらのプロセスを詳細に観察した研究はこれまで報告されていませんでした。
■研究成果のポイント
〇 ショウジョウバエの幼虫期と成虫をつなぐ、さなぎの時期の外骨格とJO、およびそれらの間の接着装置の形態を、共焦点レーザー顕微鏡を用いて経時的に追跡しました。
〇 外骨格を形成する表皮は関節領域で徐々に陥入していって、蛹化後約48時間には深くくぼんだ関節の構造が完成し、その後にクチクラを分泌していました。
〇 JOのニューロンの樹状突起は最終的に、細胞外基質を介してクチクラに接着します。この接着基質の構成因子であるNompA(注3)タンパク質を観察した結果、接着基質はJOの細胞から分泌され始め、表皮の最外層まで伸長していました。
〇 JOと表皮はクチクラが分泌されるより前から、接着基質によって結びつくと考えられ、この接着は表皮の陥入の進行過程を通じて最前線(くぼみの最深部)に位置していることがわかりました。これらから、JOが表皮の陥入を物理的に、あるいは何らかの化学的シグナルを介して誘導することが強く示唆されました。
■今後の展望(研究者コメント)
ショウジョウバエの触角において、扁平な組織から関節構造や音受容器と関節の接着構造ができる発生プロセスを理解することができました。今後は、このプロセスに関わる遺伝子の機能や物理的な作用を解析することによって、音を感じる複雑精緻な構造をつくりだす分子・力学メカニズムの全貌を明らかにしたいと考えています。
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原文掲載元はこちら
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001258.000015177.html
