更新日:2025/10/02

ある日突然、耳が聞こえにくくなったり、ぐるぐると回るような強いめまいに襲われたりする……。こうした耳の不調は、日常生活に大きな影響を及ぼす一方、それぞれ症状や治療法が異なり、正確な診断と早期の対応が重要になります。今回は、考えられる病気や受診の流れ、それぞれの治療法について、「給田耳鼻咽喉科クリニック」の杉崎先生に解説していただきました。
監修医師:
杉崎 一樹(給田耳鼻咽喉科クリニック)
日本医科大学卒業。その後、日本医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科や海老名総合病院耳鼻咽喉科、埼玉医科大学耳鼻咽喉科・神経耳科などで経験を積み、2015年、東京都世田谷区に「給田耳鼻咽喉科クリニック」を開院。医学博士、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会耳鼻咽喉科専門医・補聴器相談医、日本めまい平衡医学会認定めまい相談医。
目次 -INDEX-
めまいや難聴が起こる原因
メニエール病と突発性難聴の治療法
めまいや聞こえにくさの受診の目安
編集部まとめ
医院情報
めまいや難聴が起こる原因

編集部編集部
めまいと難聴の両方がある場合、どのような病気が考えられるのでしょうか?
杉崎先生杉崎先生
「メニエール病」や「突発性難聴」が代表的です。どちらも耳の異常が原因で起こる病気ですが、症状の表れ方や経過、治療法が異なります。
編集部編集部
具体的に、どのような違いがありますか?
杉崎先生杉崎先生
メニエール病は、めまいや耳の不調を繰り返すのが特徴で、回転性の強いめまいが突然起こり、数十分から数時間続きます。その一方、突発性難聴は、明確なきっかけもなく急激に聴力が低下するもので、めまいが約4割にみられます。
編集部編集部
難聴や耳鳴りの出方にも違いはあるのでしょうか?
杉崎先生杉崎先生
はい。メニエール病では、特に低音域の聞こえにくさから始まり、耳が詰まったような感じや耳鳴りが一緒に出ることが多い傾向にあります。一方で、突発性難聴は比較的広い音域で急激な聴力低下が起こることが多く、耳鳴りも強く出るケースがあります。
編集部編集部
それぞれの原因はなんですか?
杉崎先生杉崎先生
メニエール病は、内耳のリンパ液が過剰にたまる「内リンパ水腫」が原因とされています。突発性難聴は原因がはっきりわかっていません。ウイルス感染や血流障害、ストレスなどが関係していると考えられています。
メニエール病と突発性難聴の治療法
編集部編集部
治療法にも違いはあるのでしょうか?
杉崎先生杉崎先生
大きく異なります。突発性難聴はとにかく早期治療がカギで、発症からできるだけ早くステロイドや血流改善薬を使い、聴力回復の可能性を高めます。また、メニエール病は繰り返して症状が出たときに初めて診断がつきます。症状を改善させる治療をおこない、その後は再発が起こらないように治療をしていきます。再発の予防には、利尿薬や漢方薬、生活指導などを継続的におこなっていきます。
編集部編集部
生活指導も重要なのですか?
杉崎先生杉崎先生
そうですね。特にメニエール病ではストレス、睡眠不足、過労が大敵です。ストレスや睡眠不足が続くと症状が強く出やすいので、規則正しい睡眠や休養、バランスのとれた食生活などは再発や悪化の予防につながります。
編集部編集部
発症した後のことも教えてください。
杉崎先生杉崎先生
繰り返しになりますが、突発性難聴は早期発見・早期治療がポイントで、治療開始の早さが回復率と大きく関係していると言われています。発症してから、少なくとも数日以内には治療を開始したいところです。メニエール病は、ひとまず症状がおさまっても再発しやすいため、発作を起こりにくくするための薬物治療や生活指導をおこないます。ストレス、睡眠障害がある場合は、そちらに対する治療も同時におこなうと効果的です。
めまいや聞こえにくさの受診の目安
編集部編集部
めまいや聞こえにくさで、急いで受診するのは少しためらわれます。
杉崎先生杉崎先生
特に突発性難聴の場合は、発症から早期の治療開始が望ましいので、異変に気づいたらすぐに受診してください。また、突発性難聴でもメニエール病でも、本人がはっきりとした難聴を自覚せずに「耳閉感」や「膜が張った感じ」といった違和感のみのこともあります。このような場合、じつは聴力検査で低音域中心の障害が見つかることもあるため、「違和感がある」だけでも受診することをおすすめします。その中には、耳垢や中耳炎が原因だったということもあります。
編集部編集部
何科を受診すればいいですか?
杉崎先生杉崎先生
基本的には、めまいや耳鳴り、難聴の場合は耳鼻科にご相談いただけたらと思います。例外として「激しい頭痛」「意識障害」「手足のしびれ・動かしにくさ」「言葉のしゃべりにくさ」などがある場合には、脳血管疾患の可能性が高いため、早急に神経内科・脳神経外科、もしくは救急外来を受診してください。
編集部編集部
耳鼻科では、どのようなことをおこなうのでしょうか?
杉崎先生杉崎先生
まずは耳の奥の鼓膜の状態を確認し、聴力検査、平衡機能検査、眼振検査などをおこないます。最近は、2022年から保険適用となった精密検査「ビデオヘッドインパルス検査(vHIT)」で、左右の三半規管の機能を測定することも可能になりました。
編集部編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
杉崎先生杉崎先生
聞こえや平衡機能を司る「内耳」は、日常生活を送る上で非常に大切な器官です。耳鼻科は、これらの感覚器を専門的に扱う標榜科です。普段はあまり受診する機会がないかもしれませんが、難聴やめまいがある場合には、気軽にご相談ください。
編集部まとめ
メニエール病も突発性難聴も、耳の不調から始まる病気ですが、その原因や経過、治療方針には違いがあることがわかりました。特に突発性難聴は早期の対応が予後に大きく影響するため、少しでも異変を感じたら、すぐに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。繰り返すめまいや耳鳴りも我慢せず、専門医の診断を受けるようにしましょう。
参考文献:
日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会「突発性難聴とは?」
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳鼻咽喉科・頭頸部外科が扱う代表的な病気:耳の病気」
リンク先はメディカルドックというサイトの記事になります。