40代から増える「耳鳴り・難聴」に要注意! 〈第8回〉
難聴や耳鳴りの悪化には、疲れやストレスなどで自律神経が乱れること、それに加え、血流の悪さも関係しています。体は全身つながっているので、耳の不調を予防・軽減するためには、耳のまわりだけでなく、全身の運動が欠かせません。では、どんな運動が効果的なのでしょうか? 耳鼻咽喉科医で医学博士の石井正則先生に伺いました。
ヨガは有酸素運動と反復運動のダブル効果!
難聴や耳鳴りは過労や寝不足、過度なストレスなどで自律神経が乱れたり、血流の悪さも大きく関係しています。
※詳しくは第3回参照。
耳の健康を守るためには、適度な運動を行うことも大切だというのですが、ではその適度で効果的な運動とはどんなものなのでしょうか?
「おすすめは有酸素運動です。代表的なものはウォーキングや軽めのジョギング、サイクリング、ダンス、水泳などがありますが、なかでも呼吸を意識した常温のヨガがおすすめです。ホットヨガは交感神経が過剰に、そして異常に興奮するのでかえって耳の症状が悪化するエビデンスがあります。
常温のヨガには全身の血流や脂肪燃焼を促すだけでなく、ストレスの緩和や自律神経を整える効果が高いので、まさに耳の健康を守るためには最適な運動です。
また、ヨガには筋肉と骨に圧力をかける反復運動による筋トレの要素もあります。これは神経のネットワーク機能を回復し、記憶力のアップや骨を丈夫にする効果もあることがわかっています。つまり認知症や骨粗しょう症の予防にもとてもよいのです。
ヨガにはこの有酸素運動と反復運動による筋トレ、両方の効果があるわけです。しかも、ゆっくりした動きで行うので、腰や膝への負担が少なく、運動習慣がない人でも取り入れやすいと思います」(石井正則先生)
「壁ヨガ」で体に負担なく効果アップ!
とはいえ、ヨガというとアクロバティックなポーズで静止するイメージで、少しハードルが高いと思っている人も少なくないようです。
「そんな人でも簡単にできるのが『壁ヨガ』です。これは壁に手をついて体を支えながら行うヨガです。安定感がよく負荷が軽くなるのでラクにできるうえ、効果はしっかりあるので、特に初心者や高齢者にもおすすめです」
【壁ヨガ① 腕立て伏せ】
本来は床に手をついて行う「プランク=腕立て伏せ」に当たるエクササイズです。
1.壁に向かって立つ

左右の足は肩幅に開き、両足の裏をつけて壁の前に立ちます。壁と足との距離は腕の長さよりも足サイズ(つま先からかかとまで)1~2個分遠い位置で、両手を壁につけます。体が壁に対してやや斜めになるくらいが目安です。この基本のフォームで、鼻からゆっくり息を吸います。
2.胸を壁に近づける

3.元に戻る
息を6秒かけて吐きながら、両手で壁を押してゆっくり元に戻ります。
1~3の動きを10~20回繰り返します。
慣れてきたら、両足の位置を壁から少しずつ離していきます。
これでもOK!

両足の裏を床につけた状態が難しい場合は、つま先立ちでもOK。少しラクになります。
【壁ヨガ② 片膝引き込み】
1.基本のフォームで立つ

2.片膝を曲げる

3.元に戻る
息を6秒かけて吐きながら、ゆっくり元に戻ります。左脚も同様に行います。
1~3の動きを左右1セットとして、10~20回繰り返します。
慣れてきたら、両足の位置を壁から少しずつ離していきます。
「壁を腕でしっかり押したり、足裏でふんばることで、効率よく全身の筋肉と骨に刺激を与えることができます。血流改善や神経のネットワークの活性化などで、耳の健康維持にも役に立ちます」
[教えていただいた方】

石井正則さん
耳鼻咽喉科医・医学博士
公式サイトを見る
JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長。東京慈恵会医科大学大学院卒業とともに、米国ヒューストン・ベイラー医科大学耳鼻咽喉科へ留学。帰国後、東京慈恵会医科大学附属病院耳鼻咽喉科医長、同大学准教授を経て現職。岐阜大学臨床教授を併任。専門は耳鳴り、めまい、難聴、宇宙酔い。日本耳鼻咽喉科学会代議員、宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙医学審査会委員。ヨギー・インスティテュート認定インストラクターであり、ヨガのポーズと呼吸の応用で、耳鳴りやめまいの軽減法を提唱している。著書に『70歳から難聴・耳鳴り・認知症を防ぐ対処法』(さくら舎)など多数。
イラスト/かくたりかこ 取材・文/山村浩子
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