2025年8月16日 18:00

言葉の発達を支援する専門家の1つとして国家資格を持った言語聴覚士と呼ばれる職業があります。
その言語聴覚士として新潟市内で発達支援教室を営む、女性を取材しました。
◆発達障害を抱える児童・生徒は増加
取材した蛯原大河アナ
こちらのグラフは文部科学省が調査した発達障害を抱える児童・生徒の数の推移です。
この30年間で約16倍に増加し、全国で20万人を超えています。
その中で最も多いのが、言葉の発達や使用に困難がある「言語障害」といわれるものです。
◆ことばの発達に寄り添う


楽しそうに子どもとおしゃべりをしているのは長谷川汐理さん、「言語聴覚士」です。
【言語聴覚士 長谷川汐理さん】
「取れる?」「これなーんだ?」
【女の子】
「しょべるかー」
【言語聴覚士 長谷川汐理さん】
「正解!上手に言えました」
言語聴覚士とは「話す・聞く・食べる」ことに障害を抱える人に対して、訓練や指導、助言などの援助を行う国家資格の専門職です。
◆発音や吃音の悩みを抱えるこどもにレッスン

汐理さんは新潟市内のアパートの一室でおもに発音や吃音の悩みを抱える子どもたちに向けて、レッスンを行っています。
【言語聴覚士 長谷川汐理さん】
「できるが増えるって言うんですかね。そういうのが増えていって自信をつけていっているなという姿が目に見えるということが、すごくやりがいに感じております」
◆一度は別の仕事に
汐理さんは言語聴覚士について学べる新潟医療福祉大学の言語聴覚学科を卒業。言語聴覚士の資格を取得したものの、一度は別の仕事に就いたといいます。
【言語聴覚士 長谷川汐理さん】
「(前職の)同僚のお子さんが障害があって、新潟市でどこに相談したらよいか分からないと言っていたり、相談する場所があっても予約がいっぱいでとれないということを言っていて……県外で言語聴覚士の教室があるのかなと調べてみたりして、私も自分でやってみたいなという風に思ってこの教室を開設しました」
◆発達支援教室「ことばの海」を開設


言語聴覚士 長谷川汐理さん

そんな汐理さんがおととし開設したのが発達支援教室「ことばの海」です。
【言語聴覚士 長谷川汐理さん】
「海はすごく深いところまであるじゃないですか。まだまだ謎なことがいっぱいあるじゃないですか。日本語だけでも主語や述語、形容詞があったりとか、使う人によって意味が変わってきたりとか、日本語ってすごく深いなというところで……そういうところから、ことばの海にしました」
◆母親と二人三脚で運営

汐理さんの母・久美子さん
ことばの海を陰で支えているのが汐理さんの母・久美子さんです。
経理などの事務作業は、ほとんどが久美子さんの担当。近所の塾で事務員として働きながら、二人三脚で「ことばの海」を運営しています。
【母・久美子さん】
「始める前は、生徒さんなんて来るのかなって思ってたんですけど、結構な問い合わせいただいてたりするので、困っている方いっぱいいるんだなと思って驚いていました」
◆楽しみながら訓練を

この日、ことばの海を訪れたのは5歳の女の子。「さ行」と「た行」がうまく発音できない悩みがあるといいます。
【言語聴覚士 長谷川汐理さん】
「ある?あったあった、それそれ!」
「じゃじゃーん、なーんだ?」
【女の子】
「しょうぼうしゃ」
【言語聴覚士 長谷川汐理さん】
「正解!」
一人ひとりの悩みに合わせ、レッスンで使う道具を考えるという汐理さん。神経衰弱やすごろく、くじ引きなど楽しみながら訓練できる工夫をしています。
◆利用者の大半は小学校入学前の子ども

汐理さんによると、ことばの海を利用する人のほとんどは小学校入学前の子どもだといいます。
子どもの小さな発音の誤りを可愛いと思って放置してしまうと、その後の発達に影響を与える可能性があるといいます。
【言語聴覚士 長谷川汐理さん】
「(例えば)『さかな』が“しゃかな”になったままだと、そっちの方が正しい音だという風に認識してしまう。“しゃかな”のまま小学生に上がってしまうと、『さ』が書けないというような問題に繋がる可能性もあるので」
今年の4月から通い始めたという女の子。母親は、「ことばの海」の存在が大きな助けになっているといいます。
【女の子の母親】
「病院だと治療という面が強く出てしまうと思うんですけど、ことばの海だと遊びのようなものを通して習えるので、子どもも習い事の一環のような感じで通えていて、すごくハードルが低くてよかったなと思います」
◆「地元・新潟に恩返ししたい」

教室名の由来でもある「海」……汐理さんが幼いころから大好きな場所でした。汐理さんは、ことばの海を通して自分が育った地元・新潟に恩返しをしたいといいます。
【言語聴覚士 長谷川汐理さん】
「もっともっと新潟の人に“ことばの海”というところを知ってもらって、私も言語聴覚士として様々な人と出会って、寄り添っていけたらいいなという風に思っています」
ことばの悩みを抱える人の助けになりたい……汐理さんはこれからも海のように広い心で寄り添っていきます。
最終更新日:2025年8月16日 18:22
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