「言葉を手に入れました」 ろう者の少年に4年密着したドキュメンタリー「ぼくの名前はラワン」

「言葉を手に入れました」 ろう者の少年に4年密着したドキュメンタリー「ぼくの名前はラワン」

特集:やさしくなりたい
シネマ×SDGs
2026/01/11/ 07:00
中村千晶

ラワン(c)Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute

(c)Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute


 イラクで育ったクルド人少年ラワンは生まれつき耳が聞こえないろう者だ。ラワンの将来を案じた一家はイギリスに渡り、ラワンはろう学校に通えることになる。イギリス手話と口話を学びようやく言葉を手に入れたラワンだが、一家に国外退去の危機が訪れて──?ラワンの4年間を追いかけたドキュメンタリー「ぼくの名前はラワン」。エドワード・ラブレース監督に本作の見どころを聞いた。

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ラワンと友達(c)Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institu友達

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手話を学ぶ人たち(c)Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute

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風船に耳を当てるラワン(c)Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute

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浜辺で友人と一緒のラワン(c)Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute

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 ラワンを知ったのはイギリスの有名なろうの写真家が撮った一枚の写真でした。聴者の両親はクルド語を、兄は英語を話すと知り、一家はどうやってコミュニケーションを取っているのだろう?と興味を持ったのです。最初に会ったとき、とてもシャイで好奇心旺盛な少年だと感じました。一家の記録を撮りたいと話すと両親も学校も喜んで協力してくれました。私自身も4年間手話を学び、彼と直接コミュニケーションを取れるようになり友情を深めたことで映画にできると確信しました。

 ラワンはイラクでは手話を学べず、自分の気持ちを伝える手段を持っていませんでした。イギリスで手話と口話を学び言葉を手に入れたラワンの進歩と変化は驚異的でした。よく「8歳を超えると言語の完全な習得は難しい」と言われます。ラワンは7歳からでしたが、どんどん吸収し自信をつけ、友人をリードし笑わせるようになりました。王立ろう学校は生徒に自分の言語を手話か口話のどちらにするかを選ばせてくれます。自分のアイデンティティーを自分で選択できることは素晴らしいです。ラワンは手話のみで生きていくことを選ぶのです。

 私はラワンが手話を選んだ理由を想像できます。あるときラワンが「Cat(猫)」と口話で言うと彼の父は大喜びしました。しかし我々のろうのスタッフが彼に言いました。「大きな進歩かもしれないけれど、ラワンは手話ではもっといろんなことを話し、冗談も言うんですよ」と。聴者はどうしても聞こえることで世界が成り立っていると思いがちです。しかしそうではない。ラワンにとって100%の自分でいられる言葉が手話なのです。自分の言葉を見つけることが、どれだけの奇跡を起こすことができるのか、ぜひ本作で体験してほしいです。

(取材/文・中村千晶)

イギリスの有名なろうの写真家(c)Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute

(c)Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute
※AERA 2026年1月12日号


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