年をとるほどハマる人が増える“幸せな習慣”が、認知症リスクを下げていた!

年をとるほどハマる人が増える“幸せな習慣”が、認知症リスクを下げていた!

杉本八郎:薬学者、脳科学者、グリーン・テック代表取締役
2025.6.11 8:30

笑顔の親子

写真はイメージです Photo:PIXTA


認知症の原因はさまざまだ。2017年の国際アルツハイマー病学会(AAIC)において、予防可能な認知症の危険因子として「高血圧」「糖尿病」「肥満」など9つの項目が挙げられ、中でも最大の危険因子は「難聴」と報告された。一方で、認知症予防でおすすめなのがボランティア活動だという。その理由を専門家が解説する。※本稿は、杉本八郎『82歳の認知症研究の第一人者が毎日していること』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。


「認知症の予防にいいから」

だけでは気が乗らなくて当然

 実は私にはもう1つ趣味があり(編集部注/著者は俳人としても有名。毎日必ず10句作っているという)、それが60年前から続けている剣道です。

 今も週に1回は道場に行って1時間ほど稽古に励んでいます。

 また、「剣道のためのトレーニング」として、腕立て伏せを50回、腹筋を50回、素振りを200回するのが毎日のルーティンになっています。

 この数字を聞くと驚かれる方も多いのですが、すでに習慣になっているので、別に大変だと思ったことはありません。

 でも、もしも「健康のため」とか、「認知症予防のためにこれをやれ」と言われたら、継続できるかどうか正直自信はありません。あくまでも私は、剣道の腕を上げたいから、トレーニングも頑張っているのです。

 年を重ねると、何をやるにも健康のためとか、認知症予防のため、という発想になりがちですが、それだけが目的だと継続するのは難しいと思います。勉強にしろ、運動にしろ、認知症予防以外の目的がもてるかどうか、それ自体を楽しいと思えるかどうかが、継続できるかどうかの分かれ目なのです。

 そして、健康効果や認知症予防効果というのは、何かを継続したことで、2次的にもたらされる結果です。

 そしてその2次的効果はそれをとことん極めようとすればするほど高くなります。逆にどれだけ効果的だといわれることでも継続できなかったり、あるいは適当にやっているというだけでは、健康効果も認知症予防効果もあまり期待はできないでしょう。


認知症リスクが上がる

最大の危険因子は難聴

 さて、2017年の国際アルツハイマー病学会(AAIC)において、認知症の専門家からなるランセット委員会は、「修正可能な認知症の危険因子」として「高血圧」「糖尿病」「肥満」など9つの項目を報告しましたが、その中の1つに「難聴」が挙げられました。その後、2020年には医学誌ランセットで、「予防可能な要因の中で最大の危険因子は難聴」という発表もなされています。


 難聴があると、音の刺激や脳に伝えられる情報量が少ない状態にさらされてしまい、それが認知症の発症に大きく影響するのではないかという国内外の報告もあるようですが、私は難聴が認知症リスクを上げるのは、人との会話が億劫になり、社会的孤立を深めてしまうことの影響が大きいのではないかと思っています。

 国立長寿医療研究センターが65歳以上の1万3984名を約10年間追跡した調査でも、「配偶者がいる」「同居家族と支援のやりとりがある」「友人との交流がある」「地域のグループ活動に参加している」「何らかの就労をしている」という5つのつながりをすべて有している人は、ひとつもない、あるいはひとつだけある、という人と比べて認知症発症リスクが46%低いこともわかっています(図10参照)。

図表1:つながりの多様性得点と認知症発症リスク

図表1:つながりの多様性得点と認知症発症リスク
同書より転載


孤立しがちな高齢者こそ
ボランティア活動に参加すべし

 このようなデータを見ても、仕事や趣味などを通じて配偶者や家族以外との積極的な交流を図ることは、認知症を寄せ付けないための重要な姿勢であるといえるでしょう。

 社会とのつながりを増やすという意味で、認知症予防に効果的だといわれるのがボランティア活動です。

 少し古いデータにはなりますが、2010年8月~2012年1月にかけて、全国の31自治体に居住する要介護認定を受けていない高齢者16万9201人を対象にした日本老年学的評価研究機構(JAGES)による調査でも、ボランティアグループ等の地域組織への参加割合が高い地域ほど、認知症リスクを有する後期高齢者の割合が少ないことがわかっています。

 確かにボランティア活動をすると、いろいろな人たちと交流したり会話したりすることができます。ただ、認知症のリスクを下げる理由はそれだけではなく、「継続のモチベーションが維持しやすい」ことも関係しているのではないかと私は思います。

 ボランティア活動は継続しやすいと言うと意外に思われるかもしれませんが、誰かの役に立ちたい、誰かを助けたいという利他の気持ちというのは実は「生き方の本質」です。だから、本来的にやる気が高まりやすいのです。

 私は人助けこそが人生の財産になると思っています。もちろんそれはお金などには換えることができない無形財産ですが、この無形財産をどれだけ築くことができるかが、人生の成功を左右するのです。

 1人ひとりがそのような姿勢で生きていれば心がきれいになり、争いも起きず、社会が混乱することもないので、結果として誰もが幸せになれます。


「大変なこと」や「面倒なこと」は

必ずしも「嫌なこと」ではない

 ボランティア活動にしても、誰かの役に立ちたい、誰かを助けたいという気持ちで励んでいれば、豊富な交流や会話の機会も得られますし、いつしかそれが自分の楽しみになれば、長期間にわたって継続することもできます。それが自分自身の認知症の予防にもつながるのだとすれば、これこそがまさに「情けは人のためならず」だといえるのではないでしょうか。

 生きていれば、誰にだって「大変だな」「面倒だな」と思うことに出会います。もしかするとそういうことのほうが多いのかもしれません。

 けれども、「大変なこと」「面倒なこと」を「嫌だなあ」という気持ちにつなげてしまうと、それは大きなストレスになります。

 みなさんもよくご存じのようにストレスは健康を脅かしますし、もちろん認知症予防という意味でも決して好ましいことではありません。

 私が日々多忙を極めていることを知っている人から、「どうやってストレスを解消しているのですか?」と聞かれることがあるのですが、私にストレスはありません。

 もちろん「これは大変そうだな」と感じることはあります。でも、「これを私が頑張れば誰かの役に立てる、誰かが喜んでくれる」というふうに発想を切り替えると、「嫌だなあ」という気持ちにはならないのです。だから、私はストレスとは無縁なのです。

 この話をすると「私はそんな広い心は持てません」とおっしゃる方もいるのですが、そんなことはありません。さっきもお話ししたように、利他の気持ちこそが「生き方の本質」です。だから、これは自然のことなのです。

 もし、日々ストレスに苦しめられているという人は、このような発想の転換を意識してみてください。これを繰り返すことで思考の癖ができると、ストレスから解放されると思います。


毎日の笑顔やダジャレにも

認知症を遠ざける効果あり!?

 私はもう1つ、「日々笑顔で過ごすこと」も心がけています。

 なぜかというと、自分が笑顔でいれば周りも自然と笑顔になるからです。しかめっつらの人たちに囲まれているより、笑顔でいる人たちと一緒に過ごすほうが絶対に楽しいじゃないですか。だからできるだけ、物事や人の良い面を見るようにして、率先して自分から笑顔で過ごすようにしているのです。

 私はダジャレも大好きで、年がら年中ダジャレを言っています。ダジャレをいうのが好きというより、それでみんなが笑ってくれるのが嬉しいのです。

 そして実は、笑いも脳の活性化につながるといわれています。

 福島県立医科大学医学部疫学講座教授の大平哲也氏らが、2007~2008年に健康診断を受診した4780人を対象として、笑いが認知症を予防する可能性について調査しました。そのうち、認知機能の低下が見られなかった738人を対象に、笑いの頻度と認知機能低下との関連を調査した結果、笑う機会が「ほとんどない」人は、「ほぼ毎日」笑う人に比べて認知機能低下の症状が出現する危険度が3.61倍になるというデータが出ました(図11参照)。

 これを見ると、私のダジャレも周りの人の認知症予防に一役買っているかもしれませんね。

図表2:笑いの頻度と1年後の認知機能低下症状出現との関連(横断研究)


図表2:笑いの頻度と1年後の認知機能低下症状出現との関連(横断研究)
同書より転載

『82歳の認知症研究の第一人者が毎日していること』(杉本八郎、扶桑社)

82歳の認知症研究の第一人者が毎日していること』(杉本八郎、扶桑社)


リンク先はDIAMOND onlineというサイトの記事になります。


 

Back to blog

Leave a comment