意見も境遇も異なる、20代ろう者3人のリアルな胸の内。多様なろう文化を伝える物語を目指して

意見も境遇も異なる、20代ろう者3人のリアルな胸の内。多様なろう文化を伝える物語を目指して

水上賢治
映画ライター

映画「私たちの話し方」のワンシーン

「私たちの話し方」より


 近年のろう者の世界を舞台にした映画の代表作として挙げられる、2021年の「Coda コーダ あいのうた」と2024年の「ぼくが生きてる、ふたつの世界」。

 日本で大きな反響を得た両作品は、これまであまり語られることのなかったCODA(※Children of Deaf Adultsの略称。聴えない、もしくは聴こえにくい親の元で育った聴者の子ども)に焦点を当て、CODAという言葉とその存在を広く世の中に伝えることになった。いわばろう者の間では認識されていたが、一般社会ではそこまで認識されていなかったことに目を向け、世の中に気づきを与える形となった。

 映画「私たちの話し方」もまた同じように、わたしたちに新たな気づきを与えてくれる。

 本作がメインで描くのは、ろう者の間にグラデーションがあることだ。

 いまの社会は、ろう者の存在を、どこか画一的なイメージに当てはめていないだろうか?

 ろう者にはたとえば初めから聴こえない人もいれば、途中から聴力を失った人もいる。少し想像すれば、ろう者といってもさまざまでひとくくりになどできないことはわかる。

 でも、そこまでなかなか考えが及ばない。どこかでひとつにまとめてみてしまうところがある。

 その中で、本作には、3歳で聴力を失い、人工内耳を装用し「聴こえる人」として普通に社会生活を送ろうとするソフィー、生まれながらのろう者で自身が手話話者であることに誇りをもつジーソン、手話と口話の両方を自在に使いこなす、人工内耳装用者のアランという20代の若者が登場。

 生活環境も違えば聴力も違う、ろう者としての自身の境遇に関しても異なる意見をもつ三人は時に励まし合い、時に苦悩を分かち合い、そして時に激しくぶつかり合ってしまう。

 そんな彼らの青春群像劇を通して、本作はろう者といっても一色ではない、「聞こえない」ことに対して、さまざまな意見をもった人物がいることに改めて気づかせてくれる。

 手がけたのは映画監督のほか、俳優としても活躍、スタジオ・ジブリ作品「風立ちぬ」で主人公・堀越二郎の広東語版声優を務めたアダム・ウォン。

 ろう者を主人公にした映画を作ろうと考えたきっかけはなんだったのか?

 どのようなリサーチのもと、脚本を作り上げたのか?

 作品を通して、描こうとしたことは?

 来日したアダム・ウォン監督に訊く。全五回/第二回


アダム・ウォン監督  筆者撮影

アダム・ウォン監督  筆者撮影


ろう者にもいろいろな人がいることを伝え、みんなで見ることができる物語を

 前回(第一回はこちら)は、本作を作るきっかけとなった出会いについて語ってくれたアダム・ウォン監督。

 脚本家であるシーキング氏の短編映画の脚本を長編にしようと提案して同意を得たとのことだが、最終的に今回の脚本はそこからスタートさせたリサーチで得たことをもとに作り上げていったという。

「シーキングさんのおかげでろうの世界を知ることができて、そこから自身でリサーチを開始しました。

 その過程では、シーキングさんの話を裏付ける、わたしが想像していたこととは異なる『聞こえないこと』をネガティブに考えていない、ろう文化を誇りに思っているろう者に多く出会いました。

 さらに取材を続ける中で、ろう者のアイデンティティやろう文化について見識を深めていきました。

 リサーチを重ねる中で、たとえば作品でも描いていることですが、ろう学校では過去に手話が禁止されていたことなど、その歴史も学んでいきました。

 また、わずかな聴力がある場合でも、手話のみを使うろう者もいれば、手話と口話(音声言語)でというろう者もいる。

 耳や体の状況によって、口話ができる人もいれば、手話が基本になる人、人工内耳で聞くことが可能になる人など、いろいろと分かれていくことも知りました。

 ろう文化自体も多様であることを実感しました。

 そのようなリサーチを重ねて、いろいろと描くべき題材が数多く出てきました。

 ろう者にもいろいろな人がいることを伝えて、みんなで見ることができるストーリーを作る方向性で考えていきました。

 その結果、シーキングさんの短編映画の脚本を起点に、新たなストーリーを書き上げることになりました」

 

記事のポイント!

ろう者にも、育った環境や聞こえ方、手話・口話・人工内耳への考え方など、さまざまな違いがあります。本記事は映画『私たちの話し方』を通じて、その多様性を丁寧に伝えているのが魅力です。聞こえにくさを一つのイメージで捉えず、理解を深めるきっかけになる内容です。

 

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気になる症状がある場合は

聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。 


原文掲載元はこちら

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6542287445214fa7e484224976efd96e7c47885a 

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