耳で聞けない声を0.3秒で“見える化”──イェール大発スマートグラス「TranscribeGlass」一般販売開始

耳で聞けない声を0.3秒で“見える化”──イェール大発スマートグラス「TranscribeGlass」一般販売開始

2025/7/13 [SUN]

スマートグラス「TranscribeGlass」をかける笑顔の女性(画像の出典:TranscribeGlass)

画像の出典:TranscribeGlass


2025年7月、イェール大学の学生チームが開発したスマートグラス「TranscribeGlass」の一般販売が開始された。聴覚障がい者や難聴者を主な対象とし、周囲の発話をリアルタイムで字幕としてレンズ上に表示することができる。平均0.3秒という低遅延表示を実現し、日本語を含む10以上の言語への翻訳にも対応しているという。

 
会話を文字で「見る」──TranscribeGlassの概要

TranscribeGlassは、専用アプリをインストールしたスマートフォンのマイクで周囲の音声を取得し、それをクラウド経由で音声認識・処理した上で、メガネ型デバイスの右レンズに字幕として表示する構造となっている。表示はウェーブガイド方式を採用し、640×480ピクセルの解像度で文字を右視野30度以内に映し出す設計だという。

表示までの遅延は平均0.3秒に抑えられ、音声認識精度は95%以上を謳っている。最大8時間稼働可能なバッテリーを内蔵し、重量は36〜38グラムに収められている。スマートグラス本体にはマイクやカメラは搭載されておらず、軽量性とプライバシーへの配慮を両立している点も特徴とされる。

TranscribeGlass(画像の出典:TranscribeGlass)

画像の出典:TranscribeGlass


販売価格と利用形態

製品は公式サイトで注文可能で、価格は本体が377ドル(約5万9,000円)、加えてクラウド音声認識機能を使用するための月額サブスクリプションが20ドル(約3,000円)となっている。2025年8月から出荷を予定しており、日本を含む国際配送にも対応するとのこと。

なお、アプリは現在iOS版が提供されており、Android版も年内にリリースされる見込み。また、オフラインモードも搭載されているが、この場合は音声認識精度がやや低下するとされる。


想定利用シーンと対象ユーザー

TranscribeGlassは、聴覚障がい者や加齢性難聴者の会話支援を主な用途とし、特に教室、会議、劇場、飲食店など騒音下での対話の可視化に有効とされる。また、語学学習者や国際会議の参加者など、リアルタイム翻訳による情報取得が必要なユーザーにも活用が期待されている。


TranscribeGlassをプレゼントされ「あなたの言っていることが分かるわ!」と感激するユーザー

TranscribeGlassをプレゼントされ「あなたの言っていることが分かるわ!」と感激するユーザー(画像の出典:TranscribeGlassのX(旧Twitter)アカウントより)

画像の出典:TranscribeGlassのX(旧Twitter)アカウントより


開発背景と開発チーム

この製品は、イェール大学の学生であるマダヴ・ラヴァカレ氏が中心となって開発された。

マダブ・ラヴァカレ氏(画像の出典:マダブ・ラヴァカレ氏提供)

画像の出典:マダブ・ラヴァカレ氏提供


きっかけは、聴覚障がいを持つ友人が講義中の内容を十分に理解できない状況を目の当たりにしたことだったという。2018年から7年をかけて7代にわたるプロトタイプを開発し、2024年にはCTOとしてニルバイ・ナラン氏が参画。Y Combinatorなどからの資金調達を経て、今回の一般販売に至った。

これまでベータ版は500人以上に試用され、フィードバックをもとに改良が重ねられてきたという。


競合との差別化と今後の展開

他のスマートグラス製品と異なり、TranscribeGlassは通話・音楽再生・撮影などの多機能化を避け、字幕精度と軽量性に特化している点が特徴だ。価格設定もMeta×Ray-BanやXRAI Glassなどに比べて抑えられており、バッテリー持続時間の長さも差別化ポイントとなっている。

将来的には、リアルタイムでの感情解析を字幕に反映する機能や、ASL(アメリカ手話)向けに語順を変換する表示機能の搭載が計画されているという。

TranscribeGlassは、視覚的な情報支援により、耳で聞けない会話を「読む」体験へと変えることで、新たなコミュニケーションの可能性を提供しようとしている。


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Ledge.ai 編集部
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