Will McGough | Contributor

頻繁に飛行機を利用する人なら誰でも、旅行が体に負担をかけることは知っている。その影響はさまざまな形で表れる。
長時間座っていると血行が悪くなり、深部静脈血栓症などの長期的な影響が出ることがある。機内は乾燥し、気圧が低いため脱水症状を起こしやすく、空港の食事は胃に負担をかけることが多い。
さらに睡眠不足や背中の凝り、快適とは言えない座席による筋肉のひきつりなどが加われば、エコノミークラスを利用して出発時より快活な気分でフライトを終えることはできないだろう。
飛行機での移動が身体に及ぼすこうした影響はよく知られているが、頻繁かつ長時間の移動に潜むもう一つの脅威はあまり話題にならない。ヘッドホンの音量が大きすぎたり、使用時間が長すぎたりすることで耳にダメージを受けるというリスクだ。
安全なヘッドホンはない
現代の飛行機移動では、音楽や映画、ポッドキャストで周囲の世界を遮断するのが当たり前になっている。旅行者は何時間も、あるいは1日のほとんどを音にどっぷり浸かって過ごすことになり、騒音への曝露の推奨される上限をはるかに超えてしまう。
一般的に、私たちが使っているヘッドホンの最大音量は105~110デシベルだ。米疾病対策センター(CDC)によると、70デシベル以上の音に長時間または過度にさらされると難聴の原因になる。
つまり、機器の最大音量の80%程度のボリュームで聴いている人は、難聴のリスクを抱えることになる。専門家によると、ノイズキャンセリング機能付きかどうかは関係ない。
「安全なヘッドホンというものは存在しない」と、騒音が健康に与える影響の軽減を目指す非営利団体The Quiet Coalition(クワイエット・コーリション)の理事長であるダニエル・フィンク博士は断言。米紙ニューヨーク・タイムズに対し「特に、多くの人が周囲の音を打ち消すために音量を上げなければならない場合はなおさらだ」と語っている。
飛行機の機内はそうした典型的な状況だ。機体の騒音があるため、音量を上げなければならないことが多い。
旅行に伴う難聴のリスクを減らすには
難聴のリスクを減らすために、旅行中は以下のアドバイスを参考にしてほしい。
「80%で90分」のルール
旅行中、退屈をまぎらわすために一日中ヘッドホンを使用したくなるのは理解できる。だが、大音量で聴く時間は制限すべきだ。
米コロラド大学病院の聴覚学者、コーリー・ポートナフはニューヨーク・タイムズに、「80 for 90 」というシンプルなルールが役立つと述べている。「最大音量の80%の音量であれば、1日90分間までなら安全」だという。
飛行機の離陸中はロック音楽をかけてもいい。だが、その後すぐに、耳に負担のかからない低い音量にすることが大事だ。
一日中聴くときは60%の音量で
小さな音量で聴くことでリスニング時間を長くでき、その逆もしかりだとポートナフは指摘。旅行中など一日中ヘッドホンを使用する場合は、60%の音量で聴くことを勧めている。
ノイズキャンセリング付きのヘッドホンを使う
覚えておいてほしいのは、「安全なヘッドホン」など存在しないということだ。つまり、耳栓タイプなのか、それとも耳を覆うタイプかといったヘッドホンのデザインは重要ではなく、鼓膜がとらえた音の大きさが重要なのだ。
だが、周囲がうるさい環境で明瞭に聞き取るためにどれだけ音量を上げる必要があるかという点では、ヘッドホンによって違いが出てくる。
そうした意味で、ノイズキャンセリング付きヘッドホンは環境騒音を遮断するのに役立ち、より小さな音量で音楽を楽しむことができる。
ノイズキャンセリング機能のないヘッドホンでは、周囲の雑音を遮断しようとすると音量を上げる必要があり、大音量による難聴リスクが高まる可能性がある。
(forbes.com 原文)
翻訳=溝口慈子
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(ForbesJAPAN記事)
