聞こえの仕組み「聞こえないこと」~お仕事をされている方向け~

「聞こえない」 というと全くの無音をイメージされる方が多いかもしれません。

「音のキホン」「耳のキホン」ページでご紹介した通り、空気の振動を耳や皮膚(骨)で感じ取って脳に伝わって音と認識するのが「聞こえる」という状態です。

そのため、「聞こえない」という状態は人によって段階(グラデーション)が異なります。

また、伝わっていく器官のうちのどこに聞こえにくくなる理由があるか、によって、何をサポートとして選ぶかの選択肢も変わります。

ご自身がもし、聞こえない と感じていらっしゃれば、その状態・程度は耳鼻科で聴力検査を受けて、先生に聞いてみると教えていただけると思います。

周りの人にもし、聞こえない という方がいらっしゃれば、その状態・程度を教えてもらうことで、お互いに過ごしやすくなったりするかもしれません。

ここでは、どんな段階=グラデーションがあって、聞こえにくくなる理由と併せて、どんなサポート手段があるかについてご紹介します。

「聞こえないこと」を読む

職場での聞こえの配慮を求める

職場で聞き取りにくいことがある方は、周りの人たちに聞こえの配慮を求めることも、大きな解決策の一つです。

例えば、

  • 聞き取りにくいことを伝えて、筆談も併用してもらう
  • 顔を向けて口が見えるように話してもらう
  • 後ろから声を掛けるときは肩をたたいてもらう
  • 会議や打ち合わせの時には事前に資料をもらう
  • 会議や打ち合わせでは議事録を作成し、終了後に議事録をもらう
  • 口の動きが見える透明なマスクを使用してもらう
  • 補聴援助システムや音声文字化アプリなどの支援機器を準備してもらう

上記は一例ですが、このような配慮をしてもらうことで、大事な話を聞き漏らしたり、聞き間違えしたりすることを減らすことができます。

配慮を求めるのはちょっと...という方もいるかもしれませんが、国内外でこういった配慮を後押しする動きが二つあります。

ひとつ目は障害者差別解消による合理的配慮です。

平成25年6月に制定された障害者差別解消法では、国や自治体、会社やお店などの事業者が、障害のある人に対して正当な理由なく、障害を理由として差別することを禁止し、また障害のある人から社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること「合理的配慮」の提供が国や自治体は法的義務、民間企業・事業者は努力義務とされており、第204回通常国会において改正障害者差別解消法が成立し、公布から3年以内に民間企業・事業者も法的義務化されることになりました。

ふたつ目は、ダイバーシティ&インクルージョンです。

ダイバーシティは多様性を意味します。性別、年齢、国籍、宗教、障がいの有無にかかわらず、それぞれの個を尊重し、認め合いましょうという考えで、職場では多様な人材を組織に受け入れることを目指したり、人が本来持つそれぞれの違いを受け入れることを目指したりします。

インクルージョンは受容を意味します。組織内の多様な人材に活躍してもらうため、それぞれの違いをより活かすことを目指したり、障壁を取り除いたりする取組みを行ったりします。

ESGやSDGsなど企業の社会的責任が問われる中、人権の尊重やダイバーシティ&インクルージョンの促進は、企業が持続的に成長し続けるために不可欠な要素となってきていると言われており、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する企業が増えてきています。