佐久間一輝
毎日新聞
2026/9/6 12:00(最終更新 9/6 12:00)

7人制ラグビー全国大会のエキシビションマッチ後、対戦相手のチームと共に記念撮影する日本聴覚障がい者ラグビーフットボール連盟の日野敦博理事長(中央奥)=東京・秩父宮ラグビー場で2026年7月12日、和田大典撮影
秩父宮ラグビー場(東京都港区)はその日、長引く梅雨空で雲に覆われ、日差しはほとんどなかった。それでも、最高気温は真夏日の30度に迫り、スタンドは熱気に包まれていた。
7月12日に開かれた男子7人制ラグビーの全国大会。第4、第5試合のインターバルに、異色のエキシビションマッチが行われた。聴覚障害のある選手がプレーする「デフラグビー」の日本代表候補チームが、健常者のクラブチームと対戦したのだ。
静かな熱い戦い 世界大会へ
デフとは英語で耳が聞こえない、聞こえにくいという意味。デフ日本代表候補チームが聖地・秩父宮に立つのは日本ラグビー協会がデフ日本代表チームを結成した2002年以来、24年ぶりのことだった。
スクラムで両チームの選手の体がぶつかり合うと、ドスンと鈍い音がした。前方からは、全速力の相手がタックルでボールを奪いに来る。選手同士で瞬時に意思疎通しなければならない場面が幾度となく訪れる。健常者なら仲間と声を掛け合うところだが、デフの選手たちが声を出し合うことはなかった。
ただ、お互いが一瞬目を合わせると、うなずいた。次のプレーでボールを持った選手が抜け出し、フォローする選手が後を追う。巧みなステップとパスで、迫り来る相手選手のタックルを次々とかわし、トライを決めた。あらかじめ、どう動くのかを決めておくサインプレーの通りだった。
トライを知らせるホイッスルは鳴らされなかった。主審は赤い手袋をした左手を真上に突き上げトライを宣言。コート脇の副審が旗を大きく振った。
「静かなる熱戦」で、代表候補の選手たちは声のないハンディキャップを乗り越えるため、手話やアイコンタクト、ハンドサインなどを駆使して試合を展開。何度も軽快なパスワークを披露しスタンドを沸かせた。結果は21対28で惜敗したものの、多くのラグビーファンに「デフ」の存在を示すことができた。
今年10月31日~11月3日、デフラグビーの世界大会が初めて日本で開催される。第3回となるこの大会にはこの日の出場メンバーから選ばれた日本代表チームが出場する。
記事のポイント!
声による合図が使いにくい中、手話やアイコンタクト、ハンドサインを駆使して連係するデフラグビーの選手たち。24年ぶりに秩父宮の舞台に立った日本代表候補の「静かなる熱戦」と、日本で初開催される世界大会へ向けた挑戦が描かれています。
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