2025年11月21日
デフリンピックのサッカーでは、ファウルがあったことを審判は旗で知らせる(※写真はいずれも東京大会のものではありません)
聞こえない・聞こえにくいアスリートの国際総合スポーツ大会「デフリンピック」が今月15~26日の日程で、東京で開催されている。オリンピックと同じく4年に1度開かれるが、日本での開催は初めて。今大会は、1924年にパリで第1回大会が開催されてから100周年という記念大会となっている。どんな大会なのか。選手たちはどんな思いをもっているのか。
デフリンピックは、さまざまな障害区分のアスリートがいくつかのクラスに分かれて参加するパラリンピックとは異なるスポーツ大会だ。
東京大会では、自転車競技、サッカー、陸上競技など21競技で熱戦が繰り広げられている。
夏季大会と冬季大会の両方がある。
どんな特徴があるのか、誰が出られるのか
デフリンピックには陸上競技、ゴルフ、水泳、射撃、テニスなどさまざまな競技がある
デフリンピックは、聞こえない、聞こえにくい人たちのために、そうした人たちによって運営される大会だ。
競技では、聴覚的な合図の代わりに、視覚的な合図が使われる。
例えば陸上競技では、スタートはピストル音ではなく、点滅するライトで知らせる。サッカーでは、審判はホイッスルの代わりに、旗を使って合図する。
選手としての出場資格を得るには、よく聞こえるほうの耳で聞こえる一番小さな音が55デシベルを超えていなくてはならない。
公平さの確保のため、競技中に補聴器、人工内耳、その他の類似機器を使うことは認められていない。
パラリンピックとはどう違うのか
デフリンピックは、パラリンピックより24年早く始まった。総合スポーツ大会としては、世界で2番目に歴史がある。
当初は「国際サイレント大会」と呼ばれていた。
デフリンピックは、聞こえない、聞こえにくい人のみによって組織・運営されている点で、国際オリンピック委員会(IOC)公認の他の大会と異なる。
パラリンピックでは、アスリートらは障害による活動制限の程度に応じてグループ分けがされる。さらに、競技への影響を最小限にするためのクラス分けがされる。クラス分けは、競技ごとに異なる。
ろう者はパラリンピックに出られるのか
聞こえない、聞こえにくいだけのアスリートを対象としたカテゴリーは、パラリンピックにはない。
そうしたアスリートがパラリンピックに出場するには、パラリンピックの基準を満たす他の障害も別に認められなくてはならない。
国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)は、「多くのろう者は、自分たちに障害があるとは思っていない。身体的・知的機能においては特にそうだ」と説明している。
また、「私たちは自らを、文化的・言語的マイノリティー(少数派)の一員だと考えている」としている。
資金はどこから得ているのか
デフリンピックに初出場するイギリスのソフィー・デイコム選手は、資金の状況について「不公平だ」と話す
イギリスの場合、文化・メディア・スポーツ省の傘下でスポーツ政策を統括する公共組織「スポーツ・イングランド」が、同国のろう者スポーツ協会に対し、2027年にかけて127万ポンド(約2億6000万円)を援助している。
スポーツの分野で資金を投資する「UKスポーツ」という政府機関もあるが、オリンピックとパラリンピックのアスリートだけを管轄している。そのため、デフリンピックに出場するアスリートには、政府からの直接的な資金援助はない。
英ろう者スポーツ協会のクリス・ラトクリフ最高経営責任者(CEO)は、アスリートらが資金援助を受けられないのは「恥ずべきこと」だと議員らに訴えている。
イギリスの代表チームは今回、選手100 人とサポートスタッフを東京に派遣するのに50 万ポンド(約1億円)の費用をかけている。これを賄うため、各選手に4000 ポンド(約80万円)の資金調達を求めてきた。
東京大会で女子サッカーに出場する10代のソフィー・デイコム選手は、こうした資金状況を「不公平だ」と話す。
「国を代表するのだから、他の人たちと同じ機会を得られるべきだ」
チームメートのルシンダ・ローソン選手も、「正直、資金援助を他の人に頼むのは少し気まずい。私は3回目の出場ということもあって少し難しい」とBBCスポーツに話した。
「政府が支援や資金援助をしてくれないのにはがっかりしている。お金のことで不安な思いはしたくはない」

ルシンダ・ローソン選手はイギリス代表としてのデフリンピック出場が3回目となる
(英語記事 What is the Deaflympics?)
リンク先はBBC NEWS JAPANというサイトの記事になります。
