おそうしき 絵と手話で…別れ 聴覚障害児も一緒に

おそうしき 絵と手話で…別れ 聴覚障害児も一緒に

2026年1月13日

 聴覚障害を持つ子どもに「人の死」や「別れ」の意味とともに、葬儀についてわかりやすく伝える絵本が反響を呼んでいる。手がけたのは、手話を通じて交流を重ねてきた通訳士の女性と浅草の住職だ。2人は「絵本を通じて、障害のある子も故人にお別れを言えるようになってほしい」と願う。(柏木万里)


「置いてきぼり」


絵本を手に「聴覚障害のある子が安心して葬儀に臨める助けになれば」と話す青龍寺さん(東京都台東区で)=浦上太介撮影

絵本を手に「聴覚障害のある子が安心して葬儀に臨める助けになれば」と話す青龍寺さん(東京都台東区で)=浦上太介撮影

 東京都八王子市の手話通訳士、ほとりさん(36)は2022年春、父を亡くした女性から「難聴の我が子にも、おじいちゃんの死を理解させたい」と協力を頼まれた。葬儀の場で絵を描き、手話も交えて説明すると、3歳の女の子はひつぎに花を手向け、「バイバイ」と別れを告げてくれた。

手話通訳士のほとりさん

手話通訳士のほとりさん

 聴覚障害のある子は読経や焼香、出棺などの状況を理解しづらく、「置いてきぼり」になりがちだと気づいた。絵本の制作を思いつき、浅草で江戸以来の歴史を持つ仙蔵寺(台東区)の住職、 青龍寺空芳しょうりゅうじくうほう さん(35)を頼った。青龍寺さん自身も、耳が聞こえにくい長男の海成君(8)を育て、手話教室にも参加していた。青龍寺さんは「自分にしかできない」と快諾した。

 2人は周囲の聴覚障害者らおよそ100人に葬儀に関する疑問を聞き取った。父を亡くした障害者からは「僧侶が父の人柄に触れた話をしていたと葬儀の後に知り、聞けなかったことを後悔した」といった声が届き、寺院側からも「聴覚障害は外見で気づきにくいこともあり、特段の配慮をしたことはなかった」という意見が寄せられた。

絵本では、親しい人を失った家族の喪失感や葬儀の決まりごとを手話やイラストで伝える

絵本では、親しい人を失った家族の喪失感や葬儀の決まりごとを手話やイラストで伝える

 手応えを感じた青龍寺さんたちは、宗派を超えた僧侶でつくる「仏教情報センター」(文京区)の監修も受けて盛り込む内容を精査。1年以上をかけて「おとなといっしょによむ おそうしきのえほん」を完成させ、23年11月に自費出版した。


易しい言葉


 絵本は柔和な笑顔の祖父が最期を迎える場面から始まる。読み進める中で、「寝ること(生)と亡くなること」の違いや、残された家族の喪失感、葬儀の決まりごとをイラストと手話、易しい言葉で学べる趣向になっている。葬儀を終えた後も、仏壇や墓前で手を合わせたり、盆や彼岸に故人に思いをはせたりする時間の大切さも教えている。

 大人向けの解説にも紙幅を割き、葬儀に関係する手話と絵を載せて「指さし会話」ができるページを設けた。葬儀中でも子どもが広げやすいように、小ぶりなA5判(42ページ)サイズにしたことも特徴だ。2人は「目的は葬儀の知識を伝えることだけでなく、ろうや難聴の子と大人が一緒に読むことでコミュニケーションを深め、亡くなった人に思いを寄せてもらうこと」と話す。

 できあがった絵本を全国の特別支援学校に届け、SNSでも発信すると、「私が子どもの頃にもあればよかった」「全国のお寺で使ってほしい」といった多くの反響があった。これまでに3000冊が全国の家庭や寺、葬儀場に渡り、「葬儀に間に合うように速達で送って」との依頼もあったという。青龍寺さんは「多くの人から必要とされたことがうれしい」と喜んでいる。

 1冊800円(送料別)。購入は 仙蔵寺のホームページ か メール で。


「共生」へ サポート拡大


 東京都などでは昨年、聴覚障害者らの国際的なスポーツ大会「デフリンピック」が国内で初めて開かれた。大会を機に共生社会の実現を目指す動きが広がっている。

 都は大会に先立ち、会話を瞬時に文章へ変換して表示できる「透明ディスプレー」を上野動物園や観光施設など110か所に配備。多言語翻訳に対応し、日本航空も東京・羽田や大阪・伊丹など国内7空港のカウンターで導入に向けた実証実験をした。

 都はスマートフォン講座も開いている。健聴者とのコミュニケーション支援アプリや文字おこしアプリを紹介し、計約300人が参加した。都は「障害の有無や年齢、国籍にかかわらず、『誰ひとり取り残さない』取り組みの重要性が高まっている」とする。


リンク先はヨミドクターというサイトの記事になります。


 

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