どの子も地域の学校へ 国立市が「就学通知」で新方針示す フルインクルーシブ教育への第一歩に

どの子も地域の学校へ 国立市が「就学通知」で新方針示す フルインクルーシブ教育への第一歩に

フルインクルーシブ教育の実現を目指している国立市が、小・中学校に入学する新1年生の保護者に対し、障害の有無などにかかわらず全員に地域の学校への「就学通知」を送付する方向で検討していることがわかった。早ければ2024年度から始めたい考えだ。また、あわせて就学通知の送付時期を、従来の秋から6月下旬へと大幅に早める方針だという。

就学通知に関する新方針は、27日開催の「国立市のフルインクルーシブ教育を考える会」で明らかにされた。同会は、市民らと一緒にインクルーシブ教育に関する対話を進める会で、この日は市教委が「『通常の学級』を一人一人が『その子らしくいられる場』にしていく」ことを基本方針に掲げた「国立市のフルインクルーシブ教育の『方向性』(案)」を公開。この案の中に、就学通知に関する新方針も盛り込まれた。

国立市教委ではこれまで、障害のない子どものいる家庭には10~11月に就学通知を送付する一方、子どもに障害があって特別支援学校への入学を検討している家庭については、送付を遅らせる措置をとっていた。また、障害のある子どもの保護者が通常の学級を希望した場合は、支援などに関する話し合いが入学直前の3月になってようやく行われる、というケースがほとんどだったという。

現在検討している方向性で就学通知の送付が実現すれば、「障害の有無にかかわらず、誰もが地域の学校で学ぶ権利がある」ことを早い段階で保護者に示すことができる。これにより、障がいのある子どもが通常学級に通う場合にどのような支援や配慮が必要になるかについても、早い段階から保護者と学校が調整を始められるようになることが期待できる。なお、支援体制などについて検討した結果、特別支援学校や特別支援学級の方がよいと判断した場合は、そちらを選択できることもあわせて保護者には案内するという。

就学通知をめぐる数々の問題

障害のある子どもの就学通知をめぐっては、障害のある子の保護者が教育委員会の判定と異なる入学先を希望している場合に就学通知書が発送されないなどの問題が各地で起こっている。また、地域の学校の通常学級に通うことを認めるかわりに、支援や配慮を行わないことを保護者に了承させようとするケースも散見される。そもそも就学相談の場で、保護者が結果的に「障害がある子どもは地域の学校や通常学級に行く選択肢がない」と思い込まされているケースもある。

就学通知の送付を変えるだけで、国立市が目指すフルインクルーシブ教育が実現するわけではない。なぜなら、インクルーシブ教育は多様な子どもたちが地域の学校に通い共に学ぶことを保障するために学校や教育システムを改革するプロセスそのものであり、ただ単に障害のある子どもとない子どもが同じ教室にいることを指すものではないからだ。

 それでも、これは「たかが就学通知」という問題では決してない。「誰もが地域の学校で学ぶ権利があること」を明確に示すことはこのプロセスの第一歩になりうるし、障害のあるわが子の就学をめぐって苦しむ保護者を救うことにもつながるはずだ。国立市での実現はもちろんのこと、このような就学通知のあり方が「当たり前」になることを期待したい。

(取材・文:ジャーナリスト・飯田和樹)

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