2026年8月25日 17:00
映画ナタリー編集部
ろう者監督と聴者監督が協働し、ろう者や聴者、難聴者の俳優たちが対等に出演する短編映画「水に燃えたつ」の製作が決定。日本手話を第一言語とする映画監督・今井ミカと、日本語を第一言語とする映画監督・深田晃司が共同監督を務める。

短編映画「水に燃えたつ」で共同監督を務める今井ミカ(左)、深田晃司(右)
「水に燃えたつ」は、聴者の夫婦とろう者のカップルそれぞれの恋愛の矢印が絡み合い、日本手話と日本語の飛び交う修羅場へと発展していく物語。将来的には第2弾短編、劇場用長編映画も見据えるプロジェクトとなっている。全キャストの出演者オーディションも実施。募集対象は20代から50代の男女で、8月31日23時59分まで応募を受け付ける。詳細は特設サイトで確認を。映画は2026年秋に撮影される予定で、2027年の完成および映画祭などでの上映を目指す。
今井は「映画美学校などで縁のあった深田監督と作品をつくることになった。異なる言語、文化、経験を持つ二人が出会うことで、互いの『違い』が未知の表現を生み出すことを楽しみにしている」とコメント。深田は「今井さん、どうぞよろしくお願いします。この小さな一歩が、私たちにとっても観客にとっても、何か新しい表現に触れられる時間になればと願っています」と述べている。
今井ミカ(企画・脚本・監督)コメント
私は、日本語とは異なる言語である日本手話を第一言語として生きているろう者である。日本手話には文字がなく、「危機言語」とも言われている。だからこそ、手話で生きる人々の身体や視線、行動、時間の流れ、そこに生きる人の存在そのものを、映画というかたちで未来に残したいと思い、映画を作り続けている。
私自身、言語的少数者であると同時に、LGBTQ+というアイデンティティを持ち、マイノリティが交差する場所から世界を見てきた。その経験は、これまでの作品にも影響している。マジョリティから見た世界とは異なる、さまざまな視点から生まれる、言葉にできないものを映画にしていく。それが、私にとって映画を撮るということである。
今回は、映画美学校などで縁のあった深田監督と作品をつくることになった。異なる言語、文化、経験を持つ二人が出会うことで、互いの「違い」が未知の表現を生み出すことを楽しみにしている。単純に「聴者とろう者」という二つの立場を撮るのではなく、カメラの後ろにいる、異なる世界を生きてきた二人が、ともに映画をつくる。その過程そのものを作品に刻み込み、新しい映画の可能性を切り拓きたいと考えている。
今井ミカ プロフィール
群馬県出身。2018年製作の「虹色の朝が来るまで」で劇場公開映画監督デビューを果たす。「ジンジャーミルク」で映文連アワード2022のパーソナル・コミュニケーション部門優秀賞、うえだ城下町映画祭の第20回自主制作映画コンテスト大賞、第23回TAMA NEW WAVEコンペティションの特別賞、イギリスのFragments Festival 2023の最優秀賞を受賞。2022年、映画・映像制作およびろう者芸能プロダクション「SANDO+(サンドプラス)」を設立した。東京国立博物館をはじめとする文化施設の映像制作も手がける。最新監督作「黄色い子」は第38回東京国際映画祭アジアの未来部門に選出された。
深田晃司(企画・脚本・監督)コメント
表現とはなんだろう。多様性とはなんだろう。ずっと考え続けています。
2022年に私は「LOVE LIFE」という映画を作り、日本ろう者劇団で活躍されていた俳優砂田アトムさんに映画に出て頂きました。
制作現場での砂田さんの明るく誠実な人柄と演技への真摯な向き合い方に何度も感銘を受け、一緒に映画を作れたことを今でも誇りに思っています。
そして、もっとろう者と聴者が対等に関わり合いながら映画が作れないだろうか、そう考えるようになりました。
そんなときに、今井ミカさんの作品に触れ、今井ミカさんと共同で、ろう者と聴者が入り乱れるような映画を作ってみたい、と夢想し始めました。
今井さん、どうぞよろしくお願いします。
この小さな一歩が、私たちにとっても観客にとっても、何か新しい表現に触れられる時間になればと願っています。
深田晃司 プロフィール
東京都出身。大学在学時より映画美学校で映画制作を学ぶ。「ほとりの朔子」「さようなら」「淵に立つ」「よこがお」「LOVE LIFE」「恋愛裁判」などを監督し、カンヌ国際映画祭やヴェネツィア国際映画祭で評価を獲得。最新作「ナギダイアリー」は第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された。「表現の現場調査団」メンバーであり、「action4cinema日本版CNC設立を求める会」理事。第35回東京国際映画祭で、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥとともに黒澤明賞を受賞した。
「水に燃えたつ」ストーリー
ろう者の大学生・アイコは、日本手話を通じて出会った手話通訳士・ソウジと恋に落ちる。
ソウジは「独身」と語っていたが、実は妻・エミを持つ既婚者だった。
一方、アイコの恋人とも友人とも言い切れないあいまいな関係にあるろう者の女性・ホタルは、その事実を知らないままアイコと日常をともにしている。
ある日、夫の浮気を疑ったエミがアイコの部屋を訪れたことをきっかけに、4人の関係は思いがけない形で交錯していく。日本語と日本手話、そして通訳を介した会話が飛び交う中、それぞれの「伝えたいこと」と「伝わらないこと」が幾重にもすれ違い、嘘と誤解、嫉妬と愛情が複雑に絡み合っていく。
やがてホタルは、自身の離婚協議の場で通訳を務めるソウジと再会する。
誰かの言葉を他者へ届ける仕事をしながら、自らはもっとも大切な人に誠実ではなかったソウジ。
その姿を前に、ホタルは胸に積もっていた思いをぶつける。
傷つきながらも、それぞれが自分自身の本当の気持ちと向き合った先に見えるものとは……。
記事のポイント!
ろう者監督と聴者監督が共同で制作し、ろう者・聴者・難聴者の俳優が対等に参加する点が大きな特徴です。日本手話と日本語、異なる言語や文化を持つ人々がともに映画をつくることで、これまでにない表現の可能性を目指します。
関連ページ
聞こえが気になる方は、以下のページも参考にしてください。
今の聞こえの状態を簡単に確認したい方へ
▶ 聞こえづらいと感じたときのセルフチェック
難聴の原因や種類を整理したい方へ
▶ 難聴とは?(原因・症状・種類)
まず何をすればよいか知りたい方へ
▶ 聞こえづらいと感じたときの対処法
補聴器の基本を知りたい方へ
▶ 補聴器の種類と選び方
気になる症状がある場合は
聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。
