アナウンサーとして声で情報を届けると同時に、耳の聞こえない人に向けて手話でも伝える。
鬼木笑さん(40)は、バイリンガルならぬ「手話リンガルアナウンサー」と自ら名付け、活動している。
幼いころから「自分の思いを話すのがすごい苦手だった」。
何をどの順番で言えばいいか事前に練習を重ねても、相手を目の前にすると緊張して話せなくなった。
そんな中学生のとき、電車のなかで2人の男の子が「手で話している」のを見かけた。
「これだったらもっと自由に話せるかも」。
強く記憶に残った。
民間企業の秘書職などを経てNHK新潟放送局のリポーターに就いていた2017年、本格的に手話を学び始めた。
週1回の講座に通うなかで耳の聞こえない人から「テレビに字幕がなくて困っている」と聞く。
出身地の東京では当たり前だった字幕放送が、地方では少ないことに初めて気づき、「勝手に『伝えられている』と思っていたのが恥ずかしくなった」。
すぐに字幕をつけるのは自分の力では難しいが、手話ができるアナウンサーがいれば少しは状況が改善するかもしれない。
学ぶ目的がはっきりした。
NHKを辞めてフリーになってからも講座に通い続けること5年。昨年3月、全国統一試験に合格し、新潟県登録の手話通訳者となった。
いまはアナウンサーと手話通訳者の仕事は別々のことが多いが、地元テレビ局やイベント主催者などへ積極的な手話の導入を求めている。
25年に日本で初めて開催される、ろう者による国際スポーツ大会「東京デフリンピック」での活動も目標の一つだ。
「耳の聞こえない人は見た目でわからないから誤解が生まれやすい。私が拡声機のように発信することで勉強を支えてくれた人たちに恩返ししたい」(初見翔)
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