家屋倒壊などで80人以上が犠牲になった石川県輪島市で、障害者や高齢者ら支援が必要な人が避難する「福祉避難所」の開設が進んでいない。市は事前に25施設と災害時協定を結んでいたが、発災当初実際に開設できたのは2日に2カ所だけだった。
輪島の福祉避難所、2日でいっぱい 「もっと受けたいがこれ以上は」
知的障害のある山上恵子さん(59)は1日、グループホームの2階でテレビを見ていた。「緊急地震速報」の知らせと同時に、激しい揺れに襲われた。テレビが倒れ、その場で頭を抱えてうずくまった。
「津波が来ます! 下に降りて下さい!」
そう叫ぶ職員の声が聞こえ、着の身着のままで職員に手を引かれながら階段を駆け下り、外に出た。約20人で高台へと歩いた。
「怖い、怖い」
聴覚障害の仲間が、つぶやいていた。職員が「大丈夫。行くよ」と手を握ってくれた。
夜には、グループホームを運営する「輪島カブーレ」の市役所内のカフェにたどりつき、職員が市と相談して「仮の福祉避難所」として使えることになった。
カフェ内にも、廊下にも、一般の人が大勢避難していた。職員の浦見益美さん(46)は、「最初は毛布がない中で雑魚寝をしました。近くには赤ちゃんがいるご家族もいて、みな一緒にとにかくそこにいた、という感じでした」と振り返る。
水や食料などの支援物資は遅れた。カフェにあったカップ麺などを分け合ってしのいだ。カブーレを運営する社会福祉法人「佛子園(ぶっしえん)」(同県白山市)から生活必需品と一緒に7日には段ボールが届き、障害の特性や性別で仕切ることで、プライベートな空間を作ることができた。本部から職員2人も応援で駆けつけた。
トイレ用のスリッパを作ったり、1時間に1度は換気をしたり、念入りな消毒をしたりして感染症対策にも取り組んでいる。
だが、余震におびえて眠れない日々は続く。山上さんは「(避難生活が)つらくなって夜中に叫び出す人もいます。いつまでこんな生活が続くのか」と話した。
「一般避難所には居づらい」と訴えていた高齢の聴覚障害の男性も新たに移ってきた。
輪島市内では、まだ孤立する地区がある。輪島カブーレでは、高齢者の配食サービスも行ってきており、孤立した地区にも詳しい。寺田誠代表(51)は、孤立地区にある高齢者施設や障害者施設を訪れニーズを聞き取り、災害派遣医療チーム(DMAT)を先導して物資を届けている。寺田さんは「1.5次や2次避難も進むが、とどまりたいという方々を支援する態勢を模索していきます」と力をこめて話した。(大滝哲彰、山内深紗子)
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