2026年8月20日 午前7時30分
【論説】耳の聞こえの改善を認知症予防につなげようと、福井県坂井市は聴力検査と言語聴覚士による講座を組み合わせた新たな事業を始めた。「難聴は認知症の危険因子」とする医学的見地に着目。高齢社会の中で「住み慣れた地域で、安心して暮らし続けられるまち」を目指す取り組みとして注目される。
近年の研究では、認知症の4割は予防できる12の要因で発症し、このうち最大の危険因子が難聴と指摘される。理由は、耳が遠くなると、(1)会話がおっくうになる(2)だんだんと外出が減って引きこもりがちになる(3)脳への刺激が減る(4)認知機能が低下する―といった負のスパイラルに陥りやすくなるからだ。
国内では約1500万人が、耳の聞こえに何らかの問題を抱えている。実に10人に1人以上の割合に上る。難聴は65歳から急増するといわれ、坂井市の高齢化率(65歳以上の割合)は2050年に40%を超える見込み。聞こえの悪さの改善は、認知症予防の一つの鍵になるといえよう。
聴力検査は、市の集団健診で60~78歳の偶数年齢者を対象に行う。「聞き間違いや聞き返しが増えた」「テレビの音を周りの人より大きくしたくなる」「電話の声が聞き取りにくい」といった設問に選択式で答えるアンケートも実施。並行して福井医療大の言語聴覚士による講座を開き、聞こえの改善の大切さを専門的な知見から説く。
検査と講座の両輪で市民の関心と自覚を高めていく先進的な取り組みだが、課題は健康への関心が低いことなどを理由に、健診や講座に足が向かない人たちへのアプローチだろう。坂井市の担当者は「地域包括支援センターや民生委員と連携し、広く参加を呼びかけていきたい」とする。
全国で高齢者のみの世帯が増え、「老老介護」の問題が深刻化している。そうした世帯では世話する側が認知症になると、生活は一気に破綻に向かう恐れがある。高齢者本人はもちろん、家族も日ごろから父母や祖父母の聞こえを気に留め、必要なら受診を勧めるなどリスク軽減に努めたい。
近年は補聴器もおしゃれになり、スマートフォンと連動するタイプもある。聞こえが悪いのは「年のせい」と放置せず、耳鼻科医などに相談し、聞こえ方に合った補聴器に頼るのも一つの手だろう。
記事のポイント!
難聴を放置すると、会話や外出の減少から社会的な孤立につながり、認知機能低下のリスクを高める可能性があります。坂井市では聴力検査と専門家による講座を組み合わせ、聞こえへの早期の気づきを促しています。本人だけでなく、家族が聞こえの変化に気づき、受診や補聴器の活用を考えること、周囲が相手の顔を見てゆっくり話すなどの配慮も重要だと紹介しています。
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聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。
