2024.07.31
坂上 裕子
青山学院大学教育人間科学部心理学科教授
プロフィール
【発達心理学からみた赤ちゃんの成長】子どものこころの発達はさまざまな事柄が関係しあい、枝葉のように広がって進んでいくものです。たくさんの枝葉を支える太い幹と根っこが育つには、長い時間が必要です。子どもも親も試行錯誤して、失敗と修復を繰り返しながら、育っていきます。保護者や保育者向けに、就学前までの子どもの発達や対応の具体例をわかりやすく解説した『子どものこころの発達がよくわかる本』から一部を抜粋してお届けします。
前編記事<子どもと話をするとき、正しい答えよりも大事にしたいもの>
言葉の発達は子どものペースにまかせて
言葉の発達には、脳の言語機能にかかわる部分をはじめ、視覚や聴覚など五感をつかさどる部分の発達、感覚や運動機能、口や舌、のどといった発声にかかわる器官の発育なども関係しています。
言葉を話せるようになるまでには、いくつものプロセスを踏む必要があるため、時間がかかります。また、発達の進み具合には大きな個人差があります。
言葉の発達がゆっくりだと、自分たちの愛情不足ではないかとか、育て方が悪いのではないか、障害があるのではないかと心配になってしまう人もいると思いますが、結論を急がないことです。
早い=よいこと、ではない
おしゃべりできるようになって、周りの人と上手にコミュニケーションをとれるのはもちろんうれしいことですが、言葉の発達は「早いからいい」というものでも「遅いからよくない」というものでもありません。
例えば、たくさんおしゃべりするものの周囲の人たちとのコミュニケーションが成り立っていない、というようなこともあります。
逆に、言葉がつたなくても、表情や身ぶり手ぶり、視線を合わせるなど別の方法でうまく相手とコミュニケーションをとれていることもあります。
もし、子どもの発達に関することで悩んでいることがあったり、コミュニケーションで不安な要素があったりするときは、小児科医や心理士、言語聴覚士など、子どもの発達の専門家がいるところに相談してみましょう。自治体の発達相談窓口も活用できます。
言葉の遅れが気になるときは……
言葉がゆっくりでもコミュニケーションが成立しているなら、話せる言葉の数を気にするよりも、やりとりそのものを親子で楽しむことを大切にしましょう。
保育園、幼稚園に通っているから言葉が早いとは限りません。子どもは周囲の環境から自然に言葉を学んでいます。
■話せる言葉の数よりも、やりとりを重視する
上手におしゃべりできなくても、表情や手ぶりなどを交えてコミュニケーションがとれているなら、あまり心配しすぎなくて大丈夫。まずはあそびや生活のなかでのやりとりを大切にしよう
■「早くできたほうがいい」という価値観をわきにおこう
言葉の発達には大きな個人差がある。早いからいい、遅いからダメなのではなく、その子どもなりのペースがあると考えよう
■不安なときはSNSではなく、専門家に相談する
インターネットやSNSでの情報には誤った情報も多い。困ったとき、不安なときは専門家に相談したり、自治体の発達相談の窓口などを活用しよう
次回は<「わたし」が分かるのは何歳なのか。発達心理学者が解説する子どもの“照れ”“共感”が生まれる年齢とは>です。8/2公開!!
ひと目でわかるイラストで図解! 『子どものこころの発達がよくわかる本』が絶賛発売中!
第1章 赤ちゃんは生まれたときから有能
第2章 触って、歩いて、世界を発見する
第3章 言葉があふれる、世界が広がる
第4章 他者に気づく、世界が変わる
第5章 社会への一歩を踏みだす
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