【手話が語る福祉】デフリンピックは人生の“ターニングポイント”に…岡山大学・石本龍一朗選手の挑戦

【手話が語る福祉】デフリンピックは人生の“ターニングポイント”に…岡山大学・石本龍一朗選手の挑戦

2025.06.17


「東京デフリンピック」代表内定の石本選手 デフ陸上日本選手権ですい星のごとく現れたスターの原石

手話が語る福祉のコーナーです。
岡山大学陸上部の石本龍一朗選手(20)。「デフリンピック」と出合って、人生が変わりました。

デフリンピックの代表に内定し、喜びを爆発させる石本選手

デフリンピックの代表に内定し、喜びを爆発させる石本選手。デフリンピックとは耳がきこえない・きこえにくい人のためのスポーツの国際大会で2025年11月に、日本で初めて東京で開催されます。

デフ卓球の試合

聴覚障害の選手はパラリンピックに含まれず、4年に1度開かれるデフリンピックが最大の舞台となります。

石本選手は、デフ陸上の日本選手権に2024年、初めて出場。

昨年12月デフ陸上日本選手権に参加した石本選手

400メートルハードルでいきなり大会新記録を出し、優勝しました。まさにすい星のごとく現れたスターの原石です。そんな彼が目指すのは・・・

400mハードルに出場

(岡山大学 石本龍一朗選手)
「東京デフリンピックで金メダルを取ることが目標」

インタビューに答える石本龍一朗選手

(写真提供:一般財団法人全日本ろうあ連盟、日本デフ陸上競技協会)


生まれつきの難聴…大学の授業では「聴覚支援機器」が必須アイテム


  岡山大学教育学部に通う石本選手。生まれつきの難聴で授業は、聴覚支援機器を使っています。これは、マイクで教員の声を拾い、直接石本選手の耳に届くシステムです。

補聴援助システム「ロジャー タッチスクリーンマイク」

(岡山大学 石本龍一朗選手)
「(マイクが)ないとマスクで声がこもっている先生や声が小さい先生はところどころしか聞こえない。自分でパソコンを見て 勉強するしかないが、(マイクを)付けることで、ほとんど聞こえるようになるのでうれしい」

授業が終わると向かった先はグラウンド。石本選手は陸上競技部に所属していて、週に4日、部活で汗を流します。

週に4日、部活で汗を流す


高校最後の中国高校総体で予選敗退…良くない結果での引退に「悔しい」


  父の影響で中学から陸上を始めた石本選手。以前は健聴者と同じ大会に出場していました。高校生活最後の大会、中国高校総体。全国出場を目指し万全を期して挑みましたが、結果は予選敗退。あの時の悔しさを忘れることはありません。

高校時代の石本選手

(岡山大学 石本龍一朗選手)
「すごく練習を積んでいて準決勝までは絶対に行けるという自信があったが、それが油断につながった。自分の力を全然発揮できずに終わって、高校陸上が良くない結果で引退になったことが一番心残り。悔しい」

悔しい思いを語る石本選手


「デフリンピック」出場に向けて努力…デフ陸上を始めて2ヵ月の日本選手権で優勝

  大学ではケガが続き、陸上をやめようと思ったこともありました。そんな時、思い出したのが、ろう学校時代の友人が教えてくれたデフリンピックの存在でした。

ろう者のオリンピックと書かれた紙面

(岡山大学 石本龍一朗選手)
「デフリンピックという一つの大きな目標ができたので、そこに向けてしっかりと努力しようという気持ちになった」

デフ陸上を始めてわずか2ヵ月で出場した日本選手権でいきなり大会記録を更新し優勝。石本選手の人生が大きく変わり始めました。

(岡山大学 石本龍一朗選手)
「スランプの時期が長かったのでそこで思うような結果も出ず焦っていたが、一つ自分の納得のいくタイムが出せたことでちょっと目の前が明るくなった」

表彰台に上る石本選手


「手話交流」に「練習姿勢」…デフ陸上と出会ったことで石本選手に新たな変化

  デフ陸上で出会った仲間たちと積極的に交流しようと、それまで使う機会がほとんどなかった手話の勉強を始めました。

デフ陸上で出会った仲間

(岡山大学 石本龍一朗選手)
「心が楽になった。悩みを相談できる仲間ができてすごくうれしかった。本当にいいきっかけになった」

練習に取り組む姿勢にも変化が。左右どちらの足でも踏み切れるのが、石本選手の強みですが、より速く走るため、利き足の右で踏み切る練習を強化しました。

(岡山大学 石本龍一朗選手)
「両足で跳べるからこそギリギリ攻められるところでも守りに入ってしまってスピードが落ちることがある。今は逆足をあえて封印して、自分の得意な足でしっかりと距離を稼ぐ練習をしている。日本記録(55秒99)は早めに更新しておきたい」

日本記録(55秒99)は早めに更新しておきたいと語る石本選手


補聴器などは外すルール デフ陸上の生命線「ランプの光」に反応し日本選手権2連覇

  5月に埼玉県で行われた、デフリンピックの代表選考会を兼ねた日本選手権。これまで支えあってきた石本選手の仲間も多く出場します。デフ陸上の基本ルールは一般的な大会とあまり変わりませんが、普段付けている補聴器と人工内耳は外さなければなりません。

人工内耳

(佐藤理子アナウンサー)
「デフ陸上の選手は音だけではなくこちらのスタートランプの光を見て一斉に走り出します」

スタートランプ

聞こえない選手にとって、ランプの光は生命線です。

男子400メートルハードル決勝。ランプに素早く反応した石本選手。他の選手を大きく突き放し、日本記録更新とはなりませんでしたが、大会2連覇を飾りました。

先頭を走る石本選手

(岡山大学 石本龍一朗選手)
「2連覇できたことはすごく良かったと思う。日本記録を更新することを目標にしていて、練習でもしっかりと55秒前半を 出せるタイムは出ていたが、自分の弱さ、プレッシャーに負けた部分があったので、自分に打ち勝てる強さを身につけたい」


デフリンピックでは“スタートから積極的に攻める姿を見て”

  目標のデフリンピック出場を決めた石本選手。次の目標、金メダルへ向けた課題も見つかりました。

(岡山大学 石本龍一朗選手)
「(デフリンピックは)陸上人生でも、これからの人生でも大きなターニングポイントになると思う。準備はしっかりして自分に自信を持った状態でデフリンピックに臨みたい」

石本選手は、デフリンピックではスタートから積極的に攻める姿を見てほしいと話していました。挑戦は続きます。

デフリンピックではスタートから積極的に攻める姿を見てほしいと語る石本選手


リンク先は8OHKというサイトの記事になります。


 

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