聞き手・星乃勇介2024年9月12日 10時30分
宮崎県立五ケ瀬中等教育学校4年(高1)の阿萬暖々果さん(15)は、8月18日に東京・有楽町朝日ホールで開かれた「第41回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」(朝日新聞社など主催)で奨励賞を受賞した。訴えたのは「手話を使う楽しさ」。身につけておくと得なこともあるらしい。話を聞いた。
「手話の楽しさをもっと広めたい」と話す阿萬暖々果さん=2024年8月2日午前11時11分、西都市の自宅、星乃勇介撮影
2歳上の兄(和春(にこはる)さん)が難聴だったので、手話は自然と覚えました。1歳のころの私を撮った動画にはもう、たどたどしく手話をしている様子が映っています。
小さい頃から扱えるせいか「すごいね」と言ってくれる人は多かったのですが、「一緒にやりたい」という子はなかなかいなくて、寂しかったです。私は褒められたくてやっているわけではないんです。もっと世の中に広めたいだけ。どうしたらいいか、ずっと考えていました。そこでスピーチコンでは「手話を楽しむ」ということをお話ししました。
手話を知ってはいてもみんな一歩踏み出して学ぼうとしないのは、やはり身近にろう者がいないからだと思います。
ただ、手話は、身ぶり手ぶりや表情も含めて、言葉だけでは言い切れない思いを伝えることができます。私も兄とケンカする時、口では負けるけど、手話なら(笑)。
それに、手話は見ないと会話が成立しません。必然的に相手と目と目を合わせることになります。それも対話の深さにつながると感じます。
手話は世界中どこにでもあります。一種の「ユニバーサルデザイン」とも言えます。ALT(外国語指導助手)の先生から教わったのですが、アメリカでは「聞こえる子でも普通に手話が使える」と。それを考えると「日本は手話後進国なんだな」と痛感します。誰もが身につけていれば、耳の聞こえる、聞こえないの違いはハンデになりません。
それに、覚えておくと便利なこともたくさんあります。図書館のように静かにしなければいけない場所や、逆にうるさい場所、声が届かない距離でも会話ができます。
みんなが普通に手話を身につけたら、もっと社会が楽しくなるんじゃないかと思います。会話のたびに、ダンスをするようなものですから。
私は手話を交えた方が気持ちが乗ります。気持ちがうまく伝わらないと、お互いぶつかることも多いですよね。それが手話で減るならば、いい社会になるんじゃないかなと思うんです。(聞き手・星乃勇介)
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あまん・ののか 実家は西都市。2021年、全国手話検定試験の最難関の1級に、当時最年少の12歳で合格。22日に鳥取県で開かれる「第11回全国高校生手話パフォーマンス甲子園」に、宮崎日大高校1年の西田桜和さんと出場する。母清香(さやか)さん(41)は手話通訳士。
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