聴覚・発声障害ある人、「○」「×」とイラストで買い物が楽に…耳聞こえない漫画家がカード考案

聴覚・発声障害ある人、「○」「×」とイラストで買い物が楽に…耳聞こえない漫画家がカード考案

聴覚や発声に障害のある人がコンビニ店などで買い物をする際、イラストを指さしながらレジ袋や割り箸の要・不要を店員とやり取りできる名刺大カードを福岡県久留米市の漫画家、平本龍之介(本名・ 瀧本たきもと 大介)さん(44)が考案した。生まれつき耳が聞こえず、うまく意思疎通できないもどかしさを抱えてきた経験から「得意な絵で、同じ思いをしている人たちの役に立ちたい」と思い立った。(立山芽衣)

ドラッグストアのレジカウンターで「コミ×カード」を手に買い物をする平本さんの写真
ドラッグストアのレジカウンターで「コミ×カード」を手に買い物をする平本さん(8日、福岡県久留米市で)=佐伯文人撮影

もどかしさ経験

今月8日、同市本山のドラッグストア。平本さんは買い物かごをレジカウンターに置くと、財布から名刺大のカードを取り出した。片面に描かれたレジ袋の絵と×印を指さし、店員に「レジ袋は不要」との意思を伝えた。

東京出身の平本さんは、イラストレーターだった父親の影響で幼い頃から絵を描くのが好きで、都内の特別支援学校高等部を卒業後、専門学校で漫画を学んだ。2007年に妻の実家がある久留米市に移り、現在は損害保険会社に勤める傍ら、自身を題材に聴覚障害者の日常生活や悩みを漫画に描いてSNSで発信したり、講演を行ったりしている。

コンビニには手話を使える店員がほとんどおらず、筆談や店員の唇の動きから言葉を読み取って意思疎通を図ってきた。ただ、筆談は時間がかかって他の客に迷惑をかけるため、多用はできない。うまくくみ取ってもらえず、プリンを買ってもスプーンを付けてもらえなかったり、補聴器をイヤホンと勘違いされて店員とトラブルになったりしたこともあった。

さらにコロナ禍では店員がマスクを着用し、口元が読み取れずにコミュニケーションがより困難となった。

20年のレジ袋有料化を受け、買い物の際に指さしできるイラストをデザインしたエコバッグを作っていた平本さんは、持ち運びしやすいようカードサイズにすることを思いついた。

「声」の代わりに

カードは自身の経験や聴覚障害のある友人らの意見を参考に製作した。財布に入れて持ち歩けるようクレジットカードや名刺と同じ大きさにし、聴覚障害者がイラストで意思疎通する「コミュニケーションボード」とカードを組み合わせたという意味で、「コミ×カード」(読み方は「コミカード」)と名付けた。

レジ袋や電子レンジなどの絵や「○」「×」印が描かれたカードの写真
レジ袋や電子レンジなどの絵や「○」「×」印が描かれたカード

両面の一番上に「耳が聞こえません」と記載し、片面に割り箸やスプーン、カップのサイズ(S・M・L)など、もう片面にレジ袋や電子レンジなどの絵と、イエスかノーかを表す「○」「×」印を載せた。スプーンが必要ならスプーンの絵を指し、店員から示されたものがいらない時は「×」を指して「不要」と伝える。

200枚を製作し、3月上旬に久留米市で開かれた「福岡県ろうあ者耳の日記念集会」で初めて販売したところ、30枚を売り上げた。購入者からは「外出時に持ち歩きたい」「手話やジェスチャーを使わなくても買い物ができる」などの声が聞かれたという。

今後は、医療機関などマスク着用者が多い場所で使えるイラスト付きバッグの製作も検討している。平本さんは「聞こえない人だけでなく、発声障害や知的障害がある人にとっても『声』の代わりになる。社会の様々な場面で活用が広がってほしい」と話す。

「コミ×カード」は1枚500円で、平本さんの公式ホームページ( https://www.hiramotoryunosuke.com )から購入できる。

コンビニ各社も近年、店頭などで聴覚障害者の買い物をサポートするアイテムの導入を進めている。

ローソンは2022年8月から、レジカウンターにレジ袋や割り箸、スプーンなどの絵が描かれた指さしシートを貼り、要・不要を確認できるようにした。昨年3月にはコミュニケーションボードも作成し、データをウェブサイトや公式アプリで公開している。

セブン―イレブンも今年3月、指さしシートを全国の約2万1000店舗に導入した。「ふくろ(有料)」「はし」などを英語でも表記し、担当者は「インバウンド(訪日外国人客)への対応も考慮した」と話す。

コンビニ以外にも広がりつつある。ディスカウント店「ドン・キホーテ」などの運営会社は昨年7月、全国620店舗にコミュニケーションボードを設置。利用者からは「(聴覚に障害があることを表す)耳マークを見せると、すぐに出してくれて助かった」などの声が寄せられたという。

リンク先は讀賣新聞オンラインというサイトの記事になります。
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