「脳トレ」より効果的、認知症を防ぐ簡単な習慣

「脳トレ」より効果的、認知症を防ぐ簡単な習慣

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いかに脳の機能をフル回転させるかがカギ

橋本 将吉 : 内科・総合診療医
2024/08/31 13:00

立ち話をして笑う年配の女性三人
「脳トレ」は慣れてくると、効果が薄れてしまう可能性があるという(写真:Luce/PIXTA)

厚生労働省の予測によると、2025年には65歳以上の約5人に1人がかかるといわれている認知症。その予防法や改善法はまだ確立されていませんが、内科・総合診療医の橋本将吉氏は、「こういう生活をしている人は認知症になりにくいとか、この食べ物が認知症の原因になる物質を取り除くのではないかといったことのほか、脳を元気にするためにこんなことをしたほうがいいことはわかってきています」といいます。橋本氏が推奨する、いつまでも脳を元気にし、「認知力」を養っていくための習慣とは?

※本稿は、橋本氏の著書『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』から、一部を抜粋・編集してお届けします。


やり続けていると慣れてしまう「脳トレ」

最も患者さんが多いアルツハイマー型認知症の治療法は確立されていませんが、症状を遅らせるための対策や予防法は研究が進むにつれ、わかってきています。

わかりやすく例えるなら、筋骨隆々の人でも筋肉を使わなければ、どんどん筋肉が減っていくというのはイメージできますよね。

それと同じように、脳も使わないと神経細胞が減って萎縮していきます。裏を返せば、脳を使えば機能の低下を抑えられるということです。

頭を使うというと、よく認知症の予防のために数独やクロスワードパズルなどのいわゆる脳トレになるようなものを思い浮かべたり、実際にすでに取り組まれていたりする方もいるのではないでしょうか。

これ、決して不正解ではないのですが、同じことをやり続けると、どうしてもコツとか慣れなどが生まれてしまい、脳への刺激が減るように感じます。私は、まったく意味がないとは思わないのですが、「脳トレ」は残念ながら、認知症予防という観点からはあまり効果はないかもしれないという海外の研究結果もあります。

そこで、私ハシモトマサヨシが実際に、治療の際に伝授している方法をご紹介します。それは、外出して、コミュニケーションをとることです。

脳は目や耳や鼻などの感覚器官でキャッチした情報を認識し、認識した情報をもとに考え、それに基づいて言葉にしてコミュニケーションを図っているからです。


何気ない会話でも脳は「フル回転」している

つまり脳の機能をフルに使うのが、外出でありコミュニケーションなのです。相手の目を見て、耳で聞いて、匂いも嗅いで得た情報をインプットして、統合処理して、さらに相手のことを考えながらなにを伝えるのか判断し、実際に言葉や身振りでそれらをアウトプットする。

一見、何気ない会話でも、とてつもない高度な処理が脳内で行われています。だから脳の機能を保つには、人と話すことが大切なのです。

従来、脳細胞は加齢とともに減少する一方だと考えられていました。しかし、近年の研究で記憶をつかさどる海馬という部分に、神経細胞を新たに生み出す幹細胞が存在することがわかりました。つまり、脳をよく使うことで減った神経細胞を増やすことができるのです。

一度落ちた認知機能が大きく改善するかといったら疑問は残りますが、脳はまだまだ解明されていないことだらけの器官だけに期待も持てます。

実際に、その人のことをまったく忘れてしまった認知症の患者さんがある日、突然思い出してくれたという例もあります。過度な期待はできませんが、前向きに脳を鍛えることは大切だと思っています。

もし、人と話す機会がそうないという人ならば、老人ホームなどの施設に入るのも1つの手だと思います。

独居ではどうしてもコミュニケーションの機会は限られてしまいます。老人ホームなどの施設では、ほかの入居者やスタッフの方々とのコミュニケーションが自ずと生まれます。「認知機能と外出頻度には関係性がある」と言っている専門家も少なくありません。たまには「書を捨てよ、街へ出よ」の精神で、外出してはいかがでしょうか。

また、難聴や白内障が認知症の進行を速める可能性もあります。耳や目からの刺激が乏しくなるからです。補聴器をつけたり、白内障の手術を受けたりすることは、症状の進行を鈍化させる手立てになります。

散歩などの運動で脳に刺激を与えるのも有効ですし、個人的には部屋のお花を1週間に1回変えるなどして、視覚や嗅覚に刺激を与えるのもおすすめです。

新たな趣味を見つけるなんてとてもすてきなことですし、趣味の仲間ができれば、おしゃべりに花が咲き、脳はぐんと活性化するに違いありません。そんな仲間と旅行に出かけるなんて機会が増えれば、理想的ですね。

つまりは、人生を楽しむことが認知症予防にも寄与するということです。ぜひこれを忘れないでください。


医師の立場ですすめたい「認知機能改善食品」

さて、ここからは認知症を予防するための食事について紹介します。

ズバリ、おすすめの1つめは、納豆です。健康的な食事というテーマで必ずと言っていいほど出てくる食品ですね。

納豆にはナットウキナーゼという成分が含まれています。私たちはどこかにちょっとケガをしても、そのまま血が流れ続けることはなく、血が固まってくれます。これを凝固と言います。

ただ、ずっと固まり続けていても血流を阻害するので、血液を溶かす作用が必要になってくるのです。これを線溶と言います。

例えば、脳の血管が傷ついて血が止まらなくなったら脳出血、血が凝固しやすくなったら脳梗塞になってしまうので、凝固と線溶のバランスが大事。まわりくどい話になってしまいましたが、そのバランスを整える働きがあるのがナットウキナーゼです。

認知症の種類の1つである血管性認知症は、脳出血や脳梗塞などによって神経細胞に酸素や栄養が行かなくなり、引き起こされます。

そうです、ナットウキナーゼによって凝固と線溶のバランスが整えられれば、脳出血や脳梗塞のリスクを抑えられ、ひいては血管性認知症の予防になるのです。

しかも、納豆には脳の神経細胞を健康に保つ働きがあるポリアミンという成分も含まれていますから、血管性に限らず広い意味での認知症の予防に最適な食品です。ぜひ食べるように心がけてみてください(ただし、現在血液をサラサラにするお薬、いわゆるワーファリンなどのお薬を服用している方は、かかりつけの医師に必ずご相談ください)。


「大地や海の恵み」が脳を守ってくれる

書籍の表紙「『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』(アスコム)」

『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』(アスコム)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

2つめにおすすめしたいのは、抗酸化物質が豊富なほうれん草やブロッコリー、かぼちゃ、ピーマン、パプリカ、トマトなどの緑黄色野菜です。

米国神経学会(AAN)の論文によれば、血液中の抗酸化物質(ルテイン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン)が高いと認知症のリスクが低いとされています。

この抗酸化物質が豊富に含まれているのが緑黄色野菜です。

3つめは、昆布やワカメなどの海藻類です。腸内環境が整うと脳の神経細胞を壊す化学物質がつくられるのを抑制し、認知症のリスクを抑えられるという研究報告があります。

大地や海の恵みがあなたの脳を守ってくれる。積極的に食べて元気な脳を保ちましょう。


橋本 将吉(はしもと まさよし)
Masayoshi Hashimoto
内科・総合診療医
内科・総合診療医であり、株式会社リーフェホールディングス代表。全国に7校舎を展開する「医学生道場」を運営し、未来の医師育成に情熱を注ぐ。YouTubeチャンネル「ドクターハッシー/内科医 橋本将吉」では、分かりやすい医学教育動画が人気で、登録者数は75万人を超える。会員制「ヘルスケアアカデミー」では、様々な診療科の現役医師による医学セミナーを提供している。「日々の暮らしに健康を」という理念のもと、「ハシモトマサヨシブランド」を立ち上げ、健康商品の開発に取り組む。特に「乳酸菌V28」やアロニア羊羹「雪紫」は人気商品である。
●「ハシモトマサヨシブランド」https://hashimotomasayoshi.co.jp/
●医学生の為の個別指導塾「医学生道場」https://igakuseidojo.com/

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