障害や年齢に関係なく誰でも遊べる 進む「インクルーシブ遊具」の設置

障害や年齢に関係なく誰でも遊べる 進む「インクルーシブ遊具」の設置

障害の有無や年齢に関係なく利用可能な遊具「インクルーシブ遊具」の設置が近年、全国各地で進んでいる。

多様性を認める考え方の浸透や、遊具の老朽化による更新時期とも重なり、自治体が積極的に導入していることが背景にあり、関係者は「遊びを通して障害者への理解が自然と深まっていけば」と期待を寄せている。

寝転んで乗ることができるシーソーやブランコ、車いすでも通ることのできる複合遊具、隠れるのに絶好のスペースがあるドーム形の遊具…。

肢体が不自由だったり、にぎやかな場所が苦手だったり、年齢による体力の違いがあったりと、さまざまな個性を備えた子供たちに適した遊具として設計されたのが、インクルーシブ遊具だ。

インクルーシブは「包括的な」「すべてを包み込む」という意味。

日本では、1990年代の終わり頃からこうした遊具が公園に設置されるようになったとされる。

ただ当初は、障害のある子供への理解が社会全体に浸透していなかったこともあり、なかなか設置が進まなかった。

ただ近年、一人一人の個性を尊重する多様性社会の実現などが提唱されてきたことを背景に、脚光を浴びることに。

令和2年3月、東京都世田谷区の都立砧(きぬた)公園に設置されたほか、5年1月には福岡市が「インクルーシブな子ども広場整備指針」を策定し、7年度末までに市内全7区に1カ所ずつ広場を整備していく方針だ。

滋賀県内でも、6年春、大津市の衣川公園(県営都市公園衣川湖岸緑地)にインクルーシブ遊具のブランコや複合遊具が設置される予定で、こうした取り組みは全国各地に広がり始めている。

「いろんな子が自然に一緒に遊べるように」

兵庫県明石市の県立明石公園もその一つ。園内にある「子どもの村」で老朽化した既存遊具の交換時期に合わせ、インクルーシブ遊具を導入した。

オープン前の9月10日には、市内の障害者団体の関係者や所属する保護者、子供らを招いた体験会が開かれた。

「子供を公園に連れていくときには、屋根や寝転べる場所があるかで決めている」と明義さん。

過去には「『そんなに無理して子供を遊具に乗せなくても』という視線を感じることもあった」といい、「公園は本来、気軽に行って遊べるところのはず。姉妹で遊べる遊具があるのはうれしい」と笑顔をみせた。

体験会では、他の保護者から「車いすでも通れるよう遊具までの道は舗装してほしい」「障害のない子と遊ぶときは、ぶつかったり転んだりする不安がある」などの声も聞かれた。

子供らが遊ぶ様子を見守った市立ゆりかご園(医療型児童発達支援センター)の飯塚由美子施設長は「障害の有無に関わらず、いろんな子が自然に一緒に遊べるような環境がいい」と話す。

課題は設置場所の確保や導入コスト

インクルーシブ遊具の設置を今後各地に広げていくには、これまでより大きくなった遊具の設置場所確保や導入コストなどを考慮する必要があり、「子供はスリルを求める。安全面を考慮しすぎて誰も遊ばないでは、設置する意味がない」と話す自治体担当者もいる。

こうした公園づくりの普及を目指す市民グループ「みーんなの公園プロジェクト」の矢藤洋子さんは「設置して終わりではなく、当事者やその保護者をはじめ、自治体や地域住民、遊具メーカーが改善に向けて意見を共有していかなければならない」と指摘。

「子供によって、できることや挑戦したいことは違う。それぞれの子供が力を出して楽しく遊べる場が広がればいい」と話している。(入沢亮輔)

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