2024/8/29 09:00
産経新聞:産経ニュース
生活・科学|健康
9月は世界アルツハイマー月間です。日本では今年から「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行され、9月21日が認知症の日、9月が認知症月間と定められました。「共生と予防」を2本柱とする同法は、認知症を予防し、認知症になっても慣れた場所で暮らしていける社会を目指しています。
亀山祐美医師
国内の認知症患者は平成24年時点で約462万人。令和12年には推計744万人まで増えるとされていました。ところが今年5月の厚生労働省からの調査報告では、12年の推計患者数が523万人と大きく下方修正されました。糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病の治療管理が進み、予防に力を入れたことが奏功したと考えられています。
認知症予防には運動、食事、難聴対策、生活習慣病の管理が大切です。そして昨年12月には、新薬「レカネマブ」が発売されました。全国の大規模病院で点滴投与が始まっています。1年半にわたって2週間に1回の点滴を継続すると、半年ほど認知症の進行を遅らせる効果があるとされる薬です。
とはいえ大規模病院であればどこでも投与開始できるわけではなく、①脳神経内科・脳外科・精神神経科・老年病科のいずれかの専門医(経験10年以上で所定の講習受講済み)が常勤で複数在籍する、②頭部MRI検査を受けられる-といった条件があります。
というのもレカネマブは、アルツハイマー病になると脳内の血管に沈着して蓄積する「アミロイドβ」というタンパク質を除去するもの。アミロイドβがはがれた血管は弱くなり、そこから体液や血液が漏れて脳浮腫や微小出血を引き起こすことがあるため、適切に管理できる病院でなければならないのです。
特に点滴開始から半年以内にこういった症状が出やすいので、資格を持つ専門医のいる施設を増やしているところです。半年以上たつと浮腫や微小出血の発生頻度が減るため、専門医や施設の条件は緩和され、より身近な医療機関でも点滴可能になります。
この新薬は臨床現場での投与が始まったばかりなので、専門医の間でもまだ効果の実感は得られていないようです。ただ、薬によって認知症の発症を少しでも遅らせることができれば、仕事や運転ができる期間や健康寿命は延び、患者さん本人も介護する側もよりよく暮らすことのできる時間が長くなるでしょう。(東大病院老年病科 医師 亀山祐美)
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