フィンランドの生徒と対話をしている様子(写真:青森県立北斗高校提供)

不登校だった高校生が青森からフィンランドへ!「心が軽くなった…」探究学習で見た、日本の教育との決定的な違いとは?

公開日時:2026/04/29 06:00
佐藤 智
ライター・教育コラムニスト

日本の生徒とフィンランドの生徒が教室で話をしている様子

フィンランドの生徒と対話をしている様子(写真:青森県立北斗高校提供)


2025年に公表された小・中学校の不登校児童生徒数は35万3970人。12年連続で過去最多を更新している。

青森県立北斗高校は、不登校を経験した生徒たちが全校の約4割を占める、通信制と定時制を併せ持つ学校だ。定時制は夜間部のほかに午前部と午後部があり、生徒たちが自身の体調などに合わせて学ぶ時間を選択できる。

2025年度、全員が不登校経験者である北斗高校の生徒6人が大きな挑戦をした。県が主催する「高校生海外フィールドワークチャレンジ2025」に手を挙げ、フィンランドで探究学習を深める切符を手にしたのだ。自身の不登校の経験を振り返り、地域の課題解決へとつなげていく、そんな学びの旅を見てみよう。

 

“異物感のある自分”に耐えられず不登校に

「小学校6年生のときに完全に不登校になりました。教室に入るまでがとても辛くて、階段を上るだけで動悸がしたり震えが止まらなかったり……。周りのみんなは普通に生きているのに、自分だけができないことに劣等感を感じていました」

「聴覚過敏の私にとって、学校は特に気を張る場所でした。頑張って学校に行っても、視線も会話も全部自分に向けられているかのようで怖くて。優しさで声をかけてくれるクラスメイトもいましたが、日頃、他者と接していないので返事の仕方がわかりませんでした。うまく返せない自分に、どんどん嫌気がさして閉じこもるようになりました」

「中学2年生で完全に不登校になりました。当時のクラスはすごく温かい雰囲気で、学校に行けない自分や周りの人とうまく話せない自分への異物感がかえって強くなりました。優しく接してくれているということもわかっているのに……」

それぞれの不登校の経験を語るのは、青森県立北斗高校の「チーム北斗七星」の生徒6人だ。2025年、彼女たちは県が主催する「高校生海外フィールドワークチャレンジ」に手を挙げ、プレゼンテーションを経て採択された。

フィンランドでのフィールドワークは10月25日から5泊8日。掲げたテーマは「フィンランドに学ぶ青森県の未来-自立と個性を育む学びと安心できる居場所づくり-」だ。帰国後、不登校支援の取り組みがフィンランドでの学びによってどう深まったのか、 地域の人も招いた報告会で生徒が“自らの言葉”で語った。

「チーム北斗七星」フィンランドフィールドワーク報告会の様子(写真:青森県立北斗高校提供)

「チーム北斗七星」フィンランドフィールドワーク報告会の様子(写真:青森県立北斗高校提供)

 

不登校の中学生の居場所をつくる「サタデースクール」

北斗高校は不登校または不登校傾向にある中学生を対象とし、高校生と交流する「サタデースクール」という取り組みを続けている。学校生活に関する悩みや不安の解消につなげる狙いだ。

不登校の中学生の中には居場所を失い、高校進学に希望を持ちにくくなっているケースも多い。こうした生徒が毎回、30人〜60人ほど参加する。

サタデースクールで生徒たちが話す様子(写真:青森県立北斗高校提供)

サタデースクールで生徒たちが話す様子(写真:青森県立北斗高校提供)


そうした中学生に、高校生が自身の不登校経験を交え「自分にとって不登校になったことには、こんな意味があった」「高校に入ったら変わることができる」と語りかける。

中学生からは、「自分と同じことで悩んでいる人たちがたくさんいることがわかり、心が軽くなった」といった声が聞かれる。また、不登校の保護者が「子どもに寄り添い、干渉しすぎず、前を向いていこうと思いました」と言い、涙を流すこともある。

 

44チームの激戦を勝ち抜く

チーム北斗七星の6人は高校入学後、自身の不登校経験を生かし、サタデースクールに熱心に活動してきた。「総合的な探究の時間」においても、不登校や子どもの居場所づくりをテーマに取り組んできた。

その生徒たちに「こんな募集が出ていたよ」と担当の田中美紀先生が声をかけた。それが、青森県で新たに始まった「高校生海外フィールドワークチャレンジ事業」だ。

青森県のパスポート取得率は、全国と比べて低い水準にある。しかし、国外へ県産品の魅力を伝えたり、インバウンド客を招いたりするにはグローバル人材の育成が不可欠だ。

そこで、高校生の段階から世界を相手に活躍できるグローバル人材を育てるべく、新設されたのが「高校生海外フィールドワークチャレンジ事業」である。生徒がチームで「社会課題解決」などをテーマに海外でフィールドワークを企画し、応募。渡航費などは県が負担する。

チーム北斗七星はこれまでのサタデースクールでの活動と課題を盛り込んだ企画を作成し、書類審査、プレゼンテーション審査を経て、44チームの激戦を勝ち抜き2025年度の採択校に選ばれた。

田中先生は「当初、生徒たちは『初めての海外で、集団生活ができるだろうか』『英語で話すなんて無理』と不安を抱えていましたが、採択が決まって準備を進めていくと、どんどん頼もしくなっていきました」と振り返る。

「成績よりも成長の過程」現地で発見した日本の教育との違い
ヘルシンキに降り立ったチーム北斗七星は、小中高校や職業訓練学校を訪問した。共通していたのは、成績以上に成長の過程を重視していることだったという。

チームメンバーの1人は「学びが生徒主体」だということを発見した。

「日本では成績や◯◯大学に合格などの学力でランク付けをしているところがありますが、フィンランドは成績よりも成長の過程を見ていました。そのため、生徒たちは自分のペースで、他者との比較ではなく学べていると感じました」(以降の発言はいずれもチーム北斗七星メンバー)

また、学校の雰囲気も大きく異なっていたという。

「教室の雰囲気がすごく明るくて。日本ではきちんと先生の話だけを聞いていることが求められるのに、フィンランドはみんな楽しく授業を受けていて退屈していませんでした。私は中学校で不登校になったとき、学校の厳格な雰囲気が本当に辛かったので、フィンランドの自由な空気が印象に残りました」

フィンランドの生徒たちと折り紙を楽しんだ(写真:青森県立北斗高校提供)

フィンランドの生徒たちと折り紙を楽しんだ(写真:青森県立北斗高校提供)


また、ヘルシンキには13歳から17歳が立候補して議員に選ばれる若者評議会の制度がある。若者が若者のために、社会の問題を評議会に提示して、実際に解決に向けた行動をしている。

「彼らは政治への強い思いを持っていて、同世代が過ごしやすい国をつくるために活動していました。10代のメンバーで自発的に意見交換をしていると聞いて、私たちが行ってきたサタデースクールの活動にも活かしたいと思いました」

 

記事のポイント! 

不登校経験を持つ高校生たちが、フィンランドの教育や若者支援を学ぶ姿を通じて、「他人と違ってもいい」という価値観の大切さが伝わる内容です。成績だけではなく成長の過程を重視する教育、若者の居場所づくり、安心して過ごせる環境など、日本との違いを実感した生徒たちの変化が丁寧に描かれています。自身の経験を支援活動へつなげようとする前向きな姿勢にも注目です。

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原文掲載元はこちら 

 https://toyokeizai.net/articles/-/942324?display=b

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