
2025.04.19
小泉 敏男
東京いずみ幼稚園園長
プロフィール
ユニークな幼児教育で知られ、メディアからの取材依頼が後を絶たない東京いずみ幼稚園では、「乳幼児にとって本当に良い教育」を求めて試行錯誤を繰り返すことで、長年にわたって成果を出し続けています。後編では、日常を通じて子どもの心に自己肯定感を伝える方法を説明します。
前編記事『「IQ120超え」の卒園児を続々輩出……この道50年の園長が明かす「良い子育て」に欠かせない2つの「要素」』より続く。
「自己肯定感」「他者への信頼感」も生まれる
子どもが歩けるようになり、できることが増え、幼稚園に入ってからも「声と匂い」は意識するようにしてください。
もちろん、幼稚園児を赤ん坊扱いして、絶えずゼロ距離で触れる必要はありません。
絵本を読み聞かせる、散歩する、食卓を囲む……などといったかたちで、ごく当たり前の日常を「一緒に」過ごすよう心がけましょう。
言い換えると、「匂い」の届く距離で「声」をたくさん聞かせてあげてほしいのです。そして、子どもの声もいっぱい聞いてあげてください。
子どもは聴覚優位で「耳学問」に長(た)けています。

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「子どもが親の口癖を覚えて真似(まね)するので手を焼いている」なんて経験をした読者がいるかもしれませんが、子どもは音声を通じていろいろなことを学びます。
子どもが耳学問で学びとるものの代表格が母語(私たちにとっては日本語)でしょう。聴覚優位という特性は、知育教育に大いに活かせる強みです。
文字が読めなくても、耳から同じ情報を入れてあげれば、子どもは覚えることができます。まず「触れて」「覚える」こと、それが幼児教育では大事なのです。この点については、いずれ稿をあらためて詳しく説明したいと思いますが、「触れる」、そしてとりあえず「覚える」のが大事であることは、とても基本的で大切な点なので、頭の片隅に置いていただければと思います。
親の声は単なる情報以上のものを子どもに伝える
最後に付言しておくと、声と匂いを活かした教育によって、子どもは付随するいろいろなことも記憶していきます。これも乳幼児の発達にはプラスにはたらきます。
記事の前編で引用した、「おかあさんの匂い」を読み返してみてください。
台所の風景、家族の印象、チョウジ、モクセイといった植物など、作者はさまざまなことを「声」「匂い」と一緒に想起しているのがわかるでしょう。親の声は(そして匂いも)、単なる情報を超えて、知識、情緒、思い出など多くのものを子どもの心に残すのです。

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そうやって心に残ったものは、やがて「自己肯定感」や「他者への基本的な信頼感」の土台となり、生涯にわたって子どもを支え続けるでしょう。
以上のような理由から、私は「声と匂い」が大切だと園で保護者にも申し上げているのですが、しかし、この2つを存分に活かした教育は、いくつかの原則を押さえたうえでなければできません。次回の記事ではその原則に触れたいと思います。
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