「有毛細胞は基本的に再生しません」 イヤホン難聴のおそろしさに耳鼻科医が警鐘 骨伝導も過信は禁物

「有毛細胞は基本的に再生しません」 イヤホン難聴のおそろしさに耳鼻科医が警鐘 骨伝導も過信は禁物

公開日:2026.03.02  /  更新日:2026.03.02
著者:Hint-Pot編集部
教えてくれた人:鈴木 香奈

ワイヤレスイヤホンなどを頻繁に使用することも(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

ワイヤレスイヤホンなどを頻繁に使用することも(写真はイメージ)【写真:PIXTA】


 スマートフォンでのゲーム、動画視聴、音楽鑑賞やリモート会議など、日常的にイヤホンやヘッドホンを使用する機会は多いでしょう。そんななか、注意したいのが「イヤホン難聴」です。初期は自覚症状がほとんどなく、聞こえにくさに気づいたときには回復が難しいことも。3月3日は「耳の日」。耳の健康を考える記念日にちなみ、イヤホン難聴について、耳鼻咽喉科を専門とする鈴木香奈医師に原因や予防策などを伺いました。

 ◇ ◇ ◇


大音量で長時間聴き続けることが原因

 耳の構造は、外耳、中耳、内耳の3つに大きく分けられます。音は、まず外耳道を通って中耳にある鼓膜を振動させます。その音の振動を、内耳の「有毛細胞」が電気信号に変え、脳に伝えることで認識され、音として聞こえるのです。

 この有毛細胞は、内耳の「蝸牛(かぎゅう)」と呼ばれる器官にあり、片耳あたり1万5000個ほどが細い毛束のように並んでいます。音の大きさや高さを感じ取る重要な役割を担っていますが、音の刺激によってダメージを受けやすいのが特徴です。

 とくに近年、直接音が耳に入るイヤホンやヘッドホンを使う機会が増えていることから、難聴への影響が懸念されています。鈴木医師は次のように話します。

「イヤホン難聴とは、イヤホンやヘッドホンで大音量の音楽などを長時間聴き続けることで、内耳の有毛細胞が損傷して徐々に聴力が低下することをいいます。原因として、長時間連続で使用すること、音量が大きすぎること、また毎日のように音にさらされる慢性的な暴音が挙げられます」


ゆっくりと進行するため気づきにくく、治らないことも

 初期症状としては、耳鳴りや耳閉感、高音が聞こえにくいなどが挙げられます。しかし、進行がゆっくりで、高音域から障害されるので自覚しにくく、ある日突然聞こえにくくなるわけではないため、気づきにくいといわれています。

「大音量や強い振動が続くと、有毛細胞が変形したり断裂したりして、最終的に有毛細胞は死んでしまいます。有毛細胞は基本的に再生しません。ライブなどで大きな音を聴いた音響外傷は、早急な治療で回復の可能性がありますが、何年もかけて習慣として積み重ねられたイヤホン難聴は、不可逆で基本的に治すことは難しいです」

 難聴というと高齢者のイメージがあるかもしれませんが、世界保健機関(WHO)は2019年より、世界の12~35歳の約半数に当たる11億人が個人用オーディオ機器などによる音響性難聴のリスクにさらされているとして、警鐘を鳴らしています。

 一度落ちた聴力は戻らないため、日常的に予防することが大切です。


「60/60の法則」を守りイヤホン難聴を予防

 イヤホン難聴を予防する対策として、鈴木医師は「大音量で長時間聴かないことを心がけてください。音量を最大の『60%以下』にする、『60分』ごとに休憩する、60/60の法則を守りましょう」とアドバイスします。

 再生機器の種類にもよりますが、最大音量の60%以下にすると周りの音が聞き取れる程度の音量になり、耳の負担は減ります。一定の音量を維持するために、ノイズキャンセリングを活用するのも選択肢のひとつだそうです。加えて、60分聴いたら10分程度は耳を休ませることを習慣化する必要があるといいます。

 ちなみに、骨伝導イヤホンは一般的なイヤホンのように外耳道からではなく、頭蓋骨を通じて音が届くため周囲の音も聞き取りやすく、「耳にやさしい」イメージを持つ人もいるでしょう。しかし、「一般的なイヤホンと同じく蝸牛に音の振動が届くので、大音量であれば同様に有毛細胞が損傷し、音量しだいでは難聴のリスクはあります」と指摘します。

 イヤホン難聴を防ぐには、日常的に有毛細胞を酷使しないことが大切です。今日からできる小さな心がけで、耳の健康を守りましょう。

(Hint-Pot編集部)

鈴木 香奈

鈴木 香奈(すずき・かな)
金沢駅前ぐっすりクリニック院長。日本耳鼻咽喉科学会専門医。1996年、金沢医科大学卒業。睡眠時無呼吸症候群を核に一般耳鼻咽喉科診療を行う。


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