内野 勝行2026/04/25
source : 週刊文春 2026年4月30日号
“生活習慣病の総合デパート”として認知症リスクに慄おののく「オジ記者」が認知症外来専門医の内野勝行先生に弟子入り。最新の研究結果を基に中高年からの認知症予防を学ぶ。
今年1月に東海大学などが日本人の認知症発症のリスク要因を発表した。その中で最も影響力が大きいのが難聴。第2位が今回取り上げる運動不足だ。これらを改善できれば、日本で発症する認知症の約4割を理論上は予防できるという。
いざ、スポーツウェアとランニングシューズを新調し、形から入るオジ記者。だが、先生曰く、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」。今日から始められるエクササイズを紹介してもらった。
◆ ◆ ◆
Q 3度のメシより……ゼハゼハァ……49歳……ゲホッ……オジ記者です。
A 大丈夫か? すごい汗の量だゾ。
Q オイラ、減量のため走って参りました! こう見えて、20代と30代はサッカーでピッチを颯爽と駆け回っていたのに、今は歩くのも億劫。心を入れ替え走ってみたのですが、運動、ジゴク……。
A その意気は買いたい。だが、オジ記者のように、運動さえしていれば、認知症でもほかの病気でも予防できると盲信している人が意外と多い。
Q というと?
A 皇居ランで必死に走っているお年寄りを見かけるけど、若い頃からジョギングが習慣化している人なら問題ない。ただ、運動不足の中高年や高齢者がいきなり目の色を変えて走ると、心臓に負担がかかるからかえって危ない。後ほど説明するが、運動強度の高いランニングが認知症予防になるとは限らないんだ。
Q 危うく心臓と膝を壊すところでした。それでも運動って認知症予防のために若い頃からやっていたほうがいいですよね?
A 実は若い頃の運動は、認知症予防にはさほど関連がないという研究があるんだ。フィンランドの研究(2019年)では、平均年齢45.5歳の男女、約40万人を活動的なグループと運動不足のグループに分け、15年かけて追跡調査した。その結果、認知症を発症するまでの10年間の運動不足は、発症リスクとなっていた。対して、認知症を発症する10年以上前の運動不足は、活動的なグループと運動不足のグループの間に発症リスクの差はみられなかった。
Q なんだあ、ホッとした。またグータラ再開ですな。
A 安心するのは早い。この研究で、10年以上前の運動不足は、糖尿病、脳卒中、さらには心筋梗塞や狭心症の発症リスクとの関連性があった。なにより糖尿病は認知症発症リスクを高める。
Q オイラ、絶賛糖尿病です(汗)。
A 認知症を発症する年代は70代以降が多いが、中高年はオジ記者のように糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病を放置している人が多い。運動は生活習慣病の改善につながりその先の認知症予防にもなるので、やはり50代から運動を習慣化した方がいい。
Q おじいちゃんになる前から運動しろと。
A そう! 第1回から言っているが、認知機能が落ちてから予防しても意味がない。中高年のうちから少しずつ運動をはじめよう。
記事のポイント!
認知症予防には「運動すれば良い」という単純な話ではなく、年齢や体力に応じた適切な運動習慣が重要である点が印象的です。特に中高年期の運動不足は発症リスクに直結し、生活習慣病を通じてさらに影響を強める可能性があります。一方で、無理なランニングなど高強度の運動は必ずしも有効ではなく、日常的に無理なく続けられる活動や家事なども有効とされており、「続けられる運動」をどう設計するかが鍵となる内容です。
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