2026.10.11 18:22 公開
執筆者和田 直子

siro46/shutterstock.com
補聴器や車椅子、義肢・装具などの「補装具」は、身体障害者手帳を持つ人などが購入や修理をするとき、費用の大部分を市町村から補装具費として受け取れます。
厚生労働省が2026年1月30日に公表した「令和6年度福祉行政報告例」によると、令和6年度の補装具費の購入決定は14万9267件、修理決定は10万1787件でした。購入決定で最も多かったのは補聴器の4万7530件です。
この記事では、補装具費の種目別の件数と、所得に応じて決まる自己負担の上限を確認します。
1. 補装具費の購入決定は令和6年度に14万9267件、最も多いのは補聴器の4万7530件
補装具費支給制度は、障害者総合支援法にもとづいて市町村が実施しています。対象は補装具を必要とする障害者、障害児、難病患者等(政令で定める疾病に限る)で、18歳以上の身体障害者は、身体障害者福祉法で身体障害者手帳の交付を受けた人と定められています。
令和6年度の補装具費の購入決定は14万9267件で、令和5年度の15万1785件から2518件減りました。種目別では補聴器が最も多くなっています。

出所:厚生労働省「令和6(2024)年度福祉行政報告例の概況」を参考にLIMO編集部作成
【補装具費の購入決定件数(令和6年度)】
補聴器:4万7530件
装具:3万9707件
車椅子:1万8468件
姿勢保持装置:9467件
視覚障害者安全つえ:9026件
眼鏡:6974件
義肢:4684件
歩行器:2731件
歩行補助つえ:2712件
電動車椅子:2670件
座位保持椅子:2471件
義眼:924件
起立保持具:768件
重度障害者用意思伝達装置:748件
頭部保持具:377件
排便補助具:10件
件数は身体障害者・身体障害児と難病患者等を合わせたもので、特例補装具としての支給も含みます。
1.1 補聴器・装具・車椅子の3種目で購入決定の70.8%
補聴器(4万7530件)、装具(3万9707件)、車椅子(1万8468件)を合わせると10万5705件で、購入決定全体の70.8%を占めます。補聴器だけで31.8%です。
1.2 電動車椅子の購入決定は2670件で、令和5年度から14.3%減った
令和5年度と比べた減り方が大きかったのは電動車椅子で、3114件から2670件へ444件減りました。補聴器は4万7408件から4万7530件へ122件増えています。
2. 補装具費の修理決定は10万1787件、人工内耳の修理は1434件で42.3%増
補装具費は購入だけでなく修理にも支給されます。令和6年度の修理決定は10万1787件で、令和5年度の10万1914件とほぼ同じ水準でした。
2.1 修理決定が最も多いのは車椅子の3万2940件
修理決定を種目別に見ると、車椅子が3万2940件、補聴器が2万1725件、装具が1万4752件、電動車椅子が1万2728件でした。電動車椅子は購入決定(2670件)より修理決定のほうが多くなっています。
2.2 人工内耳は修理のみが対象で、修理決定は2年で2倍超に
人工内耳は、補装具費の対象が修理(人工内耳用音声信号処理装置)に限られています。修理決定は令和4年度の679件から、令和5年度は1008件、令和6年度は1434件と増えました。
3. 補装具費の自己負担は原則1割、市町村民税課税世帯の上限は月3万7200円
補装具費の利用者負担は原則1割で、世帯の所得に応じて負担上限月額が決められています。市町村民税(住民税)が非課税の世帯は、上限が0円です。

出所:厚生労働省「補装具費支給制度の概要」を参考にLIMO編集部作成
3.1 生活保護世帯と市町村民税非課税世帯の負担上限月額は0円
負担上限月額は、生活保護世帯に属する人と市町村民税非課税世帯が0円、市町村民税課税世帯が3万7200円です。
生活保護(生活保護世帯に属する者):0円
低所得(市町村民税非課税世帯):0円
一般(市町村民税課税世帯):3万7200円
3.2 市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上なら支給対象外
ただし、障害者またはその配偶者のうち、市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上の場合は、補装具費の支給対象外になります。
3.3 基準額50万円の補装具なら、1割の5万円ではなく上限の3万7200円に
補装具費は、厚生労働省の告示で種目ごとに決められた基準額から利用者負担額を差し引いた額です。市町村民税課税世帯が基準額20万円の補装具を購入する場合、1割の2万円が自己負担になります。
基準額50万円の補装具なら1割は5万円ですが、負担上限月額の3万7200円が自己負担になり、市町村から46万2800円が支給されます(いずれもLIMO編集部の試算)。
補装具費の購入決定は令和6年度に14万9267件で、補聴器が4万7530件と最も多くなりました。自己負担は原則1割で、市町村民税課税世帯でも負担上限月額は3万7200円、非課税世帯は0円です。
補装具費の申請先は、お住まいの市町村の障害福祉の窓口です。購入や修理をする前に申請し、身体障害者更生相談所などの判定や意見を受けて支給が決まる流れになっています。
ここからは、補装具費の支払いの流れと、買い替えや修理を見込んだ家計の備え方を整理します。
和田 直子
補装具は一度買えば終わりではなく、修理や買い替えが続く道具です。自己負担の上限が月額で決まっていることと、支払いの流れによっては全額をいったん立て替える場面があることを、早めに家族で共有しておくと安心だと思います。
4. 補装具費の受け取り方は「償還払い」と「代理受領」の2通り
補装具費は、受け取り方によって手元から出ていくお金が変わります。
4.1 償還払いは、いったん全額を支払ってから補装具費を受け取る
厚生労働省の資料では、償還払いの場合、利用者が補装具の購入や修理の費用を製作業者に全額支払い、そのあと市町村に請求して補装具費を受け取る流れになっています。基準額50万円の補装具なら、50万円をいったん用意する必要があります。
4.2 代理受領なら、支払うのは自己負担額だけ
代理受領の場合、利用者が製作業者に支払うのは自己負担額だけで、補装具費は市町村から製作業者に支払われます。手元の資金を大きく動かさずに済むので、預貯金を取り崩したくないご家庭にとっては心強い仕組みです。
どちらの方法で受け取れるかは、申請の段階で市町村の窓口に確かめておくと、支払いの時期に慌てずに済みます。
5. 補装具の修理や買い替えは「特別な支出」として家計の表に入れておく
補装具は長い期間使い続けるものですが、修理や買い替えはいずれやってきます。令和6年度の修理決定が10万1787件と、購入決定(14万9267件)の7割近くにのぼっていることからも、修理が身近な出費であることが分かります。
5.1 負担上限は月額なので、修理の時期が重なる月は上限を確かめる
市町村民税課税世帯の負担上限は月3万7200円です。補聴器を両耳で使う場合や、車椅子と装具を両方使う場合など、修理や買い替えの時期が近づいたら、その月の自己負担がいくらになるかを窓口で確かめておくと計画を立てやすくなります。
5.2 数年ごとの出費は、毎月の積み立てで準備しておく
車の買い替えや家電の更新のように数年ごとにやってくる出費を、毎月の生活費とは別の口座で積み立てている方もいるでしょう。
補装具の自己負担も、上限の3万7200円を目安に少しずつ準備しておくと、家計への影響をならせます。
6. 【確認したいこと】補装具費の借受けは、成長に合わせた交換が必要な場合などに限られる
補装具費は購入が原則ですが、借受け(レンタル)が適切と考えられる場合に限り、借受けにも支給されます。厚生労働省の資料では、次の3つの場面が挙げられています。
身体の成長に伴い、短期間での交換が必要と認められる場合(姿勢保持装置の構造フレーム、歩行器、座位保持椅子)
障害の進行により、短期間の利用が想定される場合(重度障害者用意思伝達装置の本体)
購入の前に、複数の補装具の比較検討が必要と認められる場合(義肢、装具、姿勢保持装置の完成用部品)
お子さんの成長に合わせて何度も作り直す必要があるご家庭では、購入と借受けのどちらが使えるかを、市町村の障害福祉の窓口に相談しておくと選択肢が広がります。
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