バナー「引き上げで直面する「障がい者雇用の難しさ」と「配慮のポイント」とは」

2026年7月、法定雇用率2.7%へ。引き上げで直面する「障がい者雇用の難しさ」と「配慮のポイント」とは

2026年5月12日

バナー「引き上げで直面する「障がい者雇用の難しさ」と「配慮のポイント」とは」

株式会社マイナビパートナーズ
DEIソリューション事業部 事業戦略部 部長
大塚 昭宏 氏

おおつか・あきひろ/広告/出版業界にて記者、編集、営業を経て、新規事業の立ち上げを手がけた後、2014年に株式会社マイナビに中途入社。オンライン企業説明会の企画担当として、計1万回以上の開催をサポート。現在は株式会社マイナビパートナーズにてマーケティングを担うほか、12ヶ月間の有給プログラム「Career Create Program」の企画運営を担当する。

障がい者雇用を取り巻く環境は、ここ数年で急速に変化している。2026年7月には法定雇用率が2.5%から2.7%に引き上げられる予定で、2006年の1.8%からの20年間でみると0.9ポイント上昇したことになる。さらに30年前に遡ると、1976年の法定雇用率は1.5%。この20年は過去30年間の上昇幅(0.3ポイント)を上回るペースだった。

変化に応えるように、企業の採用手法として、障がい者雇用に特化した人材紹介サービスが急拡大している。障がいのある求職者と、障がい者雇用を行う企業とのマッチングが日々行われているわけだが、実際のところ、この「マッチング」はどの程度適切に行われているのだろうか。そして、障がい者は企業の配属先で戦力として働けているのだろうか。

法定雇用率に基づいた数合わせの障がい者雇用ではなく、「戦力としての障がい者雇用」を掲げる株式会社マイナビパートナーズのDEIソリューション事業部・大塚氏に話を伺った

 

2013年、精神・発達障がいの人口が最多に。それなのに雇用が進まない理由

大塚 昭宏 氏

障がいは一般的に、障害者手帳の種別や状態によって、身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がいの4種類に分類される(手帳の区分から「精神・発達障がい」と一つにまとめられることもある)。ほんの十数年前までは、聴覚障がいや視覚障がいといった身体障がい者の求職者数は最も多かったが、2013年に精神・発達障がい者がこれを逆転し、以降差が開き続けている。※1

実際の雇用人数も身体障がい者が最多で、長らく30万人台を保っている。一方で、2013年に約2万人のみだった精神・発達障がい者が、2025年には15万人以上に拡大した。※2

大塚氏はこの変化について、雇用の観点から以下のように語る。

大塚氏「多目的トイレや点字の設置、段差の排除など、身体障がいの方への配慮は対応が分かりやすく、コスト面さえ負担できれば容易にクリアできます。そのため企業側としては、身体障がいの方は比較的雇用しやすいです。しかし労働人口としては精神・発達障がいの方が最も多いマーケットですので、法定雇用率が引き上げになる中で、身体障がいのある方を雇用するだけでは雇用率を達成できなくなってきています

法定雇用率が未達成の企業には、障害者雇用納付金と言われる納付金が発生するほか、企業名の公表や一定期間の入札参加資格停止などが科せられる。

しっかり向き合う必要があるものの、多くの企業は精神・発達障がいの方に対して、『何を配慮したらいいか分からない』『どのような対応を求められるのか分からない』といった不安や、『どのような業務を任せたらいいか見当がつかない』という戸惑いを抱えていると、大塚氏は指摘する。

大塚氏「マイナビグループの特例子会社であるマイナビパートナーズは、全社員の7割以上が障がいのある社員であり、そのうちの約9割が精神・発達障がいのある社員です。そのため、彼らが戦力として活躍するための関わり方や環境づくりについて、培ってきた知見があります。

それを活かして、障がい者に特化した人材紹介サービスをはじめ、様々な障がい者雇用に関する個別のコンサルティング業務を行っています。近年ではコンサルティングの一環として、『業務切り出し』や『職域開拓』と呼ばれる支援を行う機会が増えてきました。企業の各部署にヒアリングを行い、切り出しが可能な業務を抽出します。精神・発達障がいがあってもそれらの業務を担えることをご説明し、受け入れからオンボーディングまで伴走しています」

今の日本社会では障がい者雇用についての理解が万全ではなく、障がいの種別によっては受け入れが難しい現状がある。だからこそ同社は、単純な労働力の提供に留まらず、企業とともに精神・発達障がいの方が活躍できる場とマッチングの機会を創出することも人材業界の役割の一つだと考えている

 

必要な配慮は人それぞれ。特性を本人と一緒に確かめることが重要

大塚 昭宏 氏

では続いて、求職者側にもフォーカスしてみよう。精神・発達障がいの方の中には、勤務時の困りごとや不調な時期の対処法、合理的配慮といった自身の障がいに起因する事柄をうまく言語化できない方や、そもそも認識できていない方も多いという。そのため、マッチングの入り口に立てないケースもあるようだ。

大塚氏「当社ではコンサルティングを扱う部署の中で、障がいのある大学生や既卒者を対象に、12ヶ月間の有給プログラムを行っています。このプログラムでは、日々の調子や睡眠時間などのデータが蓄積できる健康管理のアプリを導入しているのですが、『夜眠れないことが原因で、どうしても遅刻が多い、日中集中ができない』という方の睡眠時間を確認したところ、実はほぼ毎日8時間以上リズムよく眠れていた、ということがありました。そんなふうに、不調の理由を思い込みで捉えてしまっている方もいらっしゃいます」

合理的配慮についても、一般論を鵜呑みにしてしまい、よく理解できていない方が少なくないという。

大塚氏「プログラムに参加している聴覚障がいの方が、『文字おこしのアプリさえあれば業務も研修も問題なく対応できます』と申し出ていました。しかし実際には、膨大な文字量を短時間で読み込まなければいけないので疲労が大きく、人によっては休憩も込みで合理的配慮を考える必要が出てきます。ただ、そういった事実は働いてみて初めて気付くんですよね。

また、合理的配慮とは少し趣が異なる例ですが、とある視覚障がいのある方はずっと盲学校に通っていて、集団生活の中で人の話に相槌を打つという習慣がありませんでした。そのせいで、周りから『冷たそう』という印象を持たれていたことがあります。そういったことにも、一緒に働く中でお互いに気付いていくんです」

その他にも、発達障がいの方から「曖昧な指示は分からないので、明確にしてほしい』という合理的配慮を求められることがあるという。インターネットでよく見かける合理的配慮の代表例だが、本人に“曖昧”の定義を確認してみると上手く説明できないことが大半だ。働く中で、口頭の指示だけでは分からないのか、メモをとりながらインプットしないと分からないのかなど、少しずつ解像度が上がっていく印象だと大塚氏は述べる。

採用の過程で一定の説明がなされていても、オフィスでの困りごとや必要な合理的配慮は、実際に働いてみなければ十分に判断し切れない。大塚氏は障がいを持つ求職者の自己理解について次のように語った。

大塚氏「『〇〇障がい者に向いている職業/向いていない職業』といった観点から情報提供を行っているメディアもあります。こうした整理は、はじめて障がい者雇用に触れる企業や求職者にとって、理解の手がかりとなる側面もあります。

一方で障がいの特性は個人差が大きく、一概に分類することが難しいケースも少なくありません。私たちはプログラムで接点のある学生にも、人材紹介サービスにご登録いただく求職者の方にも、できる限り一人ひとり、ご自身の障がいに関する言語化をサポートして、『企業の戦力』としての障がい者雇用に寄与したいと考えています」

 

障がいの言語化と日々の積み重ねによって自然と戦力化していく

大塚 昭宏 氏

一人ひとりの特性に個人差がある障がい。雇用するには課題も同じ数だけ、もしくはそれ以上にあるのだろう。そういった中で、企業側には何ができるだろうか。

大塚氏は「求職者による障がいの言語化によって、まず障がいの現在地が分かる」と話す。

大塚氏「障がいの言語化とは、今の症状がどういったもので、通院と服薬がどれぐらいの頻度で、何かきっかけで調子が良くなり悪くなり、悪い時にはどういった対処が可能なのか、といった情報を共有することです。

障がいを言語化することで、同僚と業務にどういった影響が起き得るのか、合理的配慮として何を締結すれば活躍できる可能性があるのか、といった近い将来の話が見えてきます。当初考えていなかった課題も出てくるかもしれません。ここまで情報が集まれば、あとは日々の業務をこなしていきながらの調整がメインになると思います」

障がいのある学生と日々仕事をする中で分かったこと。それは、働く上での難しさや課題を一気に解決する「特効薬」はなく、日々の積み重ねこそが重要だということだ。

それを裏付ける事実として、2024年2月の立ち上げ以降、マイナビパートナーズの有給プログラムから多くの大学生等が社会に巣立っていったが、現時点で入社から半年間での退職報告は1件もない。大塚氏は「そういう意味ではうまくマッチングできているのかなと。そのまま半年以降も、無事に働けているといいなと願っています」と語る。

 

記事のポイント! 

2026年7月に法定雇用率が2.7%へ引き上げられる中、企業には障がい者雇用を単なる人数確保ではなく、本人が力を発揮できる環境づくりとして捉える姿勢が求められています。記事では、精神・発達障がいのある方への配慮の難しさや、聴覚障がいのある方が文字起こしアプリを使う際にも疲労への配慮が必要になる例を紹介しています。本人の特性や困りごとを丁寧に言語化し、企業と本人が合理的配慮の内容を日々すり合わせていく大切さが伝わる内容です。

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原文掲載元はこちら

 https://hrog.net/interview/135081/

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