難聴うさぎさん ©文藝春秋 撮影・細田忠

「文字が浮かぶメガネはまるでSF」難聴うさぎ(31)が広める驚きの最新技術…そして「結婚もしたい」と語る現在地

難聴うさぎさんインタビュー#3
市川 はるひ

 SNSインフルエンサーとして活動する一方、難聴うさぎさんは最新の支援技術の普及にも力を注いでいます。自身の経験を活かしながら、どんな未来を描いているのでしょうか。インタビュー第3回目は、今力を入れて発信している内容について詳しくうかがいます。

難聴うさぎさん ©文藝春秋 撮影・細田忠

難聴うさぎさん ©文藝春秋 撮影・細田忠


コミュニケーションの苦労

――難聴は「見た目でわかりにくい障がい」ということで困ったご経験は?

難聴うさぎさん(以下、うさぎ) 最近健康診断を受けたときに、少し困りましたね。聴こえないと最初に伝えておいても、看護師さんやスタッフ全員に伝わっているわけじゃない。別色のストラップをもらってつけてるんですけど、障がいを持ってる人共通の目印なのか、意外と聴こえないってことをわかってもらえてない。「あれ? また言わなきゃいけないんだ」みたいになって。

 

――ほかにも、コミュニケーションのなかで「疲れるな」という場面はありますか。

うさぎ コミュニケーションを取るとき、口の動きを見ることが重要なので、耳元で話しかけられると、口元が見えないからわからないんです。「口の動きが重要なんです」という説明はするんですけれど、忘れられてしまうようなので、もう一度繰り返し説明して……そういうときは、ちょっと疲れちゃうかもしれません。

難聴うさぎさん ©文藝春秋 撮影・細田忠

©︎文藝春秋


 あと「マスク外してほしいです」って私が言うと、 一瞬外してくれるけどすぐ戻しちゃう。マスクを外すのに抵抗を感じる場もある、というのは理解できるんですが、何を言っているのか全然わからない。だからそういうときは話をちょっと中断してもらって、スマホの文字起こしのアプリを使います。 

 

――そういえばSNSで「コロナ禍ではみんなマスクしてるので、口元が見えなくて大変だった」っておっしゃってましたよね。

うさぎ  はい。私は社会人だったからまだよかったんですけど。 もし学生時代に周りがみんなマスクをしていたら、 多分私はやっていけなかったと思います。 

 

骨伝導で伝える補聴器のメーカーが作った犬向けのデバイス

――今発信している中で、 最も伝えたいことはなんでしょうか。

うさぎ 今、SNSを通じて「骨伝導で伝える補聴器」を広めています。通常の補聴器では目に見えない「空気振動」を使うんですけど、 骨伝導は骨を通した振動で音を伝える技術で、聴こえ方としてはかなり違います。

 空気振動の補聴器は高価ですが、骨伝導のものは10万円以下と比較的安価。だから、片耳だけ聴こえないとか、障害者手帳をもらえない人も手にしやすいです。それから、鼓膜がない状態の人は、空気振動では聴こえないけれど、骨伝導なら聴こえます。そういういくつものメリットを考えて、骨伝導の補聴器を開発してるメーカーの方と出会いまして、 私に「広く発信してほしい」と言っていただいて。私もメリットを知って「いい商品だな」と思ったので、それに応えて発信しています。私が普段使っている補聴器は小さくて、よく失くしてしまうので、そういうとき代替で使ったりもします。 

骨伝導で伝える補聴器を装着する難聴うさぎさん©︎文藝春秋

骨伝導で伝える補聴器を装着する難聴うさぎさん


 かれこれこのメーカーとの仕事を4年くらいやってるんですけど、今年からは犬、ワンちゃん向けの補聴器が作られました。 耳の聴こえないワンちゃんに届けられるよう、試聴会もやっています。犬って13歳くらいからだんだん聴こえなくなって、目もよく見えなくなるそうなので、孤独を感じないためにも、 骨伝導の首輪で「そばにいるよ」ってことが伝えられたらいいなって。

 

――年齢を重ねると、犬も耳が遠くなるんですね。

うさぎ 試聴会では、名前を呼んでも今まで振り向かなかったのに、この首輪を付けたら振り向くワンちゃんがいて、感動してる飼い主さんもいました。もちろん全部が全部、反応するわけじゃなく、 認知症だったりで、振り向かないワンちゃんもいます。でも高齢のワンちゃんなら、試してみる価値はあると思います。


愛犬に、もう一度あなたの声を届ける「Vibone nezu pet for Dogs」(GREEN FUNDINGより)

愛犬に、もう一度あなたの声を届ける「Vibone nezu pet for Dogs」(GREEN FUNDINGより)


 定価は7万9800円なんですけど、今、7月14日までクラウドファンディングをやっていて、そちらだと半額です。試聴会はキャンセル待ちがすごく多くて、なかなか試したい人の元に届けられてない現状もあります。だからこの機会にぜひ、クラウドファンディングを利用して、使ってみてもらえると嬉しいです。

 

難聴者の苦労を減らしてくれる技術

――こういう貴重な情報を届けてくださると、必要としている当事者にはとてもありがたいですね。

うさぎ そう言っていただけると嬉しいです。ほかにも難聴者にも便利な、文字起こしアプリのアンバサダーもやっています。こういうテクノロジーでいろんなものがどんどん進化しているから、昔より難聴者の物理的な苦労は、減ってきたんじゃないかって思います。

  以前は聴こえない人にはあまり目を向けられていなかった。でも今は、私も含め一人ひとりがとても生きやすい時代になってきていると感じます。この先の未来は、情報を得て、こういう技術的なサポートデバイスを取り入れながら「どう生きるか」が大事になってくるんじゃないかなと考えています。

屋上での撮影©︎文藝春秋

©︎文藝春秋

 

話した言葉が見える“SFみたいな”眼鏡

――この眼鏡にも仕掛けがあるんでしょうか?

うさぎ これは話してる言葉がリアルタイムで文字になって見えるんです。

話した言葉が見える“SFみたいな”眼鏡

片目側だけにしたり、明るさや色も調整できる


――眼鏡のレンズに文字が映し出されて読めるんですか。すごい、SF映画みたいですね。すでに販売されているんですか?

うさぎ 6月5日にソフトバンクから発売されています。 海外の似たようなメガネは15万円くらいするんですが、こちらはもっとリーズナブルです。

 

――この商品のアンバサダーもやってるんですか?

うさぎ 私は音声認識システム「YYSystem(ワイワイシステム)」のアンバサダーなんです。「YYSystem」にはアプリの「YY文字起こし」やそれに連携しているこの「AiLENS(エーアイレンズ)」など、いろんな商品があります。ちなみに、さっきの ワンちゃんの補聴器の骨伝導集音器は「ソリッドソニック」という会社のものです。

 

開発者とは「本当にいいコンビ」

――素晴らしい先端技術に囲まれてお仕事をしてるんですね。

うさぎ 本当に いろんな会社の方や開発者さんが、 寝る間も惜しんでがんばっているので、私もしっかり寄り添いたいです。先日、アプリの画面に吹き出しで文字が出せる新しい機能ができたので、 私もTikTokライブで使ってみました。インスタのリールとかYouTubeのライブ配信にも使えます。


――難聴うさぎさんは、うまく活用して丁寧に見せてくださるから、 開発者の方もうれしいんじゃないでしょうか。

うさぎ いいものを開発してる人が世の中にはたくさんいるけど、 発信力が足りないと悩んでいる方が多いんです。だから開発している人たちとは、本当にいいコンビネーションだなって思います。

 

――冗談も含めてかもしれないけど、YouTubeで「今、耳が聴こえるようになったら困る」と言ってましたね。

うさぎ 私が聴こえるようになったら、本当に今の仕事はなくなってしまいます(笑)。

 

――でも、誰でもいずれ年取ったら聴こえづらくなる。だから、誰にでも必要になる可能性のあるものばかりとも言えますね。

うさぎ 確かにそうかもしれないですね。

 

難聴うさぎさんが即答!「これからやってみたいこと」

――今、すごくお忙しいと思いますけど、 これからやってみたいことはありますか?

うさぎ 結婚ですね!

 

――即答ですね。ちなみに、恋愛はあまりオープンにしてないんですか?

うさぎ いえ、普通に彼氏がいなくて。今探してます。でも 1年前まで本当に恋愛に興味がなかったんです。例えば、占いに行っても「 今年の仕事運、どんな感じですか?」みたいな感じで。でも30歳になったら突然「結婚にフォーカスしてみたい」という気持ちになりました。できれば子どもも欲しいし、今は「恋愛したい欲」が強いです。ですけど、恋愛の始め方を忘れちゃいました(笑)。

 

――何年ぐらいブランクがあるんですか?

うさぎ 5年ぐらいかな。TikTokを始めた2020年あたりからいないんです。始めたと同時に「恋愛に興味なし」のモードに入りました。SNSが恋人だと思っていましたから!

 

――パートナーにはどんな人がいいですか?

うさぎ 聴こえない人とも、聴こえる人とも付き合ったことがあるけど、それについてはどちらでもいいんです。何より「一緒に成長できる人」がいいですね。 

難聴うさぎさん©︎文藝春秋

©︎文藝春秋

 

記事のポイント! 

難聴うさぎさんが、自身の経験をもとに、聴こえにくい人の暮らしを支える最新技術を紹介しています。骨伝導で音を伝える補聴器、犬向けの骨伝導デバイス、話した言葉をリアルタイムで文字化する眼鏡など、技術の進化が難聴者のコミュニケーションをどう変えつつあるのかが伝わる内容です。見た目ではわかりにくい難聴の困りごとにも触れながら、支援機器は単なる便利な道具ではなく、自分らしく生きるための選択肢を広げるものだと感じさせてくれる記事です。

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聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。 


原文掲載元はこちら 

 https://bunshun.jp/articles/-/89468

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