2025/11/15 09:00
反保真優
「デフリンピック東京大会」が15日に開幕する。東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターには交流拠点「デフリンピックスクエア」が設けられ、会期中はさまざまなイベントや展示を無料で見ることができる。スクエア内にある最新のコミュニケーション機器を紹介する展示会「みるTech」を一足先に体験してきた。(デジタル編集部・反保真優)
手話通訳士が眼鏡に「補聴グラス」
補聴グラスを覗くと手話通訳士が表れる
まず目に入ったのは、サイナーズ(東京都港区)が開発する「補聴グラス」だ。専用のメガネをかけると、なんと、人間の手話通訳士が表れた。手話通訳士と遠隔でつなぎ、AR(拡張現実)を使って、眼鏡のレンズに手話通訳を表示させる仕組みだ。透明なレンズの上に手話が映し出されるので、周りの状況を見ながらあわせて見ることができる。メガネなしで、スマホ端末などでも利用できるという。手話には方言も多いため、使う人の方言の動きにあった手話通訳士をマッチングしてくれる。来春の実用化を目指しているという。
聴き取りやすい音のスピーカー
デフリンピックスクエアの会場
日伸(東京都墨田区)が開発するスピーカー「エリッセ」は、難聴者のレベルに合わせて聴き取りやすい音を届ける。子音のみを大きくして、レベルを選択することで、その人に合った音でテレビや音楽が楽しめるという。実際に音楽を聞いてみると、加齢で特に聞こえにくくなるという「サ」や「タ」行の音などがはっきり聞こえて、難聴ではない私にとっても聞こえやすい気がした。
ブルートゥースで接続できるため、様々なデバイスで利用できる。担当者は「大きな音だと騒音と感じてしまうことも多い。聞こえに違いがある家族がいても、同じ空間でだんらんしながら過ごせるのが良いところ」と教えてくれた。
「聞こえない」を疑似体験
音が聞こえない世界を疑似体験できる「DeafVR」
聞こえない体験もできる。シー・エヌ・エス(東京都目黒区)が開発する「DefVR」は、VR(仮想現実)を使い、「聞こえる」「聞こえにくい」「聞こえない」の3段階を疑似体験できる。
専用ゴーグルをかけて、教室編を体験してみた。聞こえない編では、風景は見えるが、教師が何を話しているのかわからない。不安だ。聞こえにくい編も、音が鳴っているのがわかるレベルで、何を話しているかはわからない。最後に聞こえる編を聞くと、教師の声やほかの学生の笑い声が聞こえて安心した。「聞こえない」をリアルタイムで体験する機会はあまりない。「聴覚障害者」と一言で言っても、「少しだけ聞こえる」「特定の周波だけ聞こえる」など、「聞こえ方」は様々ということに気づいてもらう狙いもあるという。「音の違い」だけで、同じシーンでも全く違う風景になったのが印象的だった。
視覚障害者向けの音声ナビゲーション
リンクス(東京都港区)が開発する「shikAI」は、視覚障害者向けに駅構内などでの移動を支援する音声ナビゲーションを提供する。スマホなどでアプリを立ちあげ、点字ブロック上の2次元コードをスキャンして目的地を選択すると、「60m直進です」などと声で教えてくれる。すでに東京の大手町駅や大阪駅でも実用化されていると聞いて、驚いた。今まで気づけなかったが、通勤路で探してみようと思う。

都庁からのバンジージャンプをVRで楽しめる
この他、VRで都庁からのバンジージャンプを疑似体験する取り組みや、センサー技術とプロジェクションマッピング技術を使ってホッケーやブロック崩しを楽しめるブースなど、子どもも大人も体を使って新しい感覚が味わえる。
楽しみながら、驚きながら、それぞれ聞こえること、聞こえないことを想像し、お互いを理解する学ぶきっかけが生まれたらうれしい。
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