高い音が明瞭に聞こえる特殊な集音器を用いて、音楽を1日1時間、35日間聴くと、難聴者の聞こえが改善することが分かった。広島大病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の石野岳志講師らの研究グループが考案した新たなリハビリで、脳の音声処理能力の向上による効果だという。

加齢に伴う難聴
◇難聴からうつ状態も
音が聞こえにくい人は、国内で推定1430万人。75歳以上では約7割を占めるが、難聴と自覚している人は3分の1とされる。
加齢に伴う難聴の多くは、「感音性難聴」と呼ばれるタイプ。音の振動を電気信号に変換し、それが脳に伝わるまでの器官(内耳)や神経経路の障害により、音そのものをうまく感じ取れない。「中耳炎、外耳炎などが原因で起こる『伝音性難聴』と異なり、有効な治療法があまりないため、聴力を根本的に回復させることは難しいとされます」と石野講師。
難聴は心身にさまざまな影響を及ぼす。「言葉を聞き分ける能力も低下するため、集中して聞こうとして疲れやすくなり、会話を控えてしまいがち。コミュニケーションがうまくいかず、自信を失ってうつ状態になる人もいます」。認知症のリスクも高め、自動車の音などに気付かず、危険を察知する能力も低下する。
◇騒音下での聞き取り改善
改善するには補聴器を利用するのが一般的だが、「長時間付けるのは煩わしい」「費用が高い」などの理由で、利用しない人もいる。
そこで石野講師らは、「聴覚リハビリ」を考え出した。「補聴器では十分補えない高い音をはっきりと再現する特殊な集音器で、好きな音楽を1日1時間聴き、最初に補聴器で補いにくい高い音を聞く能力を訓練します」。この集音器は市販されており、通常は外出時や会話するときなどの聞こえを補う目的で使われる。
今回、平均年齢68歳の難聴者40人を対象に効果を調べた。聴覚リハビリを35日間続けたグループでは、騒音の中での音声聞き取り能力がリハビリ前に比べて明らかに改善した。脳の検査結果から、聴覚リハビリにより、聴覚に関する脳の活動が活性化されることも分かった。
石野講師は「高音の聴覚リハビリで脳の音声処理能力が向上し、聞こえが改善すると考えられます。今後、最適なリハビリ期間や終了後の長期的な効果なども研究したい」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/12/25 05:00)
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